探偵シューマッハと相棒バリチェロ第五話 「雨漏りと赤い影」
1. ビートの悲鳴
夜の路地裏。バリチェロのホンダ・ビートは、まるで瀕死のカエルのような音を立てながら止まった。
エアコンは既に壊れ、タコメーターは1000回転で固まったまま。それでも30万キロを超えて快調に走り続けてきた愛車だったが、この日は雨漏りまで全開モードだった。
「シューマッハ、背中が冷たい!雨漏りがシートを直撃してる!」
「おい、相棒……君の背中だけじゃないぞ。俺のフェラーリのほうまで湿気でカビそうだ」
雨に打たれるフェラーリとホンダ・ビート。赤とダークグリーンのコントラストが、妙に場末の雰囲気を際立たせていた。
2. 街中最速伝説
それでもビートは街中では妙に速い。狭い裏道に入れば、フェラーリすらついていけない瞬間がある。
信号待ちで、隣の若者が最新型スポーツカーで挑発してきたが――
「見たか? 0→30km/hならビートはフェラーリよりも速いんだ!」
「……いや、それ誇らしげに言うことか?」
バリチェロの胸を張る顔に、シューマッハは呆れ半分、笑い半分で肩をすくめた。
3. 新たな依頼人
その夜、二人の探偵事務所に奇妙な依頼人が現れる。
黒い傘を差し、顔の半分をマスクで隠したその人物は、震える声でこう告げた。
「……“赤い影”を追ってください」
赤い影――。
街で囁かれている都市伝説のような存在。姿を見た者は必ず不幸に見舞われ、やがて消えるという。
「ただの噂話だろう?」
「いえ……私の兄も、“赤い影”を見た翌日に姿を消しました」
バリチェロは冗談半分で言った。
「赤い影って……フェラーリじゃないよな、シューマッハ?」
「やめろ、そんな冗談」
だが、その時フェラーリのリアウィンドウに、一瞬だけ赤い人影が映った気がした。
4. 路地裏の追跡
依頼を受けた二人は、夜の街へと繰り出す。
雨で滑りやすい路面を、ビートがぎこちなく進む。
「ワイパーが動かない!前が見えない!」
「だったら窓から顔を出せ!」
「冷たい雨が顔に直撃するんだぞ!」
そんな漫才を繰り広げながらも、二人は“赤い影”を追った。
路地裏で何度も見失いそうになりながら、ついに廃工場にたどり着く。
5. 意外な人物
廃工場の奥に立っていたのは――。
「なっ……お前は……!」
そこにいたのは、第四話で容疑者として浮上したが、無関係と判断されていた人物だった。
笑みを浮かべ、赤いコートを纏っていた。
「ここまで来るとは思わなかったよ。探偵さんたち」
バリチェロが小声で囁く。
「やばいな……この展開、完全に推理小説の“犯人登場”パターンだぞ」
「黙れ。集中しろ」
赤いコートの人物が一歩前に出た瞬間、工場全体の電気が落ち、真っ暗になる。
次に照明が点いた時――そこにはもう誰もいなかった。
6. 不穏な終わり
残されたのは、赤い布切れ一枚。
そこには血のような染みがついていた。
シューマッハは布を握りしめながら呟く。
「これは……まだ終わっていない」
バリチェロは背筋を震わせつつも、無理に笑おうとした。
「おい、続きが怖いぞ……次はビートで逃げ切れるかな?」
その瞬間、背後でビートのエンジンがひとりでにかかった。
タコメーターは壊れているはずなのに、針がグッと動き――**「4000回転」**を指した。
二人は顔を見合わせた。
「……ビートが、自分で走り出そうとしてる?」
次の瞬間、ビートは猛スピードで廃工場の闇へ突っ込んでいった――。
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【第五話 終】
👉 物語は続く。
「赤い影」とは誰か?
走り出したホンダ・ビートに秘められた真実とは?
