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どんぐり農家を続けるべきか・・・#2 戦え!ポニーズ

どんぐり農家を続けるべきか・・・都会で挫折し山に戻り10年、毎日毎日ずっと考えている。

うちのウバメガシのどんぐりはアクが強く青臭くて食用に向いていない。寸が短く帽子が取れやすく観賞用としても人気がない。

しかし、どんぐり農家としてどんぐりを拾う以外のことが自分にできるとは思えない。特に自分のような生粋の先送り人間は・・・

幼子の頃はプロ野球選手かJリーガーになりたかった。しかし少年野球やサッカーをやるには至らなかった。

どんぐり農家の山奥の村では野球場もサッカー場もなければ当然チームもない。

しかしそれは言い訳だ。山を降りて学校に通っていた町には『三好商店ポニーズ』という少年野球チームがあった。

少年野球をやる気になればやれないことはない環境だった。

今更ながらに入りたかったが、富彦が憎たらしすぎた。

少年サッカーチームだって町から更に山を越え50分ほど歩くが隣町に『大和田・川俣ユナイテッド』があった。

しかし自分は「野球が良いか、サッカーが良いか」「やろうか、やるまいか」「弱いチームからプロに行けるだろうか?」と悩むうちに小学校も中学校も卒業してしまったのだ。
まさに先送り人生だ。

一度、小学5年生の時に少年野球チームの『三好商店ポニーズ』に入ろうかと井戸上の順也と坂の上の幸次、幸三兄弟と自分の4人で練習を見に行ったことがあった。

山を降りた所の町にはバスも来るし、この世のキラキラした物が何でも揃っているように子供の瞳には映っていた。

スーパーマーケット三好商店、パチンコ三好、お食事処絹代、カラオケパブ美豚、パブ多恋人と経済も大きい。

そして町の5つの商業施設の4つ実に80%が三好グループだ。この三好グループが運営する少年野球の球団が『三好ポニーズ』なのだ。

三好グループ総帥の三好民吉が設立しオーナー兼監督をしていたのだ。

これが凄く嫌なオヤジで自分達4人の顔を見るなり、眉をしかめて嫌な顔をして

「汚いランニングシャツ着よっちな!どんぐり農家の子供がグローブやバットを買えろうまいか!」

見下すように笑いやがった。

「お前らは基礎からやれ!ずーっと踏み台昇降しとれ!」

朝から昼まで階段を一段登っては降り、登っては降りを3時間させられた。

毎日通学で山歩きをしている自分でも足がパンパンになり足が重くて、泣きたくなった。

やっと昼休みになり、階段にへたり込むと、スーパーマーケット三好商店の少量のきんぴらごぼうと半分に切られたコロッケが入った山奥価格650円の『のり弁』が支給された。

皆、内心、唐揚げ弁当、ハンバーグ弁当、カツ丼、スペシャル幕内弁当の
スーパー三好 四天王を狙っていたが、

いつも夕方まで余っている、のり弁が配られた。

三好商店 のり弁当 現在 780円

しかしオーナーの三好民吉の息子で自分の1つ年下のあおばなを垂らし、ぽっちゃり健康優良児の富彦がこちらへ歩いてきた。

偉そうにユニフォームのズボンの尻のポケットに手を突っ込みニヤニヤしながら近寄ってくると

「弁当代は要らんから味おうといいぞ」
と言い放った。

これに坂の上の幸次の顔色がみるみる赤くなり

「お前ら親子、俺らに野球させる気がないのは最初から解っとる!」

被害妄想を喚き散らすとのり弁に蓋をして輪ゴムでパチンと止めると
「もう野球なんぞやるか!」
癇癪を起こしながらも、しっかりのり弁を持ったままグランドを飛び出した。

弟の幸三も兄の幸次が急にキレたことに動揺しながらも、
「もう野球なんぞやっちやるものかー!」
富彦に吐き捨て、慌ててのり弁の蓋を閉めると、幸次の後を追って逃走した。

自分も踏み台昇降をさせられながら
『俺はもう踏み台昇降したくないし、なんとなくサッカーの方がやりたいのだ』と思えてきたので
「待ってー」
と言って幸三の背中を追った。

でも、自分は最後の意地で食べかけの『のり弁』を置いて来た。

このことはその時、自分が自分でいる為に、とても大切なことだった様な気がしたが、今考えるとそうでもなかったなと思う。

一人残った井戸上の順也は午後には試合に出してもらって3本ヒットを打ったが、

「なかなかやるっちのう、スイングの時もっとこう、脇を締めてコンパクトに振ると、もっとアベレージが上がるぞ、どんぐり!」

ノーヒットの富彦に上から目線で言われて

「お前、足首持って山中引き回すっちな」
と言ってやったら、そこから富彦は揉み手で「順也君、順也君」と媚びてきたと後から聞いた。

しかし『三好ポニーズ』にも野球にも興味が無くなってしまった自分にはどうでもよい話だった。

幼子の頃から先送りを止めようにも諦めの早い自分は、何かを始めたり変えることなどできない人間だから、毎日悩みながらもどんぐり農家を続けているのだと思う。


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