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[掌編小説]本日ハ晴天ナリ

(読了目安3分/約1,340字) 


 やあ、おはよう。

 おはようございます、先生。

 今日は昨日までと違って晴れたな。絶好の洗濯日和だ。そういうわけで、ちょっとお願いしたいことがあるのだが、いいかな?

 そうですね。まず、先生が私の洗濯機の中から出てきて下さったら、伺いましょう。

 いやいや、出てしまったらお願いする意味が無くなってしまう。というのも、ちょっとここの蓋を閉めて、洗濯機を回して欲しいのだ。

 それは困りますね。私も私の服を洗濯したいのです。今から干して大学へ向かえば、帰ってきた頃には乾きますから。しかし、洗濯機を私のためと先生のため、二回も回すような時間はありません。

 今日出る授業というのは、私の授業だろう?私も身体を乾かす時間が必要だ。先に私を回してくれれば、遅れてくることは認めよう。

 そう言われても……。たとえ脱水しても完全に乾くわけではないですから、その状態で家の中を歩き回られるのはちょっと。申し訳ありませんが、他の所で洗濯されて下さい。大学の近くにコインランドリーもありますし。

 コインランドリーの洗濯機は縦回転なのだ。私は縦の回転には弱いもので。それに、洗濯機に一度入ってしまったからには、見ればわかるだろう、洗濯されてからでないと出られないのだ。特にこの洗濯機は普段私が利用しているものよりも小さいらしいな。あまりに窮屈でやむを得ず靴を脱いで入っているのだ。これでも足を精一杯折り曲げている。きっとひどい皺ができてしまっているだろう。たとえ君が上から引っ張ったとしても、もはや出ることはできないな。だから、君の選択肢はただ一つ。今すぐこの蓋を閉めて、洗濯開始ボタンを押すことだ。やってくれるね?

 ですから先ほども言ったとおり、先生を洗濯したら私の洗濯をする時間がなくなります。私は私の洗濯がしたいのです。せっかくのお天気なのにまた先延ばしにするのは嫌ですから。

 君がそんなに物わかりが悪いとは思わなかった。私を洗濯しないことには、君の洗濯も出来ないのだ。仕方がない。君の洗濯物も入れたまえ。一緒に回してしまおう。

 それは遠慮します。私の服と先生が一緒に回っている図を想像するのも見るのも嫌ですから。

 まったく、本当に君は我が儘だ。それでは嫁の貰い手ないぞ。もう少し他人の言うことに耳を貸したらどうだね。

 そんな心配はして頂かなくて結構です。それよりも、本当にそこから出られないのですか?

 ああ、それが何か?

 だったら、このまま授業が終わるまで何もせずにいたら、残念ながら今日は休講となりますね。

 む、たしかに。だが、君が良心の呵責に苛まれて床に伏せるようなことはあるだろうな。

 仕方ありません。私の洗濯はコインランドリーですることにします。先生はもう少しそこに入っていて下さい。

 どういうことだ。このまま私を放っておく気か?君がそんなに冷酷な人間だとは思いもしなかった。私は入る洗濯機を間違ったのか。

 そういうことになりますね。でも、少しですけど朝から夜にかけて背が低くなるって言いますし、案外夕方くらいには出られるようになるかもしれませんよ。気長に時が経つのを待っていて下さい。それでは、時間がなくなりますから、私は出ますね。鍵は閉めておきますから。行ってきます。

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