ベルリオーズ《幻想交響曲》における低音金管楽器の使用について(2024)
論文情報
橋本晋哉「ベルリオーズ《幻想交響曲》における低音金管楽器の使用について」
『洗足論叢』第53号、2024年度、pp.33–45.
https://senzoku.repo.nii.ac.jp/record/2000420/files/ronsou_53_04.pdf
概要
ベルリオーズ《幻想交響曲》は、1830年の初演以来、楽器編成の変更や改訂を繰り返してきた作品です。特に低音金管楽器については、初期の自筆譜ではセルパンとオフィクレイドが用いられていましたが、その後の出版過程においてオフィクレイド、さらにチューバへと楽器指定が変化していきました。本稿では、
ベルリオーズ自身の楽器観
『管弦楽法』における記述
自筆譜・初版・全集版の比較
第4楽章、第5楽章のスコア分析
セルパン、オフィクレイド、チューバの役割の変遷
現代の演奏実践への示唆
について考察を行いました。特に「ディエス・イレ」におけるセルパンの象徴的な役割に着目し、ベルリオーズの生涯における低音金管楽器の変遷を再検討しています。
執筆の背景
セルパンおよびオフィクレイドに関する研究を続ける中で、19世紀フランスのオーケストラ作品においてこれらの楽器がどのように用いられていたのかに関心を持つようになりました。ベルリオーズは『管弦楽法』を著した作曲家として知られていますが、その実際の作品における低音金管楽器の扱いの変遷については、必ずしも十分に検討されているとは言えません。
また、《幻想交響曲》は現在では2本のチューバで演奏されることが一般的ですが、1830年の自筆譜ではオフィクレイドとセルパンが指定されており、その後出版に至るまで、改訂によって楽器編成や書法が変化しています。そこで本稿では、自筆譜、初版、新旧全集版を比較しながら、ベルリオーズがそれぞれの楽器にどのような役割を与えていたのかを検討しました。
現在から振り返って
本研究を通じて強く感じたのは、楽器の変遷を考える際には、単に「新しい楽器が古い楽器を置き換えた」という単純な図式では説明できないということでした。
ベルリオーズはチューバの優位性を認識しながらも、晩年までオフィクレイドを積極的に使用しており、それぞれの楽器に異なる役割を与えていました。特にオフィクレイドの高音域や機動性は、後のフランスの低音金管楽器の書法にも大きな影響を与えています。
また、《幻想交響曲》における初期のセルパンの使用は、単なる音量の補強ではなく、「ディエス・イレ」に象徴される音楽的イメージの形成に深く関わっていました。現在の演奏実践ではチューバによる演奏が一般的ですが、オフィクレイドやセルパンを含めた歴史的な楽器編成を再検討することは、ベルリオーズが追求した音響世界をより深く理解するための手がかりになると考えています。
(注)前文中の「バルブ付きのホルン、コルネット」という記述ですが、正しくは「バルブ付きのコルネット」です。お詫びして訂正します。
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