見出し画像

『今日、最後のお客様なんです』——閉店後の個室サロンで

名前  : 白石 楓(しらいし かえで)
年齢  : 29歳
職業  : 美容師(表参道の隠れ家サロン「Feuille」オーナー件トップスタイリスト)
容姿  : ラベンダーピンクの毛先だけ内巻きヘア/目元ににじむ疲れが色気になる/グラマラス×くびれのコントラスト
身長  : 167cm
性格  : 誰にでも柔らかく完璧な笑顔を見せるプロだが、弱音は誰にも吐けない負けず嫌い
好きなもの: 深夜の技術動画チェック、行きつけの立ち飲みバーでの一杯だけの息抜き
口癖  : 「……大丈夫、慣れてますから」
秘密  : サロンの経営が実は綱渡りで、誰にも相談できずに一人で数字と向き合っている
今夜の彼女: 閉店後、最後の予約に紛れ込んだ指名客と二人きりになった

「今日、最後のご予約は……あ」

予約表を確認した楓の指先が、画面の上で止まった。時刻は二十時四十五分。本来なら閉店作業に入っている頃合いだったが、今日に限って一件だけ、遅い時間の予約が滑り込んでいた。名前を見て、小さく息を止める。三ヶ月に一度、必ず楓を指名してくる常連客だった。

シャンプー剤とアロマオイルの匂いが染みついた店内には、もう誰もいない。表参道の裏路地に建つ隠れ家サロン「Feuille」は、楓が五年前に独立して構えた城だ。壁一面のミラーに、照明を落とした店内が静かに映り込んでいる。

——正直、少し身構えた。前回の施術のとき、鏡越しに視線が合う回数が、明らかに多かったから。

ドアベルが鳴る。ガラス越しに、見慣れたコートのシルエットが立っていた。楓は反射的に頬に手を当てて、笑顔を作り直す。プロとして、いつも通りに。

「お待ちしておりました」

そう言った自分の声が、少しだけ掠れていることに、楓自身は気づいていなかった。指先だけが、いつもよりわずかに冷たい。

「今日はヘッドスパだけで大丈夫ですか」

そう尋ねながら、楓はいつも通りの声を作った。けれど椅子に沈み込む男の重みが、いつもより近く感じられた。

個室にはアロマオイルと湯気の匂いが満ちている。低く流れるBGMの合間に、彼の呼吸の音だけがやけにはっきり聞こえた。

指先で頭皮をなぞりながら、楓の頭の片隅では、今月の家賃と機材のリース料が勝手に計算され続けていた。誰にも見せたことのない癖だった。
数字が不安になるたび、指先を動かして誤魔化す。

「疲れてるのは、楓さんの方じゃないですか」

不意に言われて、指が止まった。
心を見透かされたような気がして、頬が熱くなる。

「……大丈夫、慣れてますから」

いつもの台詞で笑ってごまかそうとした、そのとき。
チェアが軽く倒され、視界がふわりと反転する。

振り向けば、すぐそこに彼の顔があった。

ここから先は

2,082字 / 6画像

¥ 300

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?