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BCPを機能させるための最初の一歩[1-3]

大がかりな改訂より先に確認すべきこと

「課題は分かった。でも、結局何から手をつければいいのか分からない」

第1弾・第2弾を読んだ方の中には、こう感じた方もいるかもしれません。

実務を通じて感じてきたのは、この“最初の一歩が見えない状態”こそが、BCPが動かない最大の理由になっているということです。

BCPは一から作り直す必要はありません。

むしろ重要なのは、今すでにあるBCPが「動く前提になっているか」を確認することです。

大がかりな見直しは必要ありません。

まずは、小さな視点から現在のBCPを点検してみることです。


①「誰が・いつ・何を判断するか」が書かれているか(Yes / No)

まず一つ目の問いです。

あなたの組織のBCPには、「誰が・いつ・何を判断するか」が具体的に書かれているでしょうか。

例えば、「災害時は対策本部が判断する」と書かれているだけでは、現場では動きません。

重要なのは、対策本部の中の誰が、どのタイミングで、どの基準によって判断するのかまで整理されていることです。

特に災害発生直後は、管理者が不在である可能性もあります。

その場にいる職員が、どこまで判断してよいのか。

そこまで整理されていなければ、現場は必ず止まります。

この問いに対してすぐに答えられない場合、それはBCPそのものの問題ではなく、“意思決定構造の設計が未整理であるサイン”です。


②非常時の優先順位が「平時と異なる基準」で明示されているか(Yes / No)

二つ目の問いです。

非常時の優先順位は、平時と同じ基準で考えられていないでしょうか。

実務を通じて感じてきたのは、「すべてを守る」という前提のままでは、現場は動けないということです。

人命、施設機能の維持、業務継続、情報共有。

限られた資源の中で、何を優先するのかが明確になっていなければ、判断は必ず迷いに変わります。

平時には正しい判断でも、非常時には必ずしも正解とは限りません。

言い換えれば、「通常時の正しさ」と「非常時の正しさ」は一致しないことがあります。

この切り替え基準が明文化されているかどうかは、BCPの実効性を大きく左右します。


③訓練を通じて「迷った場面・止まった判断」が記録されているか(Yes / No)

三つ目の問いです。

最後にBCPに基づく訓練を行ったのはいつでしょうか。

そのとき、「想定どおりにできたこと」だけではなく、「迷った場面」や「止まった判断」は記録されているでしょうか。

訓練が重要なのは、正解を確認するためではありません。

本来の目的は、計画と現実のズレを見つけることにあります。

しかし実務では、手順どおりに実施できたかどうかの確認で終わってしまうケースも少なくありません。

前回触れたように、訓練が単なる確認作業になってしまえば、そこから改善は生まれません。

記録とは、単なる履歴ではありません。

次の判断を改善するために残すものです。

一つでもNoがあれば、それが起点になる

ここまでの3つの問いは、どれも特別な準備を必要とするものではありません。

しかし、どれか一つでも「No」がある場合、それはBCPを見直すための十分な起点になります。

BCPの改善は、大きな改訂から始める必要はありません。

むしろ重要なのは、現状を正しく認識することです。

完璧な計画を作ることに時間をかけるよりも、まずは一つの課題を修正し、「動き出せる状態」に変えていくことの方が優先されます。


BCPは完成させるものではありません。

動かし続けるための仕組みです。

そして、その第一歩は壮大な見直しではなく、小さな違和感に気づくことから始まります。

もし今回の3つの問いの中に一つでも引っかかる点があったなら、それはすでに改善の入口に立っているということです。


次回

次回は、「医療・福祉施設に特有のBCPの課題」について整理していきます。

同じBCPでも、現場の性質によって機能しやすさは大きく変わります。

制度だけでは見えにくい、現場固有の構造課題について掘り下げていきます。

あなたのBCPに、「No」はいくつありましたか。