ジャンル違いどもの狂宴 #3
総十郎はさらに力を込めて疾走する。男児として、力を尽くして勝利を斬り取ることへの憧れはあった。
今こそそれを得る千載一遇の好機か。
――柄にもなく高揚しておるな。
そんな自らに、苦笑する。
〈――絶罪、執行――〉
それは、死のように無慈悲に。
烈火に向けて、殺到した。
「はいドーン」
かに見えた瞬間、爆速踏み込みからの爆速正拳で〈虫〉はバラバラに吹き飛んだ!!
装甲も内部構造も粉砕され、破片が烈火の周囲に飛び散った!! なんかようわからん青い液体も舞い散ってる!!
「……えぇ……。」
思わず足を止め、呻く総十郎。
エルフのお歴々も目ん玉飛び出て顎が外れる勢いで驚愕中である。
いや驚愕と言うか、ドン引きであった。
「毎度思うんだけどメカっぽいのが何考えてんのかいちいち声に出して言うのおかしくね? 敵に作戦バレね? なんなの? メカアピールしたいの? キャラ付けしたいの?」
ツカツカとそこに歩み寄る総十郎。
「おい、黒神。」
「あぁ? ロリコンじゃねーか」
こっち向いた瞬間、烈火を鞘で殴り飛ばした。
「へぶぅッ!?」
ぎゅるぎゅる回りながら吹っ飛んで、ドシャアと倒れる。
「ってェェェェェェなコラァ!! あにすんだロリコンてめぇこの野郎!!!!」
「なにゆえ殴られたか、わかるか?」
語気に力を込め、真正面から睨みつける。
すると、気圧されたのか急にしどろもどろになる烈火。
「いや、えーと、なん……ででしょうかね総十郎さん……?」
そこへ一歩踏み出して、ずいと顔を近づける。
「――なんとなくだ。」
「なんとなく殴んなやァァァァァァァァァッッ!!!!!!」
烈火の絶叫を契機に、周囲のエルフたちが一斉に我に返った。
「レ、レッカ……どの……」
エルフ騎士がひきつった声を出す。あぁもう完全にドン引きしてるよこれ。
「おう! 存分に恐れ敬え凡人この野郎!」
「あなたは……人間、なのですか……?」
「見りゃわかんだろーがおめー人間ですゥー、頭のてっぺんから何かの先端まで混じりっ気なく健康優良日本男児ですゥー」
「ど、どのようにして、そのような、闘神のごとき力を……?」
「ググれカス」
「ぐぐ……?」
「相変わらずわけのわからんことばかり言って相手を困らせてゐるな黒神。」
「ぐぇ!」
烈火を押し退け、総十郎はエルフ騎士たちに微笑みかける。
「お初にお目にかゝる。連れが大変失礼した。小生は鵺火総十郎と申すロリコンである。以後お見知りおきを。」
「こ、これはご丁寧に。貴殿ももしや……レッカどのと同じく異界の英雄どのでは?」
「お察しの通り、此度は異界よりシャーリィ殿下のお招きに応じ、馳せ参じた次第。オブスキュアの国難に対し、微力ながら尽くさせていたゞく所存である。」
「おぉ……それはありがたい。なんとお礼を申し上げたら良いものやら……」
「お心遣いだけ受け取っておこう。小生はシャーリィ殿下の海岳丘山なる御心に感じ入り、行動するまでのこと。たゞし――」
横の烈火の首に鞘を引っかけて、ぐいと引き寄せる。
「ぐぇ」
「――この男はいさゝか以上に俗物であるゆえ、なにか物質的な謝礼を考えておいた方がよかろうとは思うが。」
「はは、心得ております。レッカどのはなかなか明朗なご気性のようで」
「うむ、言えておる。実にわかりやすい。」
「てめーら実は俺のことバカにしてんな? オイそうなんだな? お前らね、俺のことナメすぎだよ? 烈火くんこれでも成人してるからね? 胸に秘めたものとかいろいろある感じのアレだからね? えーと、具体的には、あー、最近の性的妄想のトレンドは女子のへそを舐めくり回すことだ!!!! キャッ☆ 言っちゃった☆ 烈火くん秘密の性癖言っちゃった☆ 恥ずかしいっ♪」
「それで、シャーリィ殿下はいずこへ?」
「あゝ、それならばもう近くに来てゐるであろう。安心めされよ、殿下もリーネどのも無事である。」
「おや? 無視かな? シカトかな? スルーかな?」
「そうでしたか。〈虫〉の惨禍に巻き込まれでもしたらと思っておりましたが、一安心ですな」
「噂をすれば何とやら、姫君と騎士殿がおいでだ。」
「シュネービッチェン卿が子供を抱えているように見えるが……?」
「うむ、彼についても説明が必要であろうな。」
「あれあれ? おかしいぞぉ? 二人ともこっちに目を向けてくれなくなったぞぉ?」
「おおい、ソーチャンどのーっ! 大事ないでしょうかー?」
リーネ・シュネービッチェンの声が、ここまで届いてきた。
オブスキュア王国第二都市オンディーナは、かくして解放された。
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