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『私も保護者です』〜思い込みが変わったこと

20代半ば、学童クラブで働いていたときの出来事だ。

その学童では、2月末に来年度の利用申請を受け付けていた。4月から学童クラブに子どもを預けたい保護者が書類を持って来る。それは、新1年生だけでなく、既に通っている児童の保護者にも必要な手続きだった。

その年、私はアルバイトという立場上、書類を直接受け取ったり、確認することはほとんどなかった。申請書を持った保護者らしき人が窓口に来たら、正規の職員を呼ぶことが多かった。

ある日の夕方、1年生のK君のお母さんが見えた。「来年度の申請書類を持ってきました」と言うので、私は40代の女性職員、Mさんを呼んだ。

Mさんは窓口に出て、お母さんから書類を受け取り、それを見ながら話をしていた。内容までは聞こえなかったが、お迎えに来ても、あまり口を開かないお母さんなので珍しいなとは思った。

しばらくすると話を終えたのか、Kくんのお母さんは部屋に入り、それから子ども連れて玄関を出ていった。Mさんは何となく浮かない表情をしていたが、私は声がかけられなかった。

翌日だろうか、職員が集まったとき、Mさんがお母さんから書類を受け取ったときの話をした。

「一番上(保護者名)がお母さんの名前だったから、『ご主人の名前にしなくていいんですか』って聞いたら、言われたの。『私も保護者です』って」

何となく場が静まり返った。私含め、当然のように、皆がそこには父親の名前を書くものだと思っていた。母親と見られる女性の名前を見たときは、母子家庭ではないかと、すぐに結びつけるぐらいだったと思う。

でも、その書類の1番上には『保護者名』と書いてあるだけで、正確にはどちらでも良いのだ。それなのに、両方いるなら父親の名前を書くものだと、皆が思い込んでいた。

そして、私はその意識が特に強かったと思う。何故なら私が育った家がそうだったから。

小学生の頃、学校から保護者名が必要な書類を持ち帰ったとき、母親に見せると必ず言われた。
「それは、お父さんに書いてもらって」
言われて私は、父に渡した。本人調査書であったり、健康管理表など、今思えば、子育てを主にしている母親の方が詳しく書けるのではないかと思う書類もあったが、父が記入し、保護者名にも自分の名前を書いていた。そこに母の名はなかった。

だから、職場で保護者名が必要な書類を受け取ったとき、そこには父親の名前を書くことが普通だと思い込んでいたのだ。

でも、考えてみたら両親がいるなら保護者は2人、どちらの名前を書いてもいいし、一行に連盟で書いてもいいのだ。

職場では、そのKさんの訴えを聞いてから、世帯主と指定されている場合を除き、保護者欄がお母さんの名前だけであっても、指摘をしないようにしようと、決めた。私は、次年度、書類を受け取る立場になった時、それを念頭に対応した。保護者名に両方並んでいるのを見たときは、微笑ましく思えた。

あれから離職して私も保護者になり、数々の書類を書く。書類を書くのは、ほぼ私で、堂々と自分の名前を書くが、それに対し疑問を呈されたことは、一度もない。少しづつ周りの認識も変わってきていると感じる。

『思い込みが変わったこと』に間に合わなかったエッセイです。



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