見出し画像

新品種「Libex」が、業界を変えるかもしれない!?

2026年5月、コーヒーの新種が正式に命名された。

英国・キュー植物園の研究チームが、リベリカとエクセルサの自然交配種を Coffea × libex(通称「Libex(多分「ライベックス」かな?)」)と命名。論文はNature系の学術誌『Scientific Reports』に掲載された。


まず「リベリカ」とは何か

コーヒーの主要種はアラビカとロブスタ。その陰に隠れた第三の存在が、リベリカ(Coffea liberica)だ。

アフリカ西部・リベリア原産で、高温多湿にも粘土質の土壌にも強い。アラビカが育ちにくい低地でも栽培できる環境適応力を持つ。ただカップクオリティはアラビカより劣り、スペシャルティの文脈ではほとんど語られてこなかった。世界生産量の1〜2%程度を占める、いわば「忘れられた品種」だ。
私はコーヒー人生で一度だけテイスティングしたことがあるが、酸味がほとんどなく、スパイシーで雑味や苦味の強い印象でした。

エクセルサ(Coffea dewevrei)はかつてリベリカの亜種とされていたが、現在は独立種。フルーティーな風味を持ち、東南アジアや中央アフリカで見られる。


Libexの何が注目されるのか

キュー植物園のチームが3大陸113点のサンプルを遺伝子解析した結果、この2種は自然状態でも栽培環境でも比較的容易に交配し、稔性ある子孫を残していることがわかった。

この交配種Libexが持つ特性がおもしろい。

収量はリベリカより高く果肉とパーチメントが薄いため精製処理が効率的になる。種のサイズがアラビカに近いため、焙煎や粉砕の設定も大きく変えなくて済むかもしれない。さらに、エクセルサが持たないコーヒーリーフラスト(さび病)への抵抗性も受け継いでいるとみられる。


最大のポイントは「育てられる場所」

私がもっとも注目しているのはここだ。

アラビカは涼しい高地を好み、ロブスタは低地に強いとはいえ栽培域に限界がある。気候危機が進めば、現在の主要産地が2050年までに栽培適地から外れるリスクがある。そういった試算は業界でも繰り返し語られてきた。

Libexはアラビカもロブスタも育ちにくい地域に根を張れる可能性がある。東南アジア、中央アメリカ、アフリカ、インドと、すでに自然の交配種が広く分布していることも確認されている。

まだ「可能性」の段階だし、カップクオリティの向上も課題だ。ただ研究チームは、既存の育種技術を使えば比較的短期間で実用的な系統を開発できると述べている。


コーヒーの主役はずっとアラビカだった。スペシャルティの議論も、品種改良の話題も、ほぼすべてアラビカを中心に回っている。

そこに気候変動という文脈から、傍流に置かれてきた2種の交配種が浮上してきた。これが業界の地図を塗り替えるかどうかはまだわからない。ただ、コーヒーに関わる一人として、このニュースから目が離せない。

研究者たちの次の一手に期待している。


コーヒーの品種や産業の話題を、引き続きここで発信していきます。「スキ」やフォローで応援いただけると励みになります。


Yoshiharu Sakamoto
Instagram
 https://www.instagram.com/yoshiharu_sakamoto/
COUZOU COFFEE CHANNEL
 https://www.youtube.com/@COUZOUCOFFEECHANNEL
仕事の依頼や相談
 info@actcoffeeplanning.com

いいなと思ったら応援しよう!