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特に空気を読まない超暴力がオークたちを襲う!!!!

  目次

 オークたちにとっては、何が起こったのかすらわからなかったという意味において、幸運な末路であった。
 二つの影が、肩を並べて堂々とこちらに歩み寄ってくるのに気づいたとき、オークたちはその身を焦がすブチ殺し欲求に従って咆哮を上げ、武器を手に取った。
 一人はヒョロついたカスだ。エルフとは違うようだったが、似たようなものだろう。
 もうひとりはずいぶん大柄だ。隣のカスに比べると歯ごたえがありそうである。
 オークたちは戦斧を振りかざし、殺戮の渇望に身を任せ、一斉に飛びかかった。
 正面、右、左、そして上。後先のことをまるで考えぬ殺到。

「――〈神韻探偵〉鵺火総十郎。一手奏楽たてまつる。」

 涼やかなその声がオークたちの耳朶に触れた瞬間――
 人影は、朧に霞む黒き風となった。柔らかく澄んだ音叉の調べが、大気を満たす。
 鎬に特殊な形状の篆刻が施された刀が一閃するたびに、剣光がオークの体を通過し、その命を奪ってゆく。
 血は一滴も流れない。
 研ぎ澄まされた斬閃が幾筋も蛍火のごとく宙に焼き付いた直後、オークたちは次々と倒れていった。外傷などない。
 刀に宿る高次元振動が、天上の楽曲を奏でると同時に、対象の分子振動と共振して、刃を抵抗もなく通過させる。
 そして心臓のみを斬り裂くのだ。
 いかなる防具も意味を成さぬ、絶死の撃刀。
 神籟孤影流しんらいこえいりゅう斬魔剣・雀式初伝――〈みつかけぼし〉。
 多数の敵を一息に葬る雀式の中でも、相手がまっすぐこちらに向かってくる状況を想定して成される運体である。
 武の常識から考えれば、そのような状況を想定すること自体敗北でしかない。神籟孤影流はそもそも超人的才覚がなくば初伝すら修められぬ異形の術理であり、体系化された魔剣とでも称すべきものであった。体得者は世の均衡を担う守護者となることを宿命づけられる。他の流派とは目指す場所が違うのだ。
 故に、不敗。
 数百体を数えるオークたちは、瞬く間に藁のごとく刈り取られてゆく。
 その横では――

「ヒャッハーッ!! 皆殺しだァァァァァァァアアアアアアアアアッッッッ!!!!」

 烈火の拳が唸りを上げると同時にオークは爆裂四散融解蒸発プラズマ化してこの世から消滅!!!!

「はいドーン! はいドーン! はいドーン! ドドドドドドーンッ!!!!!」

 もはやそれはパンチではない!!!! 爆撃である!!!! 燃料気化爆弾とかそのへんの威力である!!!!
 極限まで洗練された体捌きをもって神速に至った総十郎とは異なり、烈火の爆速は純然たる身体能力のゴリ押しであった!!!!
 拳が唸りを上げるたびに命中したオークはこの世から完全消滅し、発生した圧倒的絶対的な爆風は周囲の悪鬼どもを木の葉のごとく吹き飛ばす!!!!

「バーニング天才パンチ!!!!!」

 腰の入った一撃。巨大な拳状の飛び道具的なサムシングとなって数十体のオークを爆殺!!!! その周囲のオークもドミノ倒しのようにポポポポーンと爆裂する!!! 挨拶するたび友達増えるね!!!! 同時撃破ボーナスでスコアもうなぎ上りだ!!!!

「そろそろワンナップ近いよコレ!!!!」
「何を言っとるのかよくわからんが、凄まじいの一言だな。いかにしてその絶類の強さを得たのであるか?」
「あぁ? ググれ」

 世紀末伝承者 なり方

「そして肉と炭水化物をアホほど貪り食えぃッッ!!!!」

 爆速突進!!! オークの群れに突っ込んでってチュドドドドドドドドドドドドドーン!!!! 列車にひかれた方がまだマシな惨状の後を、総十郎が雷撃の速度で馳せる。非常に大雑把な烈火の無双乱舞から漏れた残党を丁寧に、かつ一瞬で葬り去ってゆく。

「これ、もう少し丁寧に攻撃せよ。残党が殿下らのもとへ向かったらどうするか。」
「あん? 別に問題ねーだろ。あのガキがいりゃどーにでもなるわ!」

 世紀末オラオララッシュがモーセのごとく緑の海をカチ割ってゆく!!
 しかしオーク、まったく戦意を失わない!! 凄まじい絶叫を放ちながら、次から次へと押し寄せてくる!!!

「……黒神よ。お主は、フィンくんのことをどう思う?」

 粗野でありながら意外に巧緻な戦斧の軌道を軽業めいてかわしざま、総十郎は尋ねた。
 全身の関節可動を同期させて捻りだした剣閃が、藁を刈り取るがごとく悪鬼の群れを薙ぎ倒してゆく。

「どーもこーもねーよ。俺はモヒカンとパイオツにしか興味ねーっつーの!!」
「それは嘘だな。お主はさきほど明らかにフィンくんを気づかった。お主の阿呆な発言のおかげで、場の中心がフィンくんから移り変わり、彼は自分が恐れられたということに気づかずに済んだ。」
「はぁ~? 気づかうゥ? 俺がァ? 誰をォ? マジ意味不っすわ~」

 烈火は相変わらず飛びまくりの暴れまくりの爆発四散させまくりだったが、やや動きが雑になった。咆哮と共に戦斧が烈火の肩口に叩き込まれ、バラバラに砕け散る。今回はじめての被弾であった。
 高速のあまり薙ぎ払っているように見える百烈の突きで周囲のオークを射殺しながら、総十郎は苦笑した。

「まぁ、お主がそう言い張るのならそういうことにしておこうか。」
「うっせーようぜーよ!!! なに小生はわかってる的反応してんだよファックオフくそがァァァ!!!!」
「……前から思っておったのだが、フィンくんの前で「くそ」などと汚い言葉を使うのは控えるべきではないか。」
「うんち!!!!!」
「いや違うそういうことではない。」
「だいべん!!!!!!!!!」
「黙れよ。」

 総十郎はため息交じりに目頭を揉みほぐした。
 やがて、ひときわ巨大な樹が二人の前に聳え立った。でかい。胴回りは大の男が五十人は手を繋がないと一周できないだろう。苔むした幹が変形して、螺旋階段を形作っている。

【続く】

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