覚醒する老人タカシ 第153話
ミカの覚醒後、
世界は静かに――しかし確実に揺れ始めていた。
胸の内で光が脈を打つたび、
世界樹の“根”が反応し、
大地のどこかへ淡い振動が走るのがわかる。
ミカは海辺に立ちながら、
遠い場所から届く微かな“ざわめき”に耳を澄ませた。
「……聞こえる。
どこかで灯が乱れてる……」
山下先生も顔をしかめた。
「確かに感じる。
これは“過剰な灯”だ。
世界樹がバランスを崩し始めている。」
世界樹は、
タカシの灯、影、そしてミカの源の力によって
ゆっくり成長していた。
だが――
急速に力が加われば、その均衡も揺らぐ。
ミカの覚醒は、
世界樹にとって“強すぎる光”だった。
■ 世界各地で起き始めた異変
そのとき、海辺の静けさを破るように
スマホが震え、旅団の若者が慌てて駆け寄った。
「ミカさん! 世界中から映像が届いています!」
画面には――
◆ 空に巨大な光の柱が立つ都市。
◆ 夜空の星を飲み込むような黒い渦が回る村。
◆ 海面が不自然に輝き、波のリズムが狂う港。
明らかに自然現象ではなかった。
灯が暴走している。
ミカは思わず胸を押さえた。
「……世界樹が……私の灯と共鳴してる……
だから、世界中の灯に乱れが……」
山下先生が険しい顔で言う。
「世界樹の“第三の根”が動き始めたのはいい。
だが、根の力が地上の灯へ直接流れれば、
灯は均衡を失い、乱流を起こす。」
澄子が縁側から歩み寄り、静かに言葉を継いだ。
「ミカさん。
あなたの灯は純粋すぎて、
いま世界に“強く流れすぎている”。
まずはそれを整えないと。」
ミカは深呼吸した。
「どうすれば……?」
澄子はタカシの木箱を指した。
「タカシは言っていた。
“源の灯は、世界の中心で整える”と。」
山下先生が目を細める。
「世界の中心……
それはどこだ?」
澄子は迷いなく答えた。
「世界樹の“枝先”だよ。」
■ 世界樹の枝先とは
「枝先……?」
ミカは首を傾げた。
澄子は海の向こうを見つめながら、
まるで遠い記憶を辿るように語る。
「世界樹はね、
地中の根だけじゃなく、
空にも伸びているの。
目には見えないけれど、
“灯”として世界の上空を巡っている。」
旅団の若者が驚いた声をあげる。
「世界樹って……空にもあるんですか!?」
澄子はうなずいた。
「タカシは言っていたよ。
“枝先に行けば、灯を整える方法が見つかる”とね。」
ミカは胸に手を当てた。
「……枝先って、どうやって行くの?」
澄子は少しだけ微笑んだ。
「タカシなら言うだろうね。
“灯は、灯が行くべき場所へ連れていく”って。」
その瞬間――
ミカの胸の光が強く脈動した。
次の瞬間、
頭の中に光の地図が浮かび上がる。
大地を渡り、
海を越え、
空の彼方へ伸びていく一本の光の道。
ミカは息を呑んだ。
「……見える……
世界樹の枝先へ続く道が……!」
山下先生がミカの肩に手を置く。
「行くしかないな。」
ミカは力強く頷いた。
「うん。
灯の乱流を止めるためにも……
タカシさんの願いを叶えるためにも。」
世界樹の枝先――
それは世界の“灯”が集まる場所。
そこには、
タカシが最後に残したもう一つの真実が
眠っているはずだった。
次回予告
世界中で起こる“灯の乱れ”。
それを鎮めるには、
世界樹の枝先へ向かわねばならない。
しかし、そこへ辿り着くためには
“光の道”に身を委ねる必要があり、
ミカにとっては危険な試練となる。
次回、第154話「光の道へ」。
どうぞお楽しみに。

