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『交際一カ月』

一月も後半の24日。
本来なら昨日の晩から慶司がウチにきて二人で過ごす土曜の夜。
慶司は今、関西に出張中だ。帰ってくるのは日曜日。
一人で過ごすなんて慣れてるはずなのに、週末アイツがいないだけでなんだか時間が長く感じる。
食事も面倒で食べていない。慶司が知ったら怒りそうだ。
その慶司からは昨日電話があったきり。

『一ヶ月記念なのに...』
『何言ってんだ。去年いい結果出したから今年も、って先方からの依頼だろ?』
『そうですけど...』
『日曜日にウチきたらいいんだし。待ってるから』
『はい...!』

本当は一緒にいたかった。
特別なことなんかしなくても同じ部屋にいられるだけでよかったんだけどな。

ーご褒美は雀さんでー

「オレのご褒美はお前なんだよ...」
思わず溢れた本音は誰にも届かない。
胸に抱いたすず子が苦しそうだった。

時計を見ると二十三時三十分。
今夜はもう寝てしまおう。
着替えようとソファから立ち上がるとテーブルの上で携帯が鳴った。
画面には『田中慶司』の文字。

『雀さん?まだ起きてた?』
「け、いし」
電話からは聞きたかった声。
呼吸が浅くなる。顔が熱い。

慶司の後ろに聞こえる音が...、外?
「よかった。電話できなくてごめん。実は...」

聞くと打ち合わせが早々に片付いたらしく今夜の新幹線に乗れたらしい。

「え?って、お前、今どこに...」
『雀さんとこの駅。今降りたところです』
「ッ!!」
『今から行ってもいいですか?』
「ッ!いいに決まってんだろッ!」

電話を切ったオレは家を飛び出した。

誰もいない商店街。
一ヶ月振りの全力疾走。
あのときもオレはお前に会いたくて走ってたっけ。

オレが慶司を見つけたのは
「慶司ッ!!」
「雀さん...?!」

あのときお前を突き放した階段の、
登り切った街灯の下。
走って息のあがったオレ。
驚いて呼吸を忘れた慶司。
誰もいない二人だけみたいな空気。

当然のように抱きつくオレと
当たり前のように受け止めてくれる慶司。

「間に合ってよかった」

ー一カ月記念日。

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