退職勧奨されたらどうする?その場で答えない初動7つと交渉条件
突然、上司や人事から「会社を辞めてほしい」と言われると、頭が真っ白になるものです。
回答期限や退職合意書を示されても、その場で結論を出さなければならないとは限りません。
退職勧奨は解雇とは異なり、応じるかどうかは原則として労働者が決めます。
ただし、すでに発言や署名をした場合、離職理由や退職条件をどう扱うかは、文書と経緯によって変わります。
この記事では、退職勧奨されたら取るべき初動、言ってはいけないこと、拒否後の対応、交渉条件、違法性、証拠、相談先を解説します。
退職勧奨されたらどうするかについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

1章 退職勧奨されたら、その場で答えなくてよい
退職勧奨を受けた直後は、「もう辞めるしかない」と感じやすいものです。
まず、会社からの提案と一方的な解雇は別の手続であり、応じるかどうかを自分で選べることを確認しましょう。
最初の確認を誤らなければ、働き続ける選択肢も条件交渉の余地も残せます。
1-1 退職勧奨は解雇ではなく、会社からの退職の提案
退職勧奨とは、会社が労働者に対して、自分の意思で退職するよう勧めることです。
組織再編、担当するポジションの廃止、勤務成績、能力不足などが理由として示されることがあります。
しかし、理由を告げられただけで雇用が終了するわけではなく、会社から一方的に労働契約を終わらせる解雇とは法的な意味が異なります。
退職勧奨を受けただけでは、労働契約は終了しません。
1-2 労働者は退職勧奨を拒否できる
退職勧奨に応じたくない場合は、断ることができます。
会社を納得させられる理由を示さなければ拒否できない、というものでもありません。
もっとも、拒否すればその後に何も起きないとは限らず、会社が配置転換、評価手続、改善計画、解雇などを検討する場合があります。
そのため、退職しない意思を示すことと、拒否後の経緯を記録することを並行して進めます。
1-3 「退職勧奨」か「解雇」か分からないときは書面で確認する
会社の説明が曖昧なときは、退職を提案しているのか、すでに解雇を決めたのかを確認します。
「辞めてもらうことは決まっている」「来月から席はない」と言われても、法的な扱いが明確とは限りません。
「これは退職勧奨ですか、それとも会社として解雇を決定したのですか」と確認しましょう。
解雇だという回答であれば、解雇日、解雇理由、解雇予告や手当の扱いを書面で求めます。

2章 退職勧奨された当日に行う初動7つ
面談当日は、退職するかどうかを決める日ではなく、判断に必要な情報を確保する日と考えると落ち着きやすくなります。
回答を保留し、理由と条件を確認し、後から経緯をたどれる形で記録を残しましょう。
初動で残した記録は、拒否後や離職理由の確認にもつながります。
2-1 「今日は回答せず、持ち帰って検討します」と伝える
最初に行いたいのは、検討時間を確保することです。
会社が今日中の回答を求めても、退職の提案へ直ちに同意する義務があるとは限りません。
その場では、回答も署名もせず、検討時間を確保することが先です。
2-2 会社が求める結論と回答期限を確認する
会社が求めているのが、退職意思の回答なのか、退職日や金額への回答なのかを確認します。
回答期限を示された場合は、その期限を設けた理由と、延長できるかも尋ねましょう。
家族への相談、資料の確認、弁護士への相談に時間が必要であることを伝える方法もあります。
2-3 退職を求める理由と、今後の雇用方針を確認する
退職を求める理由は、今後の選択肢や交渉条件を考える材料になります。
能力不足を理由とされた場合は、対象となる評価、期待された水準、これまでの注意や支援、改善の機会があったかを確認します。
組織再編やポジション廃止を理由とされた場合は、配置転換の可能性や、退職を拒否した場合の業務方針も尋ねましょう。
2-4 退職条件を口頭ではなく書面でもらう
口頭で「十分な条件を出す」「会社都合にする」と言われても、最終的な合意書や離職票の記載が同じとは限りません。
退職日、解決金、未消化の有給休暇、賞与、退職金、離職理由などを含む提案書を求めます。
書面を受け取る際は、受領しただけで同意したことにならないよう、「受領のみ」と伝えておくと認識のずれを減らせます。
2-5 面談を録音し、日時・参加者・発言をメモする
面談内容は、後から記憶が曖昧になりやすいため、録音やメモで残します。
自分が参加している会話を相手に知らせず録音したことだけで、直ちに違法になるとは限りません。
ただし、録音方法や利用方法によって問題が生じる場合があるため、必要な範囲を超えて公開しないことが必要です。
録音は事実確認のために保管し、社内外へ公開しないようにしましょう。
2-6 面談後に確認メールを送り、認識のずれを残さない
面談後は、会社から言われたことと、自分が回答していないことを短いメールで残します。
会社の発言を断定的に評価せず、日時、提案内容、期限、自分の現在の意思を事実として記載します。
本日の面談では、会社から退職の提案を受け、○月○日までの回答を求められたと認識しています。
私は現時点で退職に同意しておらず、提示条件を持ち帰って検討します。認識に相違がある場合は、書面でご連絡ください。
2-7 雇用契約書、就業規則、評価資料と生活費を確認する
退職条件を考える前に、自分の契約内容と生活上の制約を確認しておきます。
雇用契約書、就業規則、賃金規程、退職金規程、評価資料、給与明細、会社からの注意書面などを整理しておきましょう。
あわせて、毎月の固定費、次の収入まで耐えられる期間、通院や家族の予定、転職に必要な期間も見積もります。
面談の日時、場所、参加者、発言内容を記録したか
退職を求める理由、回答期限、拒否後の方針を確認したか
退職条件を記載した書面を受け取ったか
退職に同意していないことをメールで残したか
契約資料、評価資料、生活費の見通しを確認したか

3章 退職勧奨で言ってはいけないこと・やってはいけないこと5つ
動揺したまま発言や署名をすると、自分の本当の意思とは違う形で手続が進むことがあります。
一方で、証拠を残そうとして会社の情報を持ち出すなど、自分が不利になる行動も避けなければなりません。
面談直後こそ、後から戻せない行動を避ける意識が必要です。
3-1 退職する意思が固まっていないのに「辞めます」と言わない
面談を早く終わらせるために、「もう辞めます」「分かりました」と口にすることは避けた方がよいでしょう。
会話の前後や会社の受け止め方によっては、退職への同意を示した証拠として扱われる可能性があります。
迷っている場合は、「現時点では回答しません」とだけ伝えます。
3-2 退職届・退職願・退職合意書へその場で署名しない
退職届、退職願、退職合意書は、名称だけで法的な意味を決められません。
一方的な退職の通知なのか、会社への申込みなのか、双方の合意なのかは、文面と提出の経緯から判断されます。
書面の表題より、本文の内容と署名までの経緯が見られます。
金額だけでなく、請求権放棄、秘密保持、競業避止、違約金などの条項を確認してから判断しましょう。
3-3 会社の指示を確認せず出勤をやめない
退職勧奨を受けた後も、雇用が続いている間は、原則として就労する必要があります。
自分の判断で出勤をやめると、無断欠勤として扱われ、別の争点が生じることがあります。
会社から自宅待機や出社不要を告げられた場合は、待機期間、賃金、連絡方法、業務指示を書面で確認します。
3-4 会社のデータを削除・改変・無断で持ち出さない
退職勧奨の証拠を残したいとしても、会社のファイルを削除し、内容を書き換え、私用端末へ大量に移すことは避けましょう。
顧客情報、営業秘密、他の従業員の個人情報を持ち出すと、懲戒や損害賠償など別の問題につながる可能性があります。
証拠を残すためでも、営業秘密や他人の個人情報を無断で持ち出すことは避けましょう。
自分に交付された契約書、給与明細、評価通知などから確認し、保存方法に迷う資料は先に専門家へ相談します。
3-5 感情的なメールやSNS投稿で対立を広げない
人格を否定する言葉や、会社を非難する長文を送ると、争いの中心が退職勧奨から自分の発言へ移ることがあります。
会社名、担当者名、録音内容をSNSへ投稿することも、名誉やプライバシー、秘密保持の問題を生じさせる可能性があります。
会社への連絡は、事実、質問、自分の意思に絞り、公開の場では発信しない方が安全です。

4章 退職したくない場合の断り方と拒否後の対応
退職したくない場合は、長い反論よりも、退職意思がないことと就労意思があることを明確に伝えます。
その後の業務、評価、配置、面談の変化も記録し、会社の次の対応に備えましょう。
短い言葉で意思を残す方が、後の説明もしやすくなります。
4-1 退職する意思がないことを短く明確に伝える
退職を断る際は、会社の説明へ一つずつ反論する必要はありません。
「現時点で退職する意思はありません。今後も就労を希望します」と伝えれば、基本的な意思は示せます。
理由を尋ねられた場合も、回答する範囲は自分で決められます。
4-2 退職勧奨を断るメールの例文
口頭で断った後は、メールでも意思を残しておくと、後日の認識違いを減らせます。
先日の面談でご提示いただいた退職の提案について検討しましたが、私は退職に同意しません。
引き続き勤務する意思がありますので、今後の業務内容と指示をご連絡ください。今後、退職に関するご連絡がある場合は、可能な範囲で書面又はメールでお願いいたします。
4-3 拒否後も就労意思を示し、業務指示を確認する
退職勧奨を拒否した後は、就労意思を示し、通常どおり業務を行う姿勢を保ちます。
担当業務を外された場合や、システムへ入れなくなった場合は、感情的に抗議する前に、今後の業務指示をメールで確認します。
会社が就労を受け入れない場合も、いつ、どのように働く意思を示したかを残しましょう。
4-4 繰り返される面談には回答済みであることを伝える
退職しない意思を示した後も面談が続く場合は、すでに回答済みであることを伝えます。
面談の目的、予定時間、参加者、話し合う事項を事前に確認し、必要に応じて書面での連絡を求める方法もあります。
長時間の面談や健康への影響がある場合は、経緯を記録し、早めに相談先を検討します。
4-5 配置転換・降格・PIP・解雇に備えて経緯を記録する
拒否後に、配置転換、役職変更、評価の低下、PIPと呼ばれる業績改善計画が始まることがあります。
これらが直ちに違法とは限りませんが、目的、基準、支援内容、以前の評価との違いを確認する必要があります。
退職勧奨を断ったことだけで、直ちに解雇が有効になるわけではありません。
解雇を告げられた場合は、解雇日と理由を書面で求め、退職勧奨からの経緯とあわせて確認しましょう。
PIPについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

5章 退職に応じる場合に交渉する条件7つ
退職を選ぶ場合も、会社から最初に示された条件をそのまま受け入れる必要はありません。
退職後の生活と転職への影響を見ながら、金額、時期、離職理由、合意書の義務を一つずつ確認します。
退職日だけでなく、合意後の生活まで見通して比べることが欠かせません。
5-1 解決金・特別退職金の有無と算定根拠
退職勧奨に応じるだけで、法律上当然に解決金や特別退職金が発生するわけではありません。
一方で、会社が合意による退職を求めている場合には、転職までの期間、残る賃金、紛争を避ける利益などを踏まえて上乗せを交渉できることがあります。
金額は額面か手取りか、支払日はいつか、支払条件が付いているかを確認します。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
5-2 退職日と在籍期間、ガーデンリーブの扱い
退職日が変わると、給与、社会保険、賞与、退職金、有給休暇の扱いも変わることがあります。
会社によっては、在籍を続けながら出社や業務を免除するガーデンリーブが提案されます。
その期間の賃金、賞与の算定、社会保険、連絡義務、転職活動の可否を書面で確認しましょう。
5-3 有給休暇の消化と買上げの可否
退職日までに残っている有給休暇を使えるかを確認します。
業務の引継ぎと有給消化の予定を先に決めると、退職直前の対立を減らしやすくなります。
会社に未消化分を買い取る一般的な義務があるとは限りませんが、合意条件として金銭で調整する余地がある場合もあります。
5-4 賞与・退職金・株式報酬・福利厚生の扱い
賞与や退職金は、支給日在籍要件、評価期間、会社規程によって扱いが変わります。
株式報酬がある場合は、権利確定日、退職理由による失効、行使期限を確認します。
社宅、保険、研修費、貸与品などの福利厚生や返還義務も、退職後の支出に関わります。
5-5 退職理由、離職票、退職時証明の記載
合意書に「一身上の都合」と書かれていると、会社が離職票にも同じ理由を記載する可能性があります。
退職勧奨による合意退職であることを確認し、会社がハローワークへどのように届け出るのかを尋ねます。
合意書の退職理由と、離職票の記載が食い違わないように確認しましょう。
必要に応じて、退職の事由、在職期間、業務の種類などを記載した退職時証明の交付も求められます。
5-6 再就職支援、推薦状、リファレンス対応
金銭以外に、再就職支援サービス、転職活動のための休暇、推薦状を条件にできる場合があります。
外資系企業などでは、転職先から前職へ照会するリファレンスチェックへの回答内容が気になることもあります。
回答窓口、在籍期間や役職以外に伝える事項、会社が合意した説明内容を確認しておきましょう。
5-7 秘密保持・競業避止・清算条項・請求権放棄の範囲
退職合意書には、会社の秘密を漏らさない義務、競合会社への転職制限、誹謗中傷の禁止、追加請求をしない清算条項が入ることがあります。
条項が広すぎると、転職や未払い賃金の請求など、退職後の行動を予想以上に制限する可能性があります。
金額だけでなく、退職後に負う義務と放棄する権利まで確認してください。
会社から何を受け取るのか
自分はどの権利を放棄するのか
義務が続く期間と対象範囲はどこまでか
違反した場合の違約金や返還条件はあるか

6章 違法な退職勧奨となる可能性があるケース
退職勧奨は、それ自体が違法な制度ではありません。
しかし、労働者が自由に判断できないほど圧力を加え、人格や権利を傷つける方法へ進むと、違法な退職強要と評価されることがあります。
会社とのやり取りを時系列で残し、圧力の程度を確認します。
6-1 拒否した後も回数・時間・人数を重ねて執拗に迫る
退職しない意思を明確にした後も、長時間の面談を繰り返し、複数人で囲むように説得を続けると、自由な判断を妨げる可能性があります。
何回、何時間で直ちに違法になるという一律の基準はありません。
拒否後も続けた理由、面談の間隔、場所、参加者、健康への影響を含めて判断されます。
6-2 解雇や懲戒を断定して脅す、虚偽の説明をする
会社が今後の可能性として解雇を説明することと、根拠なく「応じなければ懲戒解雇になる」と断定することは同じではありません。
退職に同意させるため、失業給付、退職金、転職への影響について虚偽の説明をした場合も問題になり得ます。
発言の言葉だけでなく、会社が示した資料や、その場で選択を迫った状況を残しましょう。
不当解雇については、以下の動画でも詳しく解説しています。
6-3 人格を否定し、孤立させ、仕事を与えない
「能力がない」「会社にいる価値がない」など、人格を傷つける言葉で退職を迫る行為は、通常の業務上の説明を超えることがあります。
退職を拒否した後に、合理的な理由なく仕事を外し、周囲との接触を断つような扱いが続く場合も、経緯を確認する必要があります。
ただし、配置や業務量の変更には会社側の理由がある場合もあるため、前後の資料を比較します。
6-4 拒否を理由に報復的な不利益取扱いをする
退職を断った直後に、説明のない降格、賃金減額、不自然な低評価、遠隔地への異動が行われた場合は、退職勧奨との関係が問題になることがあります。
変更の時期、会社の説明、他の従業員との扱い、以前の評価を記録します。
不利益な措置そのものの有効性と、退職を迫る目的があったかは、それぞれ確認が必要です。
6-5 性別、妊娠・出産、育児・介護、組合活動などを理由とする
女性だけを退職勧奨の対象にする、妊娠や育児休業の利用を理由に退職を迫るなどの扱いは、法令上問題になる可能性があります。
介護休業の利用、障害や病気への配慮、労働組合への加入や活動が背景にある場合も、適用される制度を確認しましょう。
会社が表向きに示した理由だけでなく、面談前後の発言や人選の基準も手掛かりになります。
6-6 違法性は一つの発言だけでなく経緯全体から判断する
違法性を判断する際は、面談の回数、長さ、人数、場所、言葉、拒否後の継続、業務上の扱いなどが考慮されます。
退職条件が有利だったか、労働者が相談や検討をする時間を与えられたかも関係することがあります。
違法かどうかは、発言一つではなく、退職までの経緯全体から判断されます。

7章 退職勧奨の証拠として残すもの
会社との話し合いでは、後から「言った」「言わない」が問題になりやすいです。
退職を拒否する場合にも条件交渉をする場合にも、元の状態を保った資料と時系列の記録が役立ちます。
保存方法にも注意し、会社情報を無断で扱わないようにしましょう。
7-1 面談の録音と発言メモ
録音データは編集せず、元のファイルを保存します。
録音できなかった面談は、終了後すぐに日時、場所、参加者、発言、提示された書類、自分の回答をメモします。
メモには、事実と自分の感想を区別して書くと、後から内容を確認しやすくなります。
7-2 会社から届いたメール・チャット・提示書面
退職の提案、回答期限、面談の呼出し、条件、拒否後の指示が分かるメールやチャットを保存します。
スクリーンショットだけでなく、可能な範囲で送信者、日時、前後の文脈が分かる状態を残しましょう。
証拠は内容だけでなく、いつ、誰から、どの形で届いたかも残しましょう。
7-3 雇用契約書、就業規則、評価、注意指導の資料
会社が能力不足や規律違反を理由にしている場合は、過去の評価、表彰、目標設定、注意書面、改善支援の有無を確認します。
雇用契約書、職務記述書、就業規則、賃金規程、退職金規程も、会社の説明と照らす資料になります。
自分に有利な資料だけでなく、会社から受けた指摘も含めて時系列に並べると、見通しを検討しやすくなります。
7-4 拒否後の業務指示、配置、評価の変化を示す記録
退職勧奨前後で、担当業務、座席、システム権限、会議への参加、上司の指示、評価が変わったかを残します。
変更があった日、会社の説明、同じ部署の通常の運用も記録すると、退職勧奨との関係を検討する材料になります。
賃金や役職が変わった場合は、通知書と給与明細も確認しましょう。
7-5 営業秘密や他人の個人情報を無断で持ち出さない
証拠になりそうだという理由だけで、顧客一覧、社内調査資料、他人の評価、機密ファイルを無断で保存することは避けます。
会社の端末やアカウントを使えるうちに何でも転送する方法は、かえって自分の立場を悪くする可能性があります。
必要な資料が会社内にしかない場合は、内容と所在をメモし、取得方法を弁護士へ相談する選択肢があります。

8章 既に退職すると言った・署名した場合の対処法
面談で退職すると口にした後や、書面へ署名した後でも、直ちに全てが確定したとは限りません。
ただし、撤回や取消しが認められるかは文書の性質と経緯で変わるため、時間を空けずに対応します。
早い対応が、主張できる選択肢を残すことにつながります。
8-1 退職願・退職届・退職合意書は表題だけで判断できない
退職願は合意退職の申込み、退職届は一方的な退職の通知として扱われることがあります。
しかし、実際には書面の内容、会社の規程、提出先、説明された手続によって意味が変わります。
退職合意書も、退職日や金銭だけでなく、双方がどの範囲まで合意したかを確認しなければなりません。
8-2 撤回・取消し・無効を主張できるかは経緯で異なる
撤回できるかは、意思表示が会社の権限者へ届いたか、会社が承諾したか、一方的な通知だったかによって変わります。
会社の虚偽説明、脅し、重大な思い違い、自由に判断できない状況があった場合は、取消しや合意不成立を主張できる可能性があります。
「署名したから終わり」とも、「いつでも撤回できる」とも一律にはいえません。
8-3 直ちに書面で意思を伝え、提出物と面談経緯を確認する
退職する意思がない場合は、撤回や合意の効力を争う意思を、できるだけ早く会社へ書面で伝えます。
いつ、誰に、どの書面を提出したか、提出前に何を言われたか、持ち帰る機会があったかを確認します。
感情的な長文ではなく、現在の意思と、手続を進めないよう求める内容を明確に記載しましょう。
8-4 会社とのやり取りを増やす前に弁護士へ相談する
署名後は、追加のメールや再署名によって会社の主張を補強してしまう場合があります。
提出書面、録音、メール、会社からの説明、退職予定日を持参し、早い段階で法的な見通しを確認しましょう。
退職日が近い場合や、会社が後任手配などを進めている場合は、対応を急ぐ必要が出ることがあります。

9章 退職勧奨と会社都合・離職票・失業保険
退職勧奨に応じるか考える際は、退職金だけでなく、離職理由と失業給付の扱いも確認します。
会社の記載だけで最終決定されるとは限らないため、退職に至った経緯を示す資料を残しておきましょう。
退職後の資金計画にも直結するため、書面の表現まで確認しましょう。
9-1 退職勧奨に応じた退職は通常の自己都合退職と区別される
雇用保険では、事業主から直接又は間接に退職するよう勧奨を受けて離職した人が、特定受給資格者に該当する場合があります。
恒常的に設けられている早期退職優遇制度へ自ら応募した場合などは、同じ扱いにならないことがあります。
退職勧奨に応じたからといって、会社が書いた離職理由だけで最終的に決まるわけではありません。
9-2 最終的な離職理由はハローワークが資料と経緯から判断する
会社が作成した離職証明書と、労働者の説明が一致しない場合は、ハローワークが双方の主張や資料を確認します。
退職届に「一身上の都合」と書いた事実も一資料になりますが、それだけで全てが決まるとは限りません。
退職勧奨の通知、面談記録、会社の提案書、確認メールなどを準備しましょう。
9-3 離職票が自己都合なら異議を記載し、証拠を提出する
離職票の記載が実際の経緯と違う場合は、ハローワークで離職理由に異議があることを伝えます。
会社から退職を求められた日時、発言、回答期限、退職条件を説明し、録音、メール、書面などを提出します。
会社へ訂正を依頼する方法もありますが、会社が応じない場合でもハローワークへ事情を説明できます。
9-4 病気やけがで働けない場合は受給期間や傷病手当金も確認する
失業給付の基本手当は、働く意思と能力があり、求職活動をしていることが前提です。
退職時点で病気やけがのため働けない場合は、受給期間の延長など別の手続が問題になることがあります。
健康保険の傷病手当金を退職後も受けられるかは、加入期間や退職時の状態などで変わるため、退職日前に健康保険組合や協会けんぽへ確認しましょう。
9-5 健康保険・年金・住民税を含めて退職後の資金を見積もる
失業給付には待期期間があり、正当な理由のない自己都合退職では、退職日が令和7年4月1日以降の場合、原則として1か月の給付制限があります。
特定受給資格者として扱われる場合は、この給付制限がありませんが、支給開始日や日数は個別に確認が必要です。
退職後は健康保険料、国民年金、住民税の負担も続きます。
退職日を決める前に、給与が止まる日と次の収入が入る日を並べて確認しましょう。

10章 退職勧奨を相談できる窓口
退職勧奨の相談先は、求める解決によって役割が異なります。
条件交渉、離職理由、法律違反、会社との話し合いなど、自分が確認したい問題に対応できる窓口を選びましょう。
一つの窓口だけで全てを解決できるとは限りません。
10-1 退職条件の交渉や署名済みの争いは弁護士へ相談する
弁護士には、退職勧奨の違法性、解雇の見通し、退職条件、合意書の条項、署名後の対応を相談できます。
依頼した場合は、会社との窓口や条件交渉を任せられることもあります。
働き続けたいのか、条件次第で退職するのかを決め切れていない段階でも、選択肢ごとの見通しを確認できます。
退職勧奨を弁護士に相談すべき理由については、以下の動画でも詳しく解説しています。
10-2 総合労働相談コーナーで制度説明や紛争解決制度を確認する
都道府県労働局などの総合労働相談コーナーでは、解雇、退職勧奨、配置転換、いじめなど幅広い労働問題を相談できます。
制度の説明に加え、助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんを案内される場合があります。
強制的に会社へ条件を受け入れさせる制度ではありませんが、公的な窓口で対応の方向を確認したい場合に利用できます。
10-3 労働組合へ加入して団体交渉を求める選択肢
社内の労働組合や、個人で加入できる合同労組へ相談し、会社へ団体交渉を求める方法があります。
退職勧奨の中止、就労環境、退職条件などを交渉事項にすることが考えられます。
組合ごとに対象地域、加入条件、費用、進め方が異なるため、事前に確認しましょう。
10-4 離職理由と失業給付はハローワークへ相談する
離職票の理由、特定受給資格者への該当、基本手当の手続はハローワークへ相談します。
会社との法的な交渉を代理する窓口ではありませんが、雇用保険上の離職理由を判断する役割があります。
退職勧奨を示すメールや書面を持参すると、経緯を説明しやすくなります。
10-5 労働基準法違反がある場合は労働基準監督署へ相談する
未払い賃金、違法な長時間労働、解雇予告、退職時証明の不交付など、労働基準法に関わる問題は労働基準監督署へ相談できます。
一方で、退職勧奨の態様が不当か、合意が有効かという民事上の問題だけでは、監督署が直接解決できないことがあります。
相談先は、解決したい問題に合わせて選ぶと話が進みやすくなります。
労働基準監督署への通報方法については、以下の動画でも詳しく解説しています。

11章 退職勧奨の裁判例|下関商業高校事件
下関商業高校事件は、市立高校の教員が退職しない意思を示していたにもかかわらず、多数回かつ長期にわたって退職を勧められた事案です。
担当者は退職するまで勧奨を続ける趣旨を述べ、教員に心理的な圧力を加えました。
最高裁第一小法廷は、労働者の任意の意思形成を妨げ、許容される限度を超えた退職勧奨について、市の損害賠償責任を認めた判断を維持しました。
労働者の自由な意思決定を妨げる態様まで進むと、退職勧奨は違法となることがあります。
この裁判例は、退職勧奨そのものを禁止したものではなく、拒否後の継続、回数、期間、発言、心理的圧力などを含む方法が問題になることを示しています。

12章 退職勧奨されたらよくある質問
退職勧奨を受けた後は、回答期限、録音、解雇、会社都合、解決金など、目の前の疑問が次々に出てきます。
ここでは、面談直後から退職手続までに迷いやすい点を、一般的な考え方に沿って確認します。
質問ごとの判断軸を知ると、会社への返答を考えやすくなります。
12-1 会社から今日中に回答するよう言われたら従う必要がありますか
退職勧奨は会社からの提案であるため、一般的には、その日のうちに承諾しなければならないものではありません。
会社が示した期限は、退職に同意しなければならない法律上の期限とは限りません。
期限の理由を確認し、資料の検討や相談のために延長を求めましょう。
12-2 退職勧奨の面談を会社に知らせず録音できますか
自分が会話の当事者として録音する場合、相手へ知らせていないことだけで直ちに違法となるとは限りません。
ただし、他人同士の会話を不正な方法で録音する場合や、録音内容を社外へ公開する場合は別の問題が生じます。
事実確認と相談のために保管し、元のデータを編集しないようにしましょう。
12-3 退職勧奨を拒否すると解雇されますか
会社が退職勧奨を断られた後に解雇を検討することはあります。
しかし、退職勧奨を拒否した事実だけで解雇が有効になるわけではありません。
解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされるため、告げられた場合は理由と根拠を確認します。
12-4 退職勧奨に応じれば必ず会社都合になりますか
雇用保険上、会社から直接又は間接に退職を勧められて離職した人は、特定受給資格者に該当する場合があります。
ただし、最終的な離職理由は、ハローワークが会社と労働者の説明や資料を確認して判断します。
合意書と離職票の記載を確認し、退職勧奨の経緯を残しておきましょう。
12-5 退職金や解決金の上乗せを求められますか
会社が合意退職を求めている場合は、解決金、退職日、有給消化、賞与、再就職支援などを交渉できることがあります。
ただし、法律上決まった上乗せ相場や、会社が応じる義務があるとは限りません。
受け取る金額だけでなく、請求権放棄や競業避止など、引換えに負う条件も確認します。
12-6 退職届を提出した後でも撤回できますか
撤回できるかは、退職届が一方的な通知なのか、合意退職の申込みなのか、会社の権限者へ届いたかなどによって変わります。
会社がすでに承諾している場合や、一方的な退職の通知が到達している場合は、自由に撤回できないことがあります。
撤回したい場合は、直ちに書面で意思を伝え、提出書面と経緯を持って相談しましょう。
12-7 退職勧奨に解雇予告手当は支払われますか
退職勧奨に応じて合意退職する場合は解雇ではないため、解雇予告手当が当然に発生するわけではありません。
会社が解雇する場合は、原則として30日前の予告又は不足日数分の解雇予告手当が問題になります。
予告や手当を支払ったことと、解雇そのものが有効かどうかは別の問題です。
12-8 会社のメールを自分の私用アドレスへ転送してもよいですか
自分に関係する証拠が含まれていても、会社のメールには顧客情報や他人の個人情報、営業秘密が含まれることがあります。
私用アドレスへの一括転送は避け、必要な資料の保存方法を先に相談しましょう。
自分に交付された書面や給与明細を確保し、社内にある資料は内容と所在を記録する方法もあります。

13章 労働問題の相談先を探すなら労働弁護士コンパス
退職勧奨では、働き続けたいのか、条件を整えて退職したいのかによって、相談の進め方が変わります。
相談する際は、会社から示された理由、退職条件、回答期限、面談の回数、すでに署名した書面、離職票の記載などを確認してもらうとよいでしょう。
弁護士であれば誰でも同じというわけではなく、退職勧奨、解雇、退職条件の交渉などの労働問題に対応している弁護士を選ぶことが安心につながります。
労働弁護士コンパスでは、労働問題に対応している弁護士を、地域や相談内容に合わせて探すことができます。
初回相談、電話相談、オンライン相談に対応している弁護士を探せば、在職中で忙しい方や、近くに相談先がない方でも相談しやすくなります。
退職勧奨は、短い回答期限の中で、仕事と生活の両方を考えなければならず、一人では判断しにくい問題です。
一人で抱え込まず、自分の状況に合いそうな弁護士を探してみてください。

14章 退職勧奨されたら即答せず、選択肢を残しましょう
今回は、退職勧奨されたら確認したい初動、避けたい行動、拒否後の対応、退職条件、違法性、証拠、離職理由について説明しました。
この記事が、突然退職を勧められ、何を答えればよいか迷っている方の助けになれば幸いです。
自分のケースで働き続ける選択と退職条件を比較したい場合は、状況に合う相談先を探すという選択肢があります。
(監修者/弁護士籾山善臣[神奈川県弁護士会所属])

