正論だけでは、人は動かない
仕事をしていると、それは正論だ。という言葉を耳にすることがあります。
私自身、正論は大切だと思っています。
間違っていることを正すことは、本人のためにも、組織のためにも必要です。
ただ、経験を積んでいくなかで一つ感じるようになったことがあります。
正論だけでは、人は動かない。
そして、そのことを考えるようになったきっかけは、実は自分自身の反省でした。
思考力を鍛えたいのに、答えを教えてしまっていた
私は、メンバーには思考力を身につけてほしいと思っています。
自分で考え、自分で答えを出せる人になってほしい。
そう思って関わっているのですが、あるとき気づきました。
私は、「こう考えればいいよ」「答えはこうじゃないかな」と、つい答えを言ってしまっていることがあったのです。
もちろん、相手のためを思ってです。
早く理解してほしい。
遠回りをしてほしくない。そんな気持ちからでした。
相手が悩んでいる姿を見ると、管理職としては、つい答えを教えたくなります。
自分は経験してきた。自分は答えを知っている。だから教えたほうが早い。
実際、その場は早く終わります。
でも、それは仕事が終わっただけで、成長したとは限りません。
人から教えてもらった答えは忘れてしまっても、自分で考え、悩み、たどり着いた答えは、不思議と忘れないものです。
だからこそ、後から振り返ると、私は思考力を育てたいと言いながら、正論という答えを教えてしまっていたのではないかと思うようになりました。
もしかすると私は、成長を早めようとして、成長する機会を奪っていたのかもしれません。
これは管理職になって10年以上経過した今でもやってしまうことがあります。

正しいことでも、相手が受け止められるタイミングは違う
もう一つ、考えさせられたことがあります。
相手のためになると思い、厳しく正論を伝えたことがありました。
内容は間違っていません。
今でも、言ったこと自体は正しかったと思っています。
でも、その人には全く響きませんでした。
むしろいやな気持ちになっているように見受けられました。
そのとき気づいたのです。
正しいことでも、その人が受け止められるタイミングとは限らない。
人には、それぞれ経験があります。
価値観もあります。
置かれている状況も違います。
こちらにとっては正論でも、相手にはまだ受け止められないことがあります。
私も若い頃は、「正しいことを言えば伝わる」と思っていました。
むしろ、間違ったままにしておくことの方が良くないと考えていました。
だから、できるだけ早く正そうとしていました。
ただ、経験する中で分かったのは、人は正しさではなく、納得して動くということでした。
納得していない人に正論だけを伝えても、相手の心には届きません。
だから人は、正しさだけでは動かないのだと思います。
正論は必要。でも、目的を忘れたくない
私は、正論が嫌われることがあるのは、正論が間違っているからではないと思っています。
その人にとって、「今は言われたくないこと」だからです。
もちろん、すぐに正さなければならないこともあります。
たとえば、放置すれば本人や周りに実害が及ぶこと、判断や行動が別の間違いを重ねていくようなことは、私は迷わずその場で伝えます。
正すことは、とても大切だからです。
一方で、実害には直結しない、本人の考え方や姿勢に関わるような正論は、必ずしもその場で伝える必要はないと思っています。
相手が受け止められる状態になってから伝えたほうが、結果として成長につながることも少なくありません。
急ぐべきものと、待てるもの。
その見極めが、マネジメントの大切な仕事ではないでしょうか。
最後に
私は正論とは、自分の正しさを証明するためのものではないと思うようになりました。
相手を言い負かすためのものでもありません。
もちろん、正すべきことは正さなければいけません。
それは、管理職の大切な役割だと思っています。
ただ、その正論が相手を成長させるものなのか、それとも思考を止めてしまうものなのかは、いつも考えていたいと思っています。
思考力を育てたいのであれば、答えを教えるだけでは足りません。
自分で考え、自分で気づき、自分で答えを見つける経験が必要です。
だから私は、正論は、答えではなく、相手が考えるきっかけであるべきなのかもしれないと思っています。
今、私が正論を口にするとき、自分に問いかけることがあります。
「この言葉は正しいだろうか。」
ではありません。
「この言葉は、この人が前へ進むきっかけになるだろうか。」
その問いに、いつも自信を持って答えられるわけではありません。
それでも問い続けることをやめない。
そして、管理職の仕事は、正しい答えを伝えることではなく、相手が自ら答えを見つけられるように支援することなのかもしれません。
正論は、人を変えるために使うものではありません。
人が自ら考え、自ら変わろうと思えるきっかけをつくるために使うもの。
最近は、そんなことを考えています。
執筆:松村 健太
BCC株式会社 IT営業アウトソーシングカンパニー カンパニー長
営業組織の運営をはじめ、マーケティングや採用、広報など幅広い業務に携わる。営業や組織づくり、マネジメントについて、現場で感じたことを発信しています。
公式サイトはこちら →
