推定捕獲レベル0.00002
思わぬ出会いで時間を食ってしまった。
フィンは急いで白い枝を斬伐霊光で片端から拾い集めると、戦術妖精と式神たちのところへ戻った。
見れば、銀袋には大量の小枝と落ち葉が入っている。
ていうか積み重なって山盛り状態だった。
「あわわっ、総員、作戦終了! もう十分でありますよっ!」
フィンが号令をかけると、戦術妖精と式神たちは一斉にやってきて整列、敬礼した。
戦術妖精は当たり前だが、式神たちのこの練度の高さは何なのだろうと思う。
ともかく、日が完全に沈まないうちに、野営予定地に戻ることにした。
●
「おやフィンくん、お帰り。」
「ただいまであります!」
柔らかい微笑みが出迎えてくれた。
優しいお帰りを言ってもらえて、元気なただいまが言える。ただそれだけのことが、なんだかとてもうれしい。
「これはまた、たくさん集めてきたものであるな。」
「頑張ったでありますっ! 他のお三方はどちらに?」
「あゝ、食材を求めてどこかに行ってしまったよ。仕様がないので小生は〈カビタス〉くんとお話をしておった。」
「お話、でありますか?」
「うむ、言葉はなくとも、会話はできる。彼は職場の人間関係に心を砕いてゐるようである。皆、優秀だがいさゝかまとまりに欠けると憂えておるよ。」
総十郎の横では、クレイスの頭に乗った〈カビタス〉くんが腕を組んでうんうんと頷いていた。
「〈カビタス〉くんはみんなのまとめ役でありますからね。あっ……」
残る六人の戦術妖精たちが小枝を放り出して〈カビタス〉を取り囲んだ。クレイスの頭でおしくらまんじゅうめいたことをしはじめる。
「もー、みんな意地っ張りというかなんというか……」
呆れて見上げるフィン。
ふと、視界の端に奇妙なものが出来上がっていることに気付く。
方形に切断された石材が円柱状に積み上げられた代物だ。一方だけ石が積み上がっておらず、上から見ると「C」の形をしていた。
「これは?」
「かまどである。」
「かまど、でありますか?」
「然り。そこにリーネどのお手製の土鍋がある。あれにちょうどいい大きさの風よけが必要である。そこの川辺から大きな石を見繕って形を整えて積み上げたのである。」
「おぉー、ソーチャンどのは野宿もお手の物でありますね! でも、どうやってあんなにキレイな四角形に?」
「我が神韻軍刀は、尋常な物質であれば抵抗なく切断可能である。実に造作もないことであった。」
あの奇妙な刀剣は、非常に剣呑な兵装らしい。
「小生、生粋のシテヰボオヰなれど、三度目の召喚の折にはさすがに野宿も強いられたものであるからなあ。あれは実に、実に長く辛い旅路であった……。」
遠い目になるソーチャンどの。
フィンは、召喚された際の冒険譚について聞きたくなり、口を開いた。
「だっからちっげーんだよ!!!! お前具材入れて塩振って煮れば料理になるとかどんだけ意識低いんだよ!!!! ヒくわ!!!! 重くヒくわ!!!! その胸についてんのは飾りかよ!!!!」
「おっぱいは今関係ないだろうがーっ! し、仕方ないじゃないか! わたしは、その、じ、自分で料理したことないし……材料調達専門だし……」
「はあああああああああ? あーもうこれだからポンコツ脳筋貴族娘は!!!!」
「ぽん……!? よくわからないがものすごく失礼なことを言われた気がする!!」
「いいかぁ? 汁物作るならまずダシを取る!!!! これ!!!! 基本!!!! いきなり具材入れる、ノー!!!! NG!!!! OK? OKアーハン?」
「あ、あーはん……」
「声が小せえ!!!!」
「あーはん!!!!」
「よくできました!! あっは~ん♪ て言いながら俺に対して股を開く権利をやろう!!!!」
「(無言の腹パン)」
騒々しいのが帰ってきた。背中に食材が入っていると思しき袋を背負った烈火とリーネが、相変わらずぎゃあぎゃあ言い合いながら戻ってくる。
ふと、色とりどりのキノコを山盛りにしたザルを抱えて、シャーリィ殿下がぽてぽてと駆け寄ってきた。
「わぁ、キレイでありますねっ! おかえりなさい殿下!」
ほんのり色づいた唇が、ただいまっ、と動いた。
「はいてめえら集合~。これより「異世界いい感じスープ」の制作に入るッ!!!! まず火を熾せぃ!!!! 俺はその間に材料を切り刻むッ!!!!」
「れ、レッカどの、お料理なんてできたでありますか?」
「んだテメェ、俺が料理できちゃおかしいかこの野郎!!」
「いやいやいやいや! それはおかしいでありますよ!!」
横でシャーリィ殿下がうんうんと頷いている。
「やだ……この子たち深刻な顔でわりと辛辣……」
「致し方なかろう。普段の言動を鑑みよ。小生も正直驚いておる。」
「ったくテメーらどいつもこいつもこの超天才をナメすぎですよ!!!! こちとら自炊歴十年じゃボケェ!!!!」
「ところで見事なかまどですね。さすがはソーチャンどのです。さっそく火を熾してみましょう!」
「うむ、火種はあるかね?」
「もちろん。フィンどの、落ち葉をかまどの中に入れていただけますか?」
「はぁーい!」
「はい出ましたよスルーですよ!!!! いいですゥ~!!!! 烈火くん慣れてま~す!!!! おい貧乳!!!! 具材洗うの手伝え!!!! あとロリコン!!!! てめぇおめでたい昆布か煮干し持ってんだろわかってんだよ出せオラァッ!!!!」
「……ないことはないが、あれは春日大社の竃殿にて調製された霊験灼たかな神饌であるがゆえ……」
「うっせえ!!!! このままだとただの塩水煮になるぞテメェいいのか!!!!」
「ぬぅ、罰当たりであるが致し方なしか。武甕槌氏には忘れず謝っておかねば……。」
なんかそういうわけでお料理タイムであった。
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