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秋の美術館デート

いろいろと事情はあったのですが、20年以上ぶりに妻以外の女性と2人でデートをしました

家まで車で迎えに行き、高速道路で目的の美術館に向かいます
その美術館は間もなく長期間の改修工事が始まるため、その前にどうしても行きたかったそうです

チケットと一緒に渡されたチラシには、2027年春再オープンと書いてありました 彼女はそれを見て「私はもう生きてないわね」と笑いながら言いました

展示を見終えて「図録は欲しい?」と私が聞くと「いらないわ」と答えました 暗い作品ばかりの展示だったので、私もその方が良いと思いました

並べられているポストカードから、私は明るい色彩のヒマワリの絵と、菊の絵のカードをそれぞれ1枚ずつ選んで買いました
その横で、彼女は丸めた一万円札を募金箱に入れていました

お昼は、予約をしていた路地裏にある小さなレストランに行きました
季節の野菜を昔ながらの自然な方法で丁寧に調理する発酵料理のお店です

「こんなにたくさん食べたのは久しぶりよ、いつも一人だから食欲がなくてね」

食後の飲み物を選ぶとき、彼女はアイスラテの写真を指さして「私はこれ」と言いました 店員の女性が「ミルクは豆乳にも出来ますがどうなさいますか?」と訪ねましたが、彼女は応えませんでした

 「牛乳と豆乳どっちがいい?」と私が聞くと「ミルクはいらないわ」というので、私と店員さんは目を合わせました
「では、牛乳のアイスラテとアイスコーヒーを1つずつお願いします、ガムシロップも別でください」と私が伝えると、店員さんは安心した様子で軽く会釈をしてさがっていきました

まもなくして運ばれてきた白と黒のグラスを見て、彼女は迷わず黒い方のグラスを取りました 私は小さな白いポットを差し出して「ガムシロップは入れる?」と聞くと「半分飲んでから残りの半分にだけお砂糖を入れるの、いつもそうしているの」と言い、彼女は本当に半分ほど飲んだ後にガムシロップを入れていました

車の中でもレストランでも、博識な彼女との会話が途切れることはありません 知っていることがとても多くて、考えていることもとても多くて、知らないことに関しては、目を輝かせて興味を示します

家に帰ってくると、彼女は熱いお茶をいれてくれました
「外は涼しかったけど、家の中はまだ暑いわね」と言いながらエアコンを付けて、冷蔵庫から あずきバーを2つ持ってきました

「これ結構硬いけど、よく食べられるね」と私が言うと「耳は悪いけど、歯は丈夫なのよ」と得意気です

「庭に咲いてる白い花はムクゲかな、少しもらってっていい?」と私が聞くと「好きなだけどうぞ、そこにハサミがあるわ お母さんに持っていくのね」

花を摘んで、帰ろうとする私に「あなた料理できるんでしょ、今度ここで何か作ってれない?」というので「簡単なものしか作れないけど、それでよければかまわないよ」と答えると、嬉しそうに笑ってくれました

「これ、どっちか選んで?」とポスカードを渡すと、彼女は2枚を見比べて、菊の花の方を選びました
「今日はありがとう、お父さんによろしく」

再オープンしたらまた一緒に行く約束をしました
あずきバーを嚙み砕く96歳の伯母

最後まで読んでいただきありがとうございました


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