スタジオ・ホレストウッズ制作秘話『DIVE TO GREEN』
ワールドカップもいよいよ大詰めです。
自分も当然ながら名門メディアも一員として、ワールドカップ関連の仕事をしている。
それが日本フイルム無線放送系列(地上アナログ)で放送したサッカーアニメ『DIVE TO GREEN』だ。
津田沼という場所のサッカークラブで選手として何のとりえもなく挫折した少年緑川翔というが、
「君の姑息さは”マリーシア”(南米選手などに多い、反則とは言えない、したたかで狡猾なプレイ)として武器になる!”マリーシア”で代表を目指せ」と言われ代表を目指し成長してゆく、週刊少年ジンジン連載漫画だ。
このアニメは下総メデアホールディングス(以降SMH)が社運を賭けたプロジェクトの夢の跡というか、なれの果てだ。
このプロジェクトはもう背中すら見えなくなってしまった千葉テレビと我々SMHの位置を一発逆転するために動き出したプロジェクトだった。
実現すれば千葉テレビは勿論、日テレだろうがテレ朝だろうが、天下のNHKだろうが見下せるほどの高みに上ることができるはずだった。

下総メデアホールディングス社内で「千葉テレビに勝てるですか?」と聞くと、
会長直属の諜報部所属かと疑われ、全員力なく「絶対に勝てます」と敬語で答える。
ことの発端は週一で行われる最高幹部方針会議という吊し上げ会議で、会長の超強力プレスに音を上げ、製作部長の大曾根が苦し紛れに言い放った一言だった。
「ワールドカップをウチのグループ企業の日本フイルム無線放送で独占放送して、今度こそは千葉テレビに絶対に勝ってみせます」
これに会長の甥っ子であり自分と同郷・樫椎出身の現SMH社長の仁見平太が
「ソレ……いいじゃん!いっちゃおうよ!爆アガるっちじゃん!」
などとはしゃぎ出した。
さらに良くなかったのが、会長も完全にその気になってしまったことだ。
「予算はくれてやる!ワールドカップで必ず天下を獲れ!」
そう言ってポケットから100万ほど投げ出されてしまい、制作部長の大曾根が引くに引けなくなってしまったのだ。

早速、ワールドカップの放送のために、関連の番組を作れということになり、やらされたのがサッカーのアニメ制作だった。
サッカーは見る。でもアニメに自信がない。
・タイムボカンシリーズ
・けろっこデメタン
・世界名作劇場シリーズ
・藤子不二雄さんの有名なの一通り
・花の子ルンルン
・ドロロンえん魔くん
・機動戦士ガンダム
・キャプテン
・まいっちんぐマチコ先生
・ルパン三世
・日本昔ばなし
・タッチ
・北斗の拳
・君の名は
・鬼滅の刃
その他、内容は全く把握していないが、
・ダグラム
・オーガス
・ダンバイン
・ザブングル
・おはようスパンク
・かぼちゃワイン
・恋してナイト
この辺が自分がかろうじて見たアニメのほぼ全てだ。
ドラゴンボールに関しては「はいはい、ゴクウが勝つやつね」
ワンピースに関しては「はいはい、ルフィーが勝つやつね」
これ一本でしのいできた劣等生である。
自分にアニメ制作はあまりに厳しい。
「自分はアニメより日本戦の実況を任されたいです!」
胸を張って言ったが、会長に「お前は誰じゃ!」と一喝されてしまった。
アニメなど作り方がさっぱり分からなかったが、要は紙芝居だと言われた。
仕方なくアニメ制作をやったが、やたら”会長兼永久名誉プロデューサー”が口を出してくる。
ワールドカップっぽいアニメにしたいのに、
「舞台はワシの地元の津田沼にしろ」
「津田沼軍が船橋軍を破るストーリーがいい」
「津田沼の景色をふんだんに使えば子供たちも喜ぶ」

そもそも全国の系列局で放映するのに、皆、津田沼という土地を知っているだろうか?ワールドカップを盛り上げるサッカーアニメだが、世界云々以前に津田沼にはJクラブすら無い。
せめて船橋なら高校サッカーファンは知っているかもしれないが、いくらなんでも津田沼が舞台は厳しいのではないだろうかと思った。
マイコン部長の山田が言うには津田沼とはJR津田沼駅を中心とした街で北口は船橋市、南口は習志野市、京成津田沼駅は習志野市、新津田沼駅は船橋市という何とも地元愛が育みにくい土地らしい。
ちなみに習志野駅は船橋市で、新習志野駅は習志野市で、北習志野駅は船橋市だそうで、もうなんだかわからない。
それでもかつて津田沼は高島屋、ダイエー&専門店、イトーヨーカドー、PARCO&専門店、〇I〇I(丸井)、大塚家具がひしめく流通業界では”津田沼戦争”と呼ばれていた激戦区で、何がどうなってそうなるのか知らないが、結局、イオンだけが残ったそうだ。残るも何もイオンなどいなかったではないか。
製作部長の大曾根は自分の高い能力を完全に見抜いていたようで、
「アニメに限らず、このプロジェクトの全責任をエグゼクティブクロスメディアクリエイターの君に託したい!」
そう言われてアニメ制作が始まったが、やり方が分からないからパワポで沢山画像を並べて、パワポアニメーションを駆使するという、『絶対このやり方違うであろう!』という手法で作ったのが日本フイルム無線放送系列で放映したサッカーアニメ『DIVE TO GREEN』だ。
このアニメを放送し始めた頃には日本フイルム無線放送がワールドカップ2026を独占放送するという計画は、製作部長の大曾根が毎日何度も何度もしつこくFIFAに電話したが駄目だったとのことで頓挫した。

ワールドカップ独占放送は叶わなかったが、この『DIVE TO GREEN』が、Youtubeで驚異の100再生を叩き出したということで社内で大騒ぎになった。
「俺が言った通りだったじゃん!バズってんじゃん!」
社長の仁見平太が大はしゃぎして社内を自慢して回り、日本フイルム無線放送(地上アナログ放送)では特別記念番組『Youtube視聴回数100を超えた日』という3時間番組まで製作され、先日放映された。

これは社長の手柄ではなく、どう考えても自分の手柄のはずだが、番組内で自分について1秒たりとも触れていなかったことがどうしても腑に落ちず、ずっと眠れずに失望と戦っているのだ。

『日本フイルム無線放送特別記念番組 Youtube再生回数100回を超えた日 仁見平太(8倍速録画)』
下総ヱンターテヰンメント・ビジュアルエンタープライズ社よりVHS各9,800円で発売中!
