ルイジ・ノーノ《後-前-奏曲》の実践的演奏ガイド(2025)
論文情報
橋本晋哉・有馬純寿「ルイジ・ノーノ《後-前-奏曲》の実践的演奏ガイド」
『洗足論叢』第54号、2025年度、pp.33–47.
概要
ルイジ・ノーノ《後-前-奏曲 第1番〈ドナウのための〉》は、チューバとライブ・エレクトロニクスのために書かれた代表作であり、20世紀後半のチューバ作品の中でも特に高度な演奏技術と電子音響との協働を求める作品です。本稿では、
* 楽曲構造の分析
* チューバに要求される特殊奏法
* ライブ・エレクトロニクスの構成
* Maxを用いた現代環境での再現方法
* 演奏者とオペレーターの協働
* 実際のリハーサルと上演のための指針
について、演奏実践の立場から整理しました。また、1987年初演時の機材や演奏法を検証するとともに、現在のコンピュータ環境でも作品の理念を損なうことなく再演するための具体的な方法を提案しています。
執筆の背景
私は2011年に日本初演を行って以来、《後-前-奏曲》を継続的に演奏してきました。しかし、この作品はライブ・エレクトロニクスを伴うため、初演時に用いられた機材の多くはすでに使用できず、現代の演奏環境では新たなシステムを構築する必要があります。一方で、既存の研究は作品分析や初演資料の整理が中心であり、実際に演奏するための具体的な手引きは十分ではありませんでした。そこで本稿では、これまでの演奏経験と研究成果をもとに、チューバ奏者と電子音響オペレーターの双方の視点から、現代の演奏現場に即した実践的なガイドをまとめました。
現在から振り返って
本研究を通じて改めて感じたのは、《後-前-奏曲》は「電子音響付きのチューバ作品」ではなく、チューバ奏者とライブ・エレクトロニクスのオペレーターが対等な演奏者として音楽を創り上げる、アンサンブル作品であるということでした。本作では特殊奏法やエレクトロニクスの技術そのものが目的ではなく、それらを通して演奏者が毎回新たな音響を創造することが求められています。その意味で、この作品は完成した楽譜を再現するのではなく、演奏のたびに新しい音楽を生成する作品と言えるでしょう。
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