熱を感じたい
たぶん、自分は熱を感じたいんだと思う。
料理そのものというより、何かに熱くなっている人間の熱。
炭火の前に立っている先輩の背中とか、深夜に無言でソースを詰めている姿とか、そういうものに惹かれる。
料理が好きというより、その熱の近くにいたいのかもしれない。
だから、低温調理だけで完結した料理に、時々少し違和感がある。
温度は入っている。
でも、火が入っている感じがしない。
炭火やオーブンの料理には、少し荒さが残る。
香りとか、乾いた質感とか、肉の輪郭とか。
その“不完全さ”の中に、人が火を扱った痕跡が残っている気がする。
一番最初の修行先に、後輩2人と久しぶりに食べに行ったことがあった。
やっぱり肉の火入れに驚かされた。
その時、シェフに低温調理について聞いた。
どっちがいいと思いますか、と。
でもシェフは、低温がいいとか、炭火がいいとか、そういう答え方をしなかった。
「今日食べてわかったでしょ?」
それだけだった。
否定も肯定もなかった。
料理で語られた気がした。
でも、たぶん別に料理だけじゃない。
何かに熱くなっている姿そのものに惹かれている。
別になんでもいい。
ただ、自分はその熱を料理の中で見つけた。
だから料理を始めたんだと思う。
