X線レーザー研究の「1秒」を無駄にしない―SLAC国立加速器研究所がベッコフのPC制御とEtherCATを採用
ベッコフの製品と技術は、工場の生産ラインだけでなく、世界最先端の科学研究の現場でも活躍しています。今回は、米国カリフォルニア州メンロパークにあるSLAC国立加速器研究所での導入事例をご紹介します。
「ビームタイム」の有効活用が長年の課題
SLACが誇るX線自由電子レーザー施設「Linac Coherent Light Source(LCLS)」は、物質の構造を原子レベルで解析できる世界最強クラスの研究装置で、超伝導材料や新薬の開発など、幅広い先端研究を支えています。LCLSの大規模アップグレード「LCLS-II」の完了により、X線照射性能は、従来の毎秒120パルスから、100万パルスへと飛躍的に向上しました。ところが、こうした最先端施設における真の課題は、照射性能だけではありません。
研究者たちが最も頭を悩ませるのが、「ビームタイム」と呼ばれる実験稼働時間の確保です。限られたビームタイムをいかに有効活用するか、複数の実験装置や試料の組み合わせを、いかに迅速かつ正確に入れ替えるかが、長年の課題でした。
特許取得のパラレルロボット「Tri-Sphere」が課題を解決
この難題に挑んだのが、科学研究施設向けの精密ロボットシステム開発を専門とする米国のSquare One Systems Designです。
同社が開発したパラレルロボット「Tri-Sphere Robotic Positioning System」は、一般的な産業用ロボットと同等の6自由度の動作に加え、最大約5,440kgの可搬能力と、幅わずか100ナノメートルという極細X線ビームへの高精度な位置決めを両立するシステムです。

Tri-Sphereの心臓部には、ベッコフの制御技術が採用されています。
組込み型PC:「CX2033」はメインコントローラとして全ての自動化・制御タスクを処理
リアルタイムEtherCAT通信:高速・高精度なモーション制御を実現
コンパクトドライブターミナル:ステッピングモータ用「EL7041/EL7047」、アブソリュート エンコーダ用「EL5042」により、省スペースかつ高度な制御を実現
TwinCAT NC PTPソフトウェア:複雑な多軸モーション制御に対応
TwinSAFEターミナル/FSoE:作業員がハッチ内にいる際の安全監視と非常停止機能を提供

(写真提供:Square One Systems Design)
段取り替え時間、2日間→12時間へ
高精度位置決めロボット「Tri-Sphere」の導入の効果は、数字に明確に表れています。
開発責任者である、Square One Systems Designのエンジニアリング・ディレクター、ボブ・ビオラ氏は、次にように語ります。
「SLACでは、ビームラインを停止することなく、作業ハッチ外でTri-Sphere上に実験用のセットアップを準備できます。これにより作業が大幅に加速し、実験の段取り替え時間は従来の2日間からわずか12時間に短縮されました」
主任制御エンジニアのジェイス・ウォルシュ氏は、ベッコフのPC制御が実現した柔軟性について、次のように説明します。
「Tri-Sphereの非対称的な作業領域と、回転の中心をソフトウェアで調整できる点が、他に類を見ない柔軟性と精度を実現しています。実験装置を迅速かつ正確に再配置し、幅広い実験に適応することで、研究成果にも好影響をもたらしています」
Tri-Sphereはエアキャスター上に設置されており、異なる実験ハッチへの移動も素早く行えます。また、直感的なフロントエンドソフトウェアにより、ビームの中心点や高さ、回転条件といったパラメータの設定もシンプルです。ベッコフの制御技術が複数の実験ハッチに統合されたことで、SLACはダウンタイムを最小限に抑えながら、高精度な実験を継続できる環境を手に入れました。
最前線の科学研究を支えるベッコフの技術
ベッコフ米国支社のビジネスディベロップメントリーダー、マシュー・ガルシアは本プロジェクトを次のように総括しています。
「Tri-Sphereプロジェクトは、Square Oneとベッコフの協業の成果を示す好事例です。当社の技術が、SLACをはじめとする施設において、研究成果や運用効率の向上に貢献していることを大変嬉しく思います」
SLACでの実績を皮切りに、Tri-Sphereはすでに世界の著名な研究機関への導入も進んでいます。困難な環境にも適応できる柔軟性と高性能を備えたこのシステムは、次なる科学的発見への道を切り拓いています。
今回の導入事例は、ベッコフの技術が支える科学研究のほんの一例です。宇宙の観測を支える大型望遠鏡の精密な制御から、物質の謎に迫る粒子加速器まで、幅広い科学研究分野におけるベッコフの事例は、以下の公式ページよりご覧いただけます。
※ 本記事は、ベッコフオートメーションの機関誌「PCコントロール事例集」2025年第4号に掲載された英文事例を抄訳して作成しています。
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