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用語集: 「バイオパワー」

今回は「バイオパワー」について見ていきましょう。

ミシェル・フーコーの言う「バイオパワー」について見ていきます。

ちょっと、恐ろしいかも...

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「バイオパワー(biopouvoir)」: 近代以降の社会において、国家や権力が人々の「生(bios)」、つまり生命や身体、そして人口全体を管理・統制しようとするメカニズムのことです。フーコーは、伝統的な権力(主権的権力)が「死を与えるか、生かしておくか」という形で作用するのに対し、近代の権力は「生かすように仕向け、死を管理する」という形で作用すると考えました。

バイオパワーは、人々の生命や健康を管理することで、社会全体の効率性や生産性を高め、国家の力を増強することを目的とします。それは、単なる抑圧的な力ではなく、人々の行動や思考、さらには生き方そのものを積極的に形成しようとする、生産的な権力の形態です。

フーコーは、バイオパワーを構成する主要な技術として、以下の二つを挙げました。

  1. 身体の解剖政治(アナトモポリティクス、anatomo-politics of the human body): これは、個人の身体を訓練し、規律を与え、能力を最大限に引き出すための技術です。学校教育、軍隊、工場、病院などがその代表的な例です。個人の身体は、効率的な機械のように扱われ、監視、訓練、矯正を通じて、社会にとって有用な存在になるように管理されます。

  2. 人口の生政治(ビオポリティクス、biopolitics of the population): これは、人口全体を一つの生物学的現象として捉え、その生命過程(出生、死亡、疾病、健康、寿命など)を統計的に把握し、管理・調整するための技術です。公衆衛生、人口統計、社会保障制度などがこれにあたります。国家は、人口全体の健康状態を改善したり、出生率を調整したりすることで、社会全体の安定と繁栄を目指します。

主権的権力との違い:

フーコーは、中世までの権力形態を「主権的権力(pouvoir souverain)」と呼びました。これは、君主が領土と臣民に対して絶対的な支配権を持ち、「死を与える権利、生かしておく権利」を独占する権力です。例えば、反逆者に対して死刑を宣告するなどがその典型です。

一方、近代以降に台頭したバイオパワーは、直接的に個人の生命を奪うのではなく、人々の生を管理し、最適化することで間接的に死を管理するようになります。例えば、伝染病の予防や公衆衛生の向上は、人々の寿命を延ばすことを目的としていますが、同時に、国家にとって有用な人口を維持するという側面も持ち合わせています。

バイオパワーの例:

  • 公衆衛生政策: 予防接種の義務化、健康診断の実施、感染症対策などは、人口全体の健康状態を向上させ、疾病による死亡率を下げるための生政治の例です。

  • 人口統計: 出生率、死亡率、平均寿命などのデータを収集・分析することで、国家は人口動態を把握し、将来の政策立案に役立てます。

  • 社会保障制度: 年金制度や医療保険制度などは、人々の生活を保障することで、社会の安定を図る生政治の例と言えます。

  • 優生学: 特定の遺伝的特徴を持つ人々を排除しようとする優生学的な思想も、人口の質を向上させようとする極端な形の生政治と見なすことができます。

  • 都市計画: 都市の衛生状態を改善し、人々の健康を促進するための都市計画も、生政治の一環として捉えられます。

フーコーにおけるバイオパワーの重要性:

フーコーは、バイオパワーの登場によって、権力の作用の仕方が根本的に変化したと考えました。近代社会においては、権力は個人の自由を抑圧するだけでなく、人々の生命そのものを管理し、社会全体を統制する力として作用していると指摘しました。バイオパワーの概念は、現代社会における様々な社会現象や政治問題を理解するための重要な視点を提供します。

横浜という現在の場所で、私たちが当たり前のように享受している医療制度や社会保障制度、都市のインフラなども、フーコーの言うバイオパワーの現れとして捉えることができるでしょう。

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