貯金箱 (前編)
あなたにめぐり逢えて本当によかった。一人でもいい、心からそう言ってくれる人があれば。
(相田みつを)
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甘い思い出は麻薬にも似て、むさぼればむさぼるほど緩慢(かんまん)な毒となって心に蓄積し自分が苦しむのは分っている。
愛する人と生別する悲しみは本当に辛い、いや、苦痛だ。だから、思い出と言う麻薬に頼らないと自分が保てないときはある。
僕にも12年付き合った女性がいた。親の反対やら複雑な理由で結局別れましたが、12年付き合って最後は携帯で30分ぐらい話しただけで終わり。
「出逢えてよかった。後悔はないよ。」声に涙を交ぜるような震える声で言われた。
「ありがとう。俺も同じだよ。」笑顔で手を振るように僕も返事を返した。まるで、じゃあまたな、また明日ねと別れるようにニコニコ笑って、笑って、笑って、電話を切った途端、笑顔が泣き顔に変わった。
顔を見ると辛いから最後は電話だけでとお互い決めたことだったけど、やり切れない想いでいっぱいだった。
そんな彼女と別れて数年後のお話。
僕がガソリンスタンドの景品で10万円貯まる貯金箱を貰った。普段から旅行はおろか、小旅行すら行ったことがなかったから、この機会に“つもり貯金”をすることにした。
全部500円玉で10万円貯まる貯金箱。

全部500円とはいかないが、少しずつ貯めて5万か6万ぐらい貯まったら1人2・3万の温泉宿にでも連れて行き、びっくりさせてやろうと
タバコ買ったつもりで
300円
ジュース買ったつもりで
100円
喫茶店行ったつもりで
500円
少しずつ頑張ろうと始めるが、やっぱりつもり貯金するのも最初だけ。3ヶ月ぐらいしたら埃が被って放置状態。いつしか存在すら忘れていた。
そして、ある年の誕生日。
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