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【BCM 001】第112信:公開データで企業を測る ④ ― 配点を設計する

与信管理事務局(BCM)の001だ。

前信(第111信・実践ガイド)で、EDINET APIの具体的な利用手順を述べた。

今信では、7つの指標とGC関連情報に対してどのように配点を設計したかを述べる。スコアリングモデルの核心部分だ。


本論①:100点満点の設計思想

配点の設計にあたり、二つの方針を置いた。

方針1:満点は100点。

100点満点にした理由は単純だ。直感的に分かりやすいからだ。80点と言えば「まあまあ良い」、30点と言えば「かなり悪い」。新入社員でも、この感覚は共有できる。

方針2:マイナス点を認める。

通常のスコアリングでは、最低点は0点にすることが多い。しかし、債務超過や大幅赤字は「0点では足りない」危険信号だ。マイナス点を設けることで、深刻な財務状態をスコアに明確に反映させる。

理論上の最高点は100点、最低点はマイナス45点だ。


本論②:各指標の配点

7つの指標の配点上限を以下に示す。

安定性指標(合計55点)

  • 売上高:0〜15点

  • 自己資本額:マイナス10〜20点

  • 自己資本比率:マイナス15〜20点

収益性指標(合計25点)

  • 償却前利益:マイナス15〜15点

  • 償却前利益率:0〜10点

財務健全性指標(合計20点)

  • 借入依存度:マイナス10〜10点

  • 固定長期適合率:マイナス10〜10点

GC関連(減点のみ)

  • 継続企業の前提に関する注記(GC注記):マイナス10点

  • 重要事象等:マイナス5点

安定性に55点、収益性に25点、財務健全性に20点。安定性の比重が最も大きい。GC関連は加点なし・減点のみの設計だ。

この比率には理由がある。与信管理の第一の関心は「この企業は潰れないか」だ。収益力が高くても、資本が脆弱なら倒産する。収益力は変動するが、資本は蓄積だ。蓄積の厚みをより重く見る設計にした。


本論③:マイナス点の設計

マイナス点は、三つの指標に設けた。

自己資本額:債務超過でマイナス10点。 全ての資産を売却しても負債を返済できない状態は、それだけで大きなリスクシグナルだ。

自己資本比率:債務超過でマイナス15点、10%未満でマイナス10点。 自己資本比率が極端に低い企業は、外部環境の変化に対する耐性がない。ただし、金融機関は事業構造上、自己資本比率が10%を下回ることが通常であるため、金融機関に限り10%未満のマイナスを適用しない。

償却前利益:赤字幅に応じてマイナス5〜15点。 赤字が大きいほど、資本の毀損スピードが速い。

借入依存度・固定長期適合率:極端に悪い場合にマイナス。 借入依存度が50%を超える、あるいは固定長期適合率が100%を超える場合は、資金繰りリスクが高いと判断する。

GC注記:マイナス10点。重要事象等:マイナス5点。 企業自身が継続企業の前提に疑義があると開示している場合、それは財務数値以上に直接的な警告だ。GC注記は最も重い警告であり、10点の減点とした。重要事象等はGC注記の手前の段階であり、5点の減点とした。なお、GC注記がある企業はほぼ確実に重要事象等も記載しているため、両方がある場合はGC注記のマイナス10点のみを適用し、重複加算はしない。


本論④:閾値の調整プロセス

最初に設計した配点で、約3,500社超のスコアを算出した。結果を見て、配点を調整した。このプロセスを何度も繰り返した。

調整の視点は三つだ。

視点1:分布のバランス。 上位に偏りすぎていないか。下位に偏りすぎていないか。極端な偏りは、指標の閾値が不適切であることを示す。

視点2:境界線の妥当性。 「◎」と「○」の境界、「△」と「×」の境界に位置する企業を個別に確認し、判定が妥当かを検証した。境界線上の企業が直感に反する場合は、閾値を調整した。

視点3:既知の企業との整合性。 業界で知名度のある企業、過去に問題が報じられた企業のスコアを確認し、実態と大きく乖離していないかを確認した。

この調整プロセスも、生成AIとの協働で進めた。「36点の企業を見せてくれ」「自己資本比率が50%以上なのに×判定の企業は何社あるか」。こうした検証クエリを投げ、結果を見て、配点を微調整する。このサイクルを、短時間で何度も回せるのが生成AIの強みだ。


本論⑤:4段階の判定

最終的なスコアを、4段階で判定する。

  • ◎(優良圏):70点以上

  • ○(安全圏):50〜69点

  • △(注意圏):36〜49点

  • ×(危険圏):35点以下

当初は3段階(○△×)で判定する予定だった。「ざっくり分析」の3段階判定とも合致するからだ。

しかし、上場企業はそもそも倒産の可能性が低く、問題のない先が多い。36点から69点までを「△」とすると、△の範囲が広すぎると感じた。あくまで個人的な感覚ではあるが、実態と合わない気がしたのだ。○と◎はざっくり○と考えてもらっても構わないのだが、それもまた実態を正確に反映しない。そこで、あえて○と◎に分けた。

同様に、非上場企業や中小企業も含めてスコアリングや格付を構築する際には、△や×のレンジをもう少し細分化した方が実態に合うのかもしれない。しかし、今回はあくまで上場企業のデータを使ったトライアルだ。これ以上の細分化は不要と判断した。

「◎」は、財務指標上は安定している企業だ。ただし、安心してよいという意味ではない。財務指標には現れないリスク(経営者の問題、業界の構造変化、不正会計等)は別途確認する必要がある。

「×」は、財務指標上、明確な危険信号がある企業だ。取引を開始する前に、慎重な審査が必要だ。ただし、「×」だから必ず倒産するわけではない。財務が悪くても、親会社の支援や特殊な事業構造で存続する企業はある。

重要なのは、この判定を絶対視しないことだ。スコアリングは、人間の判断を助ける道具であって、判断そのものではない。

次信では、実際のスコアリング結果を分析する。


BCM(Bureau of Credit Management)
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