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覚醒する老人タカシ 第154話

ミカの胸の中で輝く灯は、
まるで世界の深呼吸と同期するように
ゆっくりと、しかし確かなリズムで脈を打っていた。

世界樹の“枝先”へ続く光の道――
それは普通の人間には見えない。
目で見るのではなく、
灯で感じるしかない道だった。

ミカは海辺に立ち、
胸の光の導きに身を委ねるように静かに目を閉じた。

「……行きます。
 タカシさんが見せてくれた、
 灯の続きを辿るために。」

旅団の仲間たちがうなずく。
風の国、青の島、日本。
長い旅を共にした彼らの顔は、
どこか誇らしく、
そして少し寂しげだった。

■ 光の道が開く瞬間

ミカが一歩前に踏み出すと、
海の上に淡い光が広がりはじめた。

最初は波の反射のように儚い輝き。
だが次第にそれは一本の線となり、
空へ伸びる“光の道”へと姿を変えていく。

旅団の若者が息を呑む。

「……浮いてる……!
 光が……道になってる……!」

山下先生は静かに言った。

「ミカさんの灯が、世界樹とつながっている証拠だ。」

澄子も静かに微笑む。

「この道は、灯を持つ者だけが進める。
 あなたのために開いた道だよ、ミカさん。」

ミカは光へ足を伸ばした。
波一つない海の上に、
白い足場が咲くように現れる。

「大丈夫……行ける……!」

一歩。
また一歩。

足元の光が、
ミカの灯と同じリズムで輝いた。

■ 光の道の“副作用”

しかしそのとき――
ミカの胸に、
突然強い痛みが走った。

「っ……!」

足元の光が一瞬、揺らぐ。

「ミカさん!」
旅団の仲間たちが叫ぶ。

山下先生が険しい顔で言う。

「やはり……光の道は負荷が大きい。
 源の灯を持つ者は、
 世界樹の力を直接受けることになる。」

ミカは息を荒げながらも、
必死に姿勢を保った。

「大丈夫……
 これくらい……!」

だが胸の中では、
灯が嵐のように暴れ始めていた。

タカシの声が
遠くから響く。

『ミカ……光に飲まれるな。
 灯は、お前の一部だ。
 お前が灯に従うんじゃない。
 灯を、お前が導くんだ。』

ミカは強く歯を食いしばり、
胸に手を当てた。

「私は……灯に選ばれたんじゃない。
 灯は……私の中から生まれた……!」

その言葉に呼応するように、
胸の光が落ち着き、
足元の道が再び安定した。

■ 光の道の先に見えたもの

ミカが振り返ると、
仲間たちが海辺でこちらを見守っていた。

「ミカさん、気をつけて!」
「戻ってきてくださいね!」
「大丈夫、ミカさんなら進める!」

ミカは涙をこらえながら笑った。

「みんな……ありがとう。
 必ず戻るよ。
 灯を整えて……もっと強くなって。」

そして再び前を向く。

光の道は、
海を越え、街を越え、
空気が薄くなる高さへ伸びていく。

やがて――
雲の向こうに、
人の手では作れない“巨大な光の輪”が見えてきた。

それはまるで、
空の果てに浮かぶ“光の門”。

世界樹の枝先へ導く入口だった。

ミカは息を呑んだ。

「……あれが……枝先……!」

胸の灯が一層輝く。

光の門が、
ゆっくりとミカを迎え入れるように開き始めた――。

次回予告

光の道を渡り、ミカは“世界樹の枝先”へと辿り着く。
そこは現実とも夢とも違う、
灯そのものが形を取った世界。

そこで待つのは、
タカシが最後に会った“もう一人の存在”。

次回、第155話「光の門」。
どうぞお楽しみに。


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