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施設規模によって、BCPの設計は変わる[4-8]

施設の規模が小さいほど、BCPも作りやすいと思っていませんか。

利用者数が少ない。職員数も少ない。建物も小さい。そう考えると、小規模な施設の方が災害時の対応は簡単に見えるかもしれません。反対に、大規模な施設では、利用者も職員も多く、建物も大きくなります。そのため、「大規模施設の方がBCPは難しい」と考えがちです。

しかし、施設規模とBCPの難しさは、単純な大小だけでは決まりません。重要なのは、その施設がどの機能を自ら持ち、どの機能を他の施設や人員に依存しているのかです。小規模だからこそ、他の施設への依存が大きい場合があります。大規模だからこそ、一部の職員や専門職に機能が集中している場合もあります。

災害時に問題となるのは、単純な「人数」ではありません。どこに機能が集中しているのか。どこに依存しているのか。そして、その機能が失われたとき、どの範囲に影響が及ぶのか。この視点から施設規模を見直す必要があります。


小規模施設は「単独で完結する」とは限らない

特別養護老人ホームには、定員に制限のない広域型と、定員29人以下の地域密着型があります。地域密着型には、単独型、サテライト型、併設型といった形態があります。このうちサテライト型は、本体施設との連携を前提とした形態です。本体施設と原則20分以内の距離で連携し、必要な機能を本体施設との関係の中で確保します。

本体施設との連携が適切に確保される場合には、医師についてサテライト側に配置しないことが可能とされているほか、生活相談員についても本体施設との兼務が認められています。これは、単に「小規模施設では人員が少なくてよい」という話ではありません。小規模なサテライト型施設は、制度上そもそも、本体施設との連携によって機能する構造を持っているということです。つまり、単独で完結する施設として設計されているわけではありません。

平時には、この構造が効率的に機能します。必要な専門機能を本体施設と共有することで、限られた人員を有効に活用できます。しかし、災害時には別の問題が生じます。本体施設が被災した場合。本体施設との通信が途絶した場合。本体施設からの応援が得られない場合。平時には「連携」として機能していた関係が、災害時には重要な依存関係として現れる可能性があります。

ここで重要なのは、サテライト型が脆弱だということではありません。制度上、連携を前提として成立している施設である以上、その連携が災害時にも機能するのかをBCPの中で考える必要があるということです。

自施設が平時から依存している機能は、災害時にも確実に確保できる設計になっているでしょうか。


大規模施設では、一人の機能停止が広い範囲に影響する

一方、大規模な施設には、別の構造があります。利用者が多く、職員も多い。そのため、すべての機能が一人の職員に依存しているようには見えません。

しかし、制度上の人員配置を見ていくと、施設の規模にかかわらず、施設長や栄養士など、一定の職種については1名の配置で足りる項目があります。一方、生活相談員のように、入所者数に応じて配置人数が増える職種もあります。このような構造は、規模が大きい施設にとって、重要な意味を持ちます。例えば、規模にかかわらず1名の配置で足りる職種の場合、その職員が不在になれば、その職種の機能全体が影響を受けます。そして、施設の規模が大きければ、その影響を受ける利用者や業務の範囲も広くなります。

これが、規模の大きな施設における「集中依存」の問題です。人員が多いことと、機能が分散していることは同じではありません。職員全体の人数が多くても、特定の判断や専門機能が一人に集中していれば、その人の不在が施設全体に影響する可能性があります。これは、スケールメリットの裏側でもあります。大規模施設では、一定の専門職を効率的に配置できる一方で、その機能が少数の職員に集中することがあります。

BCPでは、単に「職員が何人いるか」だけを見るのでは不十分です。誰がいなければ、どの機能が止まるのか。その機能が止まった場合、どの範囲に影響が及ぶのか。そして、代替できる人員や手順があるのか。これを確認する必要があります。

自施設では、人数の多さによって見えにくくなっている「一人への依存」が存在していないでしょうか。


規模が変われば、脆弱性の形も変わる

これまで扱ってきた特別養護老人ホーム、障害者支援施設、グループホーム、訪問介護なども、規模によってBCPの設計は変わります。同じサービス種別であっても、利用者数、職員数、建物の規模、拠点の数、専門職の配置、他施設との連携状況は異なります。

小規模な施設では、一人の職員の不在が大きな影響を及ぼすことがあります。複数の拠点を持つ法人では、拠点間の連携が強みになる一方で、特定の本部機能や拠点への依存が生じることもあります。大規模施設では、多くの職員を確保できる一方で、専門的な判断や特定の業務が少数の職員に集中することがあります。訪問系サービスでは、利用者が地域に分散しているため、事業所の規模だけでは対応能力を判断できません。

重要なのは、規模の大小ではなく、機能の配置です。何が自施設の中にあるのか。何が他の施設にあるのか。誰がいなければ機能しないのか。どこが途絶すると、全体に影響するのか。この構造を整理することが、BCP設計の重要な作業になります。

自施設の規模に固有の脆弱性は、人数の多さや少なさではなく、どの機能に現れているでしょうか。


規模に応じたBCPは、機能の依存関係から始まる

施設規模が大きいか小さいかによって、災害時の課題は変わります。小規模施設では、本体施設や他の拠点への依存が重要な課題になることがあります。大規模施設では、少数の専門職や特定の機能への集中依存が課題になることがあります。

つまり、規模の違いは、単純な「対応する人数の違い」ではありません。災害時に、何が失われやすいのか。どの機能が途絶しやすいのか。その機能を代替できるのか。そして、失われた場合に、どの範囲に影響が及ぶのか。これらの構造が変わるということです。

BCPを設計するとき、まず施設の規模を確認することは必要です。しかし、それだけでは不十分です。規模が小さいから簡単だと考えるのではなく、何に依存しているのかを確認する。規模が大きいから人員に余裕があると考えるのではなく、どの機能が少数の職員に集中しているのかを確認する。この視点が必要です。

自施設がどの機能を単独で持ち、どの機能を他に依存しているのかを整理することが、規模に応じたBCP設計の出発点になります。施設規模を「小さいから簡単」「大きいから難しい」という尺度だけで見てしまうと、本当の脆弱性を見落とす可能性があります。


次回

次回は、このシリーズの最終回です。特別養護老人ホーム、障害者支援施設、グループホーム、訪問介護、避難確保計画、施設規模の違いを取り上げてきましたが、その違いを見ていくと、施設種別を超えて共通する本質も見えてきます。最終回では、各回で確認してきた制度上の数字や基準が、いずれも「自施設の現実に置き換えて考えるための出発点」だったことを振り返りながら、BCPを機能させるために必要な視点を考えます。


参考資料

・指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039

・指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100034