勢いだけではない9回表。野村、奈良間、水野3人の打者が見せた技術と判断 6/27 ファイターズ振り返り
先発の山﨑福也が6回1失点と試合をつくり、吉田賢吾の一発で追いついた日本ハム。両チーム譲らないまま同点で迎えた9回、先頭の野村佑希が安打で出塁すると、代走・矢澤宏太、細川凌平の犠打を挟み、奈良間大己が勝ち越し打を放った。さらに水野達稀、田宮裕涼も続き、この回一挙3得点。最終回に1点を返されながらも、逃げ切って勝利を収めた。
試合を決めたのは確かに9回だった。ただ、その攻撃を「執念」や「集中打」という言葉だけでまとめてしまうのは、少し惜しいように感じる。野村、奈良間、水野の打席には、それぞれ異なる狙いや技術的な選択が表れていたように見えたからだ。
攻撃の起点となったのは、先頭の野村だった。
1ストライク目のフォークに対するスイングからは、ある程度狙いを持って仕留めにいったような印象を受けた。しかし、続く内角の真っすぐには空振り。2ストライクと追い込まれると、野村は足の動きを抑えたノーステップに近い形へ切り替えている。
直前に内角の真っすぐへ遅れた後だったことを考えると、タイミングのずれを小さくし、直球と変化球の両方へ対応しようとした可能性はありそうだ。
最初は強く捉えようとしながら、追い込まれてからはまずボールに対応する形へ変える。同点の9回先頭という状況を踏まえれば、長打を求めるだけではなく、何としても走者になる意識が表れた打席だったのかもしれない。執念という言葉を使うなら、それは気持ちだけではなく、打ち方を変えるという技術的な選択に現れていた。
代走・矢澤宏太が送られ、細川凌平が犠打を決めると、奈良間が初球のチェンジアップを右翼線へ運んだ。
この一打を、単純に「変化球を狙っていた」と断定するのは難しい。ただ、この日の打球を並べると、コースに応じて打球方向を変えていたようにも映る。
5回には外寄りの真っすぐを中前へ運び、7回には中央付近の真っすぐを引っ張るように遊ゴロ。そして9回は、外角低めのチェンジアップを逆方向へ打ち返した。
すべての球を同じポイント、同じ方向で打とうとしていたわけではないのだろう。投球されたコースに合わせて、打点やバットの入れ方を変えていた可能性がある。
9回の球は、外角低めの難しい変化球だった。無理に引っ張れば、引っかけたゴロになる危険もあったはずだ。それを球の軌道に沿うように右翼線へ運び、なおかつ弱い打球にしなかった。キャンプで見せていた奈良間の打撃も、特定の形を繰り返すというより、状況や投球に応じた答えを選ぶものだったのではないか。
試合前に新庄監督から好調時の映像を送られ、良いイメージで打席に入れたという。過去の形をそのまま再現したというより、迷わずスイングを出すための基準が整理されていた、と考える方が近いのかもしれない。
奈良間の一打で勝ち越した後、水野がさらに試合を動かした。
水野は初球のチェンジアップ、続く真っすぐに空振りして追い込まれた。その後、外寄りの真っすぐをファウルで残しながら、低めのフォークや緩いカーブには手を出していない。そして最後に来た内角高めの148キロを、中堅方向へ運んで適時三塁打とした。
この打席を見ていると、水野は内角の速球を意識していたのではないかと感じる。
外の真っすぐに対しては振り遅れたようなファウルが続いた。一方で、空振りを誘う低い変化球には反応していない。内角の速球を本線に置き、外の真っすぐはファウルで耐え、低めの変化球は見送る。そうした待ち方だった可能性も考えられる。
興味深いのは、最後の打球が強い引っ張りではなく、センター方向へ伸びたことだ。
内角の厳しい球だったため、完全に前でさばき切れず、結果的に中堅方向へ飛んだ面もあるかもしれない。ただ、単に差し込まれただけなら、あれほど打球が伸びたかは疑問が残る。早く体を開かず、手元を残しながら体の近くまで球を呼び込んだからこそ、センター方向へ強く押し返せたとも考えられる。
インコースを待つことと、センター方向へ打ち返すことは矛盾しない。むしろ、狙い球を持ちながらもスイング軌道を限定せず、最後まで対応幅を残していたところに、水野の技術があったのかもしれない。それが今年の数値に結びついているように感じる。
野村は打席の中で自分の形を変え、奈良間はコースに応じて打球方向を変え、水野は狙いを残しながら球を呼び込んだ。
そこまでの対戦で得た感覚や失敗を踏まえ、それぞれが自分に必要な技術を選んだ。その結果として、勝負どころで3人の持ち味が表面化した。そんな9回だったように思う。
