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二人芝居『マイムハムレット』全文公開

2025年8月8日に福岡市南市民センター 大練習室で上演予定!


マイムハムレット
別府源一郎

Aが演じる人物
〇ハムレット:先王の子、現王の甥
〇ガートルード:デンマーク王妃、ハムレットの母
王妃を演じる俳優
バーナード:歩哨
墓掘り

Bが演じる人物
〇クローディアス:デンマーク国王
〇ポローニアス:侍従長、クローディアスの腹心
〇ホレイショ―:ハムレットの親友
〇レアティーズ:ポローニアスの息子、オフィーリアの兄
〇オフィーリア:ポローニアスの娘
〇ローゼンクランツ:ハムレットの元クラスメイトで廷臣
〇ギルデンスターン:ハムレットの元クラスメイトで廷臣
座長
毒殺者を演じる俳優
フランシスコ:歩哨
墓掘り

舞台には装置らしい装置はない。
役者も基本的に小道具や特殊な衣装を使わない。
ト書きに出てくる道具類はすべてパントマイムで表現する。
複数シーンに出てくるキャラクター(特に〇がついたもの)は、しぐさか何かで、すぐにそのキャラクターだとわかる仕掛けがあるといいかもしれない。

1.前触れ  

舞台は暗闇に包まれている。(照明を調整する環境にない場合は調整不要)
上手と下手から、AとBが登場。歩哨のようだ。

それぞれ警戒しながら梯子や階段を上り下りしながら中央に向かう。
ここでしっかりとパントマイムを見せておきたい。

A(歩哨) 誰だ?

B(歩哨) そっちこそ誰だ?名前は?

A(歩哨) 王様万歳!

B(歩哨) バーナードさん?

A(歩哨) うん。交代の時間だ。フランシスコ。

B(歩哨) いつもと違うとこからおいでなんで、びっくりしましたよ。じゃあ、もう私は帰っていいですね。とくに異常はありませんでした。

A(歩哨) おう。

B(歩哨) あれ?今夜はホレイショ―さんも来るんじゃなかったでしたっけ。

A(歩哨) のはず。

B(歩哨) まいっか。じゃあ、おやすみなさい。(去る)

B、くるりと翻ってホレイショ―になる。

A(歩哨) 誰だ!

B(ホレ) しがない学者です。

A(歩哨) ホレイショ―さん。

B(ホレ) どれどれ、何が出るって?そろそろ一時が鳴りそうだけど。

A(歩哨) まもなくだと思います。

突風が吹いてくる、二人は近くのものに掴まる

B(ホレ) すごい風だ。

A(歩哨) 出てくる前触れです。

B(ホレ) (客席を凝視して)あれか?

二人、強風に耐えながら視線で亡霊を追う。

A(歩哨) ね。

B(ホレ) 確かに、亡くなった王様、そのままだな。

A(歩哨) でしょう。

B(ホレ) 何も言わないのか。何か言いたそうな感じではあるんだけどな。ちょっと声をかけてみてくださいよ。

A(歩哨) やですよ。

B(ホレ) 「おーい」って言ってみてください。

A(歩哨) (渋りつつ)おーい。

B(ホレ) もっと大きい声で。

A(歩哨) おーい。

B(ホレ) あ、あっちに行っちゃう。

二人、視線で亡霊を追う。風がだんだん弱くなる。

A(歩哨) おーい。おーい。

B(ホレ) ちょっと待って。

A(歩哨) (夢中で)おーい。おーい。

B(ホレ) 仮にも、前の王様のお姿のものに対して、「おーい」は無礼だったかもですね。

A(歩哨) そっちが言えって。

B(ホレ) ただ、どうなんでしょう。まず、あれが本当に亡き王様の霊なのか、どうか。もし、王様のものだったとして、友好的なものなのか敵対するものなのか、友好的だったとして、それをハムレット様に伝えていいものなのか悪いものなのか。だって、友好的な亡霊だとしても、「一緒にあの世に行きましょう」みたいなお誘いってこともあり得ますもんね。どう思います?

A(歩哨) ちょっと、難しいことは・・・。

B(ホレ) わかんないよね。

A(歩哨) 学者のあんたにも、わかんないか。

B(ホレ) まぁ、なんかうまいことハムレット様に話してみるよ。


2.エルシノア城

AとB、並んで空気椅子の姿勢。
Bはずっと空気椅子を平気でしているが、Aは女王(ガト)というポジションだが、空気椅子に耐え切れず、Bの演説中も立ったり座ったり。

B(クロ) (無駄に神妙に)我が兄王の急逝に、我々一同は深い悲しみに沈んできた。国全体が喪に服し、その喪失感は筆舌に尽くせない。兄王の徳は、この国に深く根ざしており、その不在は我々にとって大きな損失である。しかし、国の運営は止めておくことができない。新しい王として、私は兄王の遺志を継ぎ、この国を導き、繁栄へと導くことを誓う。そして、我が妃ガートルードと共に、この国に平和と安定をもたらすために尽力していく所存である。兄王の冥福を祈りつつ、我々は未来へと進んでいかなければならない。

A(ガト) ちょっと、化粧直しに行ってきます。(慌てて去るようにして、Aはハムレットになる)

B(クロ) お、おう。して、ハムレットよ、昨日までは甥、今日は我が子のハムレット

A(ハム) (客席に)「我が子」とは厚かましい。我がコト大事すぎてとち狂ったか。

B(クロ) 喪に服すのは血縁の務め。まぁ、しばらくはそういう感じでいいよ。ただ、現実はそういうのと関係なく進んでいくからね。ウィッテンベルクに行きたいっていうことは聞いてるけど、せっかく家族になれたばっかりだから、今、遠くに行ってほしくないな。お前のお母さん、私の妻のガートルードも、そう言ってるから、ここでやれることを、やってほしいなぁ。

A(ハム) (素直に)わかりました。

B(クロ) 安心した。じゃあ、よろしく。(退場)

A(ハム) (体をたたきながら)この身体が、この身体がどうしてボロボロに壊れてくれないんだろう。なんで、自殺しちゃいけないんだろう。父さんが死んでたった二カ月、いや、二カ月も経ってないな。あんなに仲良しだった母さんが、一カ月も経たないうちに。あんな男と・・・「弱さ」またの名を「おんな」。たった数週間前、ボロボロ涙をこぼして棺を見送った母さんが、数日の間に、心変わりをするなんて。なんかおかしい。ぜったい、なんかおかしい。

B(ホレ) ハムレット君。

A(ハム) あ、ホレイショ―か。

B(ホレ) お久しぶりです。

A(ハム) 久しぶりすぎるよ。え、夏休み、にしては、早くない?

B(ホレ) 不良学生ですから。

A(ハム) 嘘つけ。まぁ、そんなことはどうでもいいや。久しぶりに会えて嬉しいなぁ。あ、そっか。新しく王になった誰かさんと、僕の母親との結婚式に招待されたんされたんだな。

B(ホレ) え、まぁ。

A(ハム) いや、君は悪くない。交通費の節約にもなるし。結婚式だって節約してるもんね。親父の葬式に出した料理の残りが、そのままお袋の結婚式に出されてるってね。

B(ホレ) (戸惑いつつ)合理的、ではありますね。

A(ハム) そ。合理主義の親父も笑ってるよ。

B(ホレ) え。どこで(きょろきょろする)

A(ハム) (戸惑いつつ)僕の心の中で、さ。

B(ホレ) (呆れながら)お父君に、実は、お会いしたような、

A(ハム) ん?そうだね。君の心の中にもいるのかもね。

B(ホレ) いや、実際にお会いしたんです。

A(ハム) ・・・ふざけてる?

B(ホレ) あ。いえ、私は、生来、ふざけることだけは苦手でして。

A(ハム) 言えてる。で?

B(ホレ) 落ち着いて聞いてくださいね。昨夜、私とバーナードで城壁の見回りをしていたのですが、驚くべきことに、あの、先王様、ハムレット様のお父君にそっくりな姿が現れたんです。本当にそっくりで、一瞬目を疑いましたが、バーナードと見たので間違いありません。何なら証人として連れてきます。それは全身鎧姿で現れて、こちらには何もおっしゃらず、ただ威厳を持って歩かれていました。こんなことが起きるなんて信じられませんが、これはきっと何か意味があるに違いないと思うんです。何か思い当たることなどありますでしょうか。

A(ハム) え。いや。

B(ホレ) それで、お声をかけてみましたが、何もお答えにならず、消えてしまいました。

A(ハム) そんなことが。

B(ホレ) バーナードによると、一昨日も同じ時間にお姿が現れたということなので、今夜もきっと。私は行くつもりですが、ハムレット様はいかがいたしましょう。

A(ハム) 行く。

B(ホレ) わかりました。では、城壁で十一時半にお会いしましょう。

A(ハム) おう。待ち遠しいな。

B(ホレ) いつも通りにしていたら、あっという間ですよ。

いつも通りの一日が過ぎる。という時間の経過をマイムで表現できたら。


3.父親の幽霊 

B(ホレ) 夜も更けました。そろそろ一時の鐘がなるころですが、城内が騒がしいですね。何があってるんですか。

A(ハム) パーティ。

B(ホレ) え、平日ですよ。

A(ハム) 王が新しい酒を飲むたびに、ラッパを吹いて、太鼓を叩くわけ。

B(ホレ) はぁ。

A(ハム) あほくさいよね。

B(ホレ) いやぁ。土地土地の文化というものがありますから。

A(ハム) 恥ずべき文化だ。

強風が吹いてくる。二人は風に耐える。

A(ハム) これが前触れだったな。

B(ホレ) はい。(亡霊を見つけて)ほら、あそこ。

A(ハム) 父上。

B(ホレ) 手招きしていますね。何か私に聞かれてはまずいことがあるんでしょうか。それか、実はお父君の姿をした悪の化身で、川におびき寄せて溺れさせたりするのかもしれません。よくよくお気を付けください。

A(ハム) (手すりにつかまりながら)とりあえずついて行くよ。

B(ホレ) よくよくお気を付けください。

A(ハム)マイムウォークでずんずんと先に進む。B(ホレ)見えなくなり、B(亡霊)が見えてくる。二人それぞれマイムウォークやサイドスライド、ムーンウォークなどを駆使して、亡霊がハムレットを遠くへおびき寄せる様子を見せる。風は徐々に弱くなる。

B(亡霊) ハムレットよ、よく聞け。ここにいられる時間は限られている。また、地獄の炎に焼かれに戻らないといけない。

A(ハム) それは大変。

B(亡霊) のんきにしているのも今のうちだ。今から私が言うことを聞いてしまったら、お前は復讐をしないといけなくなるぞ。

A(ハム) 復讐?

B(亡霊) 王を殺した者への復讐だ。

A(ハム) 王を、殺した?

B(亡霊) 私が、この王が、庭で昼寝の最中に、毒蛇に噛まれて死んだなどと、それらしいことを言って、まんまと国中を騙してはいるが・・・そうだな、私を殺したものを毒蛇と呼ぶのなら、その毒蛇は、今、王冠をかぶって、私の椅子に座っているよ。

A(ハム) やっぱりそうか。あいつが、クローディアスが。

B(亡霊) そうだ。とんでもない弟だ。庭でまどろんでいるときに、静かに忍び寄り、私の耳に毒薬を流し込んだのだ。毒は鼓膜を破り、体内に広がり、あっという間に死んでしまった。これまで多少汚いこともやってはきたが、そういったことの懺悔もできないままに突然神様の前に引きずりだされることの怖ろしさと言ったら!

A(ハム) おいたわしや。

B(亡霊) あんな奴の好き勝手にさせちゃならん。特に寝室!とはいえ、母には危害を加えるなよ。彼女には彼女の良心に戒めてもらえばいいのだから。ああ、もう、行く時間だ。じゃあ、もう、行くから。さらばだ。言ったことを忘れるなよ。さらばだ。(去る)

A(ハム) 父上。

B(ホレ) どうでした。

A(ハム) いや、どうにもこうにも。

B(ホレ) 何かを聞いたんですね。

A(ハム) うん。でも。絶対人に言わない?

B(ホレ) 言いませんよ。

A(ハム) 誓える?

B(ホレ) え。私ってそんなレベルの信用しかないんですか?

A(ハム) いや、とんでもないレベルの情報だから言ってんの。誓える?

B(ホレ) 誓いますけど。

A(ハム) けど、とかじゃなくって、ほんとに。

B(ホレ) 誓います。誓います。

A(ハム) (取りつかれたように)ちゃんと誓えー。

B(ホレ) 誓ってますよ。

A(ハム) (取りつかれたように)ちゃんと誓えー。

B(ホレ) 誓いますって。なんか、怖いんですけど。

A(ハム) (取りつかれたように)誓えー。

B(ホレ) 絶対人に言いません。誓います。

A(ハム) (取りつかれたように)剣に誓えー

B(ホレ) 剣?剣に?いいけど、(剣を抜いて)剣にも誓います。

A(ハム) (取りつかれたように)ちゃんと誓えー。

B(ホレ) (剣に)ちゃんと誓います。絶対人に言いません。

A(ハム) (ハッと我に返り)ごめん。なんか、ちょっとぼーっとしてた。剣に誓ったの?

B(ホレ) あ、はい。

A(ハム) この世の関節がはずれてしまったな。全部話してしまう前に、一応忘れないうちに言っとくけど、僕が今後しばらく、数日、変な挙動に出るかもしれないけど、そんな時に、少しでもわけを知っているような態度を取らないでほしい。「なるほど、あぁいう感じでいくのね」とか「これ、言っちゃっていいんだっけ」みたいな思わせぶりな態度もやめてほしい。これも誓ってくれるかな。

B(ホレ) あ。

A(ハム) (取りつかれたように)誓えー。

B(ホレ) はい!はい!誓います!全力で誓います。ハムレット様が今から話すことは、全部知らないふりをして生きていくことを誓います!

A(ハム) では話そう。耳を貸してくれ。(耳打ちをする)


4.狂気を演じる王子

A(ハム)、パントマイムでマリオネットの動き
そこにやって来るB(ポロ)新しいキャラクターであることがわかるような登場

B(ポロ) ご機嫌麗しゅう、ハムレット様。

A(ハム)、無言で挨拶

B(ポロ) ありゃ。なんだか、楽しそうなことをされてますね。どれどれ私も。

B(ポロ)、ハムレットの真似をしてマリオネットっぽく挨拶

B(ポロ) いつも仲良くしていただいている娘のオフィーリアが、ハムレット様がいつもとご様子が違うということで、大変、心配していましたが。

A(ハム)、マイムで意味不明な動き

B(ポロ) (客席に)私が娘に、「身分が違うからハムレット様とは距離を置くように」と言ったことがまわりまわって、ハムレット様の気がふれてしまったのでは?私の責任ってことになりはしないかな。(ハムレットに)ところで、(マイムをまねて)これは、何をしてるんですかね。

A(ハム) (体を動かしながら)動いているんだ。(関節を動かしながら)動く、動く、動く。

B(ポロ) いや、その動きの意味は?

A(ハム) 操り人形の気分を確かめている。

B(ポロ) 操り人形?なぜでしょう?

A(ハム) まずは自覚するところからかなぁと思って。

B(ポロ) わかりませんな。

A(ハム) 誰の頭上にも、糸は存在する。人はそれらの見えざる手に操られ、踊り、笑い、泣く。だが操り手は、操り手であると思い込んでいるだけで、自分もまた別の糸に縛られているに過ぎない。

B(ポロ) それが真実だとすれば・・・自由とはどこにあるのでしょう?

A(ハム) 自由?それは糸が切られた瞬間、ただの動かぬ木偶になるときだけだ。どちらにせよ、我々は動き続けるか、止まるかのどちらかしかない。操り手がいなければ、何も始まらぬのだ。

B(ポロ) (客席に)言ってる意味がよくわからないが、なんだか真実を言っているような気もする。(ハムレットに)そろそろ私は行かなければ。

A(ハム) (死ぬ動作で)もう逝っちゃいますか。

B(ポロ) そうやって、悪いほうに取る!(客席に)ツッコミの鮮やかさ。気が変になっているとは思えないが、どういうことだ。まぁ、とにかく、娘は距離を取ってて正解だったな。しばらくは二人を会わせないようにしなければ。(ハムレットに)それでは、また、さようなら。(去る)

A(ハム) (がっくりうなだれて)めんどくさいおっさんだ。

ロゼとギルが出てくる。この二役はBが同時に演じる

B(ロゼ) ハムレット様。

A(ハム) おぅ。ローゼンクランツ。

B(ギル) ハムレット様。

A(ハム) おぅ。ギルデンスターン。どうしたんだ。ローゼンクランツとギルデンスターン。

B(ロゼ) ハムレット様がお喜びになるお顔が見たくって。

B(ギル) 大ニュースを持ってきました。

A(ハム) なんなんだ、その大ニュースというのは。ローゼンクランツとギルデンスターン。

B(ロゼ) すぐそこに来ているんです。

B(ギル) 旅芸人の一座が!

A(ハム) (それのどこが大ニュースなんだと思って白けるが、だんだんといいアイデアが思い浮かび、喜びの顔に変わる)確かに大ニュースだな。すぐ呼んでくれ。ローゼンクランツとギルデンスターン。

B(ロゼ) はい。

B(ギル) わかりました!

B(ロゼ、ギル)去る

A(ハム) 変な二人だ。

B(ロゼ、ギル)戻ってきて

B(ロゼ) 連れてきました。

B(ギル) 連れてきました。

A(ハム) ようこそ、エルシノアへ。あ、座長ですね。よろしくお願いしますよ。(Bと握手をする)

B(座長) おぉ。非常な歓迎ぶりですね。恐縮です。

A(ハム) 早速、何か見てみたいな。お得意は「沈黙劇」ということだったね。

B(座長) (腕まくりをして)何をお目にかけましょうか。

A(ハム) (パントマイムをしながら)こんなのあるよね。こんな感じの。

B(座長) いや、ちょっと待って。すごくお上手じゃないですか。殿下のあとでは、私の芸なんか、霞んでしまいます。

A(ハム) 何をおっしゃる。

A(ハム)パントマイムの技を繰り出して、B(座長)も途中から一緒になってやりだす。だんだんとダンスバトルの様相を帯びる。

A(ハム) いや、さすが。素晴らしい。今回の演目は、僕が選んでもいいのかな。

B(座長) えぇ、何なりと。悲劇、喜劇、歴史劇、牧歌劇、牧歌的喜劇、歴史的牧歌劇、悲劇的歴史劇、悲劇仕立ての喜劇交じりの歴史的な牧歌劇など、何でもやれます。

A(ハム) 「ゴンザーゴ殺し」はどうかな。

B(座長) もちろんできます。よくご存じで。

A(ハム) 僕がちょっと手を入れても対応できるのかな。

B(座長) 三十分前までにいただければ、完全に対応可能です。

A(ハム) 素晴らしい。

B(座長) 上演は明日でよございますでしょうか。

A(ハム) 完璧だ。

B(座長) それでは失礼。(去る)

A(ハム) (客席に)やっと一人になれた。復讐をすると、一度心に決めたけど、どうしても自分で納得ができる証拠が欲しい。親父が語った内容をなぞった芝居を見せて、王の反応を見てやろう。その反応を見て、あの王を煮るか焼くかを決めよう。

B(ポロ)袖からそっと出てくる。壁のマイム。ここでBは、ポロ、クロ、オフの三役を同時に演じる。

B(ポロ) 王様、こちらです。

B(クロ) (壁のマイムをして)おう。(のぞき穴から)ハムレットが見えるな。

B(ポロ) (オフィーリアに)オフィーリア。

B(オフ) はい。お父様。

B(ポロ) ハムレット様のご乱心が、お前のせいだというのを、王様に見てもらうのだ。そうすれば、王様も安心だ。私たちはここで見ているから、普段通りな感じで、ハムレット様にお声がけしてこい。

B(オフ) わかりました。お父様。

一方ハムレット

A(ハム) ありかなしか。そういう問題なんだろうな。運命のいたずらにひたすら耐え忍ぶのがいいのか、迎え撃って戦うのがいいのか。死ぬことは、寝ること。眠るのと変わりないこと。だとは思うけど、眠ると夢を見る。それがどんな夢なのか。(オフィーリアが入ってくるのを見て)おぉ、僕の女神。

B(オフ) お、お加減はいかがでしょうか。

A(ハム) 元気いっぱいです。

B(オフ) あの、先日いただいた贈り物ですが、お返ししたくって。

A(ハム) (話をそらして)君は誠実かな?

B(オフ) え?

A(ハム) 君は美人かな?

B(オフ) どうしてそんなことを?

A(ハム) 誠実さと美人は相性がわるいなぁって思って。

B(オフ) 誠実さと美しさが一緒だと、それが理想に思えますが。

A(ハム) いや無理だ。お互いに足を引っ張り合うから。前まで、僕は君のことを好きだと思ってた。

B(オフ) 今は違うんですか。

A(ハム) 思い違いをしてた。良い枝を接ぎ木しても、元の木が悪ければどうしようもない。今は好きじゃない。

B(オフ) では、私も思い違いをしていました。

A(ハム) 修道院に行けよ。何のためにろくでもない人間を増やす必要があるんだ。僕は自分のことを正直な人間だと思ってるけど、そんな僕でも、何で僕みたいなのが生まれてくる必要があったのかなんて思うよ。修道院に行けよ。

B(オフ) あぁ、神様、ハムレット様を救ってください。

A(ハム) 修道院に行けよ!(去る)

B(オフ) 泣き崩れる


5.無言劇「ゴンザーゴ殺し」

A(ハム) (場面変わって)いよいよだな。ホレ―ショー。

B(ホレ) そうですね。ハムレット君。

A(ハム) 今、何してたの。

B(ホレ) あ、靴ひもを結んでいました。

A(ハム) そっか。で、今回のお芝居は、王の心の動きを見るためのものであることは、昨日話した通りだ。僕一人では心もとないから、ホレイショー、君にもしっかりと見ておいてほしい。

B(ホレ) そのつもりでございます。

A(ハム) では、役者たちに入ってもらおうか。

B(ホレ) わかりました。

「幸せな王と王妃の生活」

A(王妃)が穏やかな微笑みを浮かべ、空間の中に見えない「王」を表現する。
王を目の前に見るように優しく微笑む。
マイムで王の手を取り、親密な仕草をする。
Aはゆっくりと床に座り、膝の上に「王」の頭を乗せる仕草をする。
優しく髪を撫でるように見せながら、幸せそうな表情を浮かべる。
「王」が眠りに落ちたことを示す仕草をする。
A(王妃)はふと何かを思いついたように目を輝かせる。
膝の上から「王」の頭をそっと動かし、椅子に横たえるマイム。
静かに舞台を去る。

「毒を盛る者の登場」

B(毒殺者)がゆっくりと舞台に現れる。
王を観察し、満足げに頷く仕草。
懐から小瓶を取り出すマイム。
「王」に近づき、耳元に毒を注ぐ仕草を丁寧に行う。
小瓶を落とし、舞台から退場する。

「王妃の再登場と王の死」

A(王妃)が、小さな贈り物を両手に持って舞台に戻る。
幸せそうな表情で「王」を見つめ、贈り物を差し出す仕草をする。
Aは、王が反応しないことに気づき、表情が困惑に変わる。
王は死んでいるようだ。
Aは驚き、贈り物を脇に置いて「王」に駆け寄る。
王妃が震える手で毒の小瓶を拾い上げるようなマイムをする。
絶望した表情を浮かべ、その場に崩れる。
最後にA(王妃)が「王」にすがりつく。

「毒殺者の慰めと王妃の変化」

B(毒殺者)が静かに舞台に戻り、王妃に歩み寄る。
泣き崩れるA(王妃)の肩にそっと手を置き、慰める仕草を見せる。
王妃の涙を拭うマイムをし、深い悲しみを共有するふりをする。
毒殺者は「贈り物」を取り出し、王妃に差し出す。
王妃は一度は拒否するが、毒殺者の優しさを受け入れるように変化する。
やがて王妃は贈り物を抱きしめ、毒殺者に心を許す。

「毒殺者と王妃の退出」

B(毒殺者)が王妃を立ち上がらせ、そっと手を引く。
A(王妃)は一瞬振り返り、マイムで「王」の遺体を見つめる。
悲しそうな表情を見せるが、毒殺者に手を引かれて舞台を去る。

空気椅子に座ったA(ガト)とB(クロ)

A(ガト) 王様・・・。

B(クロ) これは・・・(ガタガタ震える)。

A(ハム) 見たかホレ―ショー。

B(ホレ) 思ってたより、あからさまでしたね。

A(ハム) これで決まりだな。


6.懺悔

B(クロ)慌てて部屋に入ってきて、誰もいないことを確認して祈る。

B(クロ) やばい、やばい、やばい。もうあいつは、ハムレットは気づいてしまっている。どうにかしなければ。その前に、まずは神にすがろう。やってしまったことは仕方がない。もう過去のことだ。悔い改めて、赦されるはずだ。いや、罪を犯して手に入れた妻や地位をそのままにしておいて、赦されるのだろうか。いやいや、懺悔というのはどんな罪も浄化されると聞いたことがあるぞ。大丈夫なはず。

A(ハム)、柱や調度品に身を隠しながら、徐々にクロ―ディアスに近づく。

A(ハム) 今がチャンスだ、殺してしまおう。

B(クロ) 神様、助けて、助けて、助けて。

A(ハム) 祈りの途中に殺してしまうと、どうなるんだろう。

B(クロ) 神様、助けて、助けて、助けて。

A(ハム) もしかして、罪が赦され、天国に行ってしまうのでは。

B(クロ) 神様、助けて、助けて、助けて。

A(ハム) それだと、復讐にならない。

B(クロ) 神様、助けて、助けて、助けて。

A(ハム) うーん。今はダメだ。母が呼んでるらしいし、今は生かしておくか。(去る)

B(クロ) 神様、助けて、助けて、助けて。


7.ガートルードの部屋

A(ハム) 母上、お呼びでしょうか。

B(ポロ) (ハムレットに見つからないように隠れながら)ハムレット様がいらっしゃった。王妃様に危害を加えないように、見張ってないとな。ハムレット様はどうしちゃったんだろう。オフィーリアとの恋路を私が阻まなければ、こんなことにはならなかったんだろうか。いやいや、考えても仕方ないな。

A(ハム) 母上、お怒りでいらっしゃいますか。

A(ハム) お怒りの理由は、わからなくはないですが、それはお門違いですよ。母上は、先王である父上に、大きな罪を犯してしまったのですから。

B(ポロ) ますます様子がおかしいぞ。王妃が危ない。

A(ハム) (目で追って)どこに行かれるつもりです?(追いかけて肩を掴む動作)話は終わっていません。

B(ポロ) (大声で)そこまでだ!

A(ハム) (剣を抜いて)なんだと!無礼者!(声の出どころを突き刺す)

B(ポロ)悲鳴を上げて倒れる

A(ハム)倒れた、ポローニアスを見る。

A(ハム) なぁんだポローニアスか。王だと思った。

A(ハム)王妃を目で追いかけて

A(ハム) 母上!あぁ、行ってしまった。(再びポローニアスを見て)悪いことをしたな。生きている間は騒々しいやつだと思っていたが、こうなってしまうと、無口な学者のようにも見えるな。

B(クロ) (現れて、ポローニアスの様子を見て)ハムレット、これは一体、どういうことだ。

A(ハム) ウジ虫の餌ができあがりました。

B(クロ) (呆れて)もう駄目だ。一刻の猶予もならん。今すぐイギリスに行くんだ。他の者たちには私がうまく言っておく。すぐにイギリスに行け。そこで頭を冷やしてこい。

A(ハム) デンマークにはいられない?

B(クロ) そうだ。しばらくお前をこのデンマークに置いてはおけない。すぐにイギリスに行くんだ。

A(ハム) よかろう。(去る)

B(クロ) (ハムレットをしっかり見送っておいて)ローゼンクランツとギルデンスターン。すぐにハムレットの後を追って、さっさと船に乗せるんだ。準備でき次第出発せよ。(客席に)ハムレット・・・お前は本当に厄介な存在だ。父親を失った悲しみか、それとも何かを嗅ぎ取ったのか、その動作も言葉も、俺の心を刺してくるようだ。だが、お前をこの国で殺すわけにはいかない。民衆はお前を慕っているし、俺が手を下せば、疑われるのは間違いない。俺は「潔白」でいなければならないんだ。そこでイギリスだ。あの王なら俺の指示に従うだろう。遠い異国の地で、お前は処刑される。俺はただ、知らないふりをして訃報を受け取ればいい。それで全てが片付く。簡単な話だ。・・・いや、簡単じゃないな。罪悪感ってやつが、こうやって胸を締めつけてくる。だが仕方ない。お前を生かしておけば、俺の命も王座も危うい。俺はこの手を汚さずに勝たなきゃいけないんだ。ハムレット、お前をイギリスへ送る。そこで終わりだ、俺にとっても、お前にとっても。


8.狂気のオフィーリア  

B(オフ)張り付いたような固まった笑顔で、ふらふらと歩く。壁や柱や調度品にぶつかりながら歩く。ポケットから紙でできた花を取り出す。(ここの小道具だけマイムではない)セリフの間もうろうろして、いろんなところにぶつかったり躓いたりする。

B(オフ) デンマークのお妃さまは、どちらでしょう。

A(ガト) オフィーリア!

B(オフ) お妃のデンマーク様、こんにちは。

A(ガト) 心が壊れてしまったと聞いてはいましたが、ここまでとは。

B(オフ)はいよいよ激しくものにぶつかる。A(ガト)は慌てて、B(オフ)の進行方向のものをずらしたり運んだりしてぶつからないように気を配るが、B(オフ)の動きの予測がつけにくく、A(ガト)の努力虚しく、いろんなところにぶつかる。

B(オフ) (急に表情が変わり。以降も仮面のマイムで、ころころと表情が変わる。紙の花は、客席に渡せそうだったら、渡してもよい)この花は愛の証、この花は嘘つきのため・・・そしてこれは、あー・・・忘れてしまった。何だったかしら?まあ、きっと大丈夫。きっと大丈夫よね。お父様、聞こえますか?私、良い娘でいられましたか?ごめんなさいね、ごめんなさいね。でも、愛してました。お父様も、ハムレット様も。でも、ハムレット様は冷たいのよ。愛してると言ったのに、今は目も合わせてくれないの。私が何か間違えた?何を間違えたかな?バレンタインのお祝いに、あの人私のお部屋の中に。「愛してる」って瞳を見つめ、気づけば、全部奪われて、気づけば、あの人どこへやら。何事も、きっとそのうち「おめでとう」で終わるはず。大切なのは、辛抱ね。そうはいっても、涙が出ちゃう。冷たいところで寝てるのね。まあ、そんなことも、お兄様は承知よ。なるほどー、貴重なご意見ありがとうございます。それでは、みなさん、さようなら。(Aに)あなたもね、さようなら。さよなら、さよなら、さようならー。(去る)

A(ガト) (見送って)お父上の死に、ハムレットが関わっていることを知っているのだわ。


9.墓場

A(墓堀)、B(墓堀)、一生懸命墓を掘っている。

B(墓堀) ってことは、自滅した女を、フツーに埋葬するってことか。

A(墓堀) おう。

B(墓堀) 自分で飛び降りたっていうはなしだろ?

A(墓堀) おう。

B(墓堀) ここに水があるとする。で、こっちに人がいるとする。で、この人が、この水へ行って死んだら、自殺。逆に、この水が、こっちの人のほうに来て溺れさせたとしたら、これは、自殺じゃない。

A(墓堀) おう。

B(墓堀) いや待てよ、そうか。普通ならそうだけど、この女は、普通の身分の女ではないからな。そりゃ、水のほうから出かけていくわ。

A(墓堀) おう。

B(墓堀) 身分が高けりゃ、首吊るのにも身を投げるのにも、特別扱いしてもらえるんだなぁ。切ねえなぁ。ときに、石工よりも、大工よりも、船大工よりも、もっと丈夫なものを作れるのはだーれだ。

A(墓堀) おう。

B(墓堀) 考えてんの?

A(墓堀) おう。

B(墓堀) 考えてくれてんの?

A(墓堀) おう。

B(墓堀) 時間切れだ。今度同じ問題を出されたら、墓掘りと言え。墓掘りが作る家は、なんせ末永く続くからな。わかったらヨーアンの店に行って、酒買ってこい。

A(墓堀) おう。(去る)

B(墓堀)陽気に鼻歌交じりに墓を掘る。

A(ハム) (出てきて)楽しそうだね。誰の墓なの?

B(墓堀) あたしのです。

A(ハム) いや、そういう意味じゃなくって、誰のための墓なの?

B(墓堀) 誰のもんでもないです。

A(ハム) じゃ、何を埋葬するんだ。

B(墓堀) 女だったものです。

A(ハム) ひねくれたやつだ。墓掘りは長いのか?

B(墓堀) 先の王様が、フォーティンブラスに勝利した日からですね。

A(ハム) だったら、何年になるかな。

B(墓堀) そんなこともわからないのかい。王子ハムレット様が生まれた日ですよ。ほら、頭がおかしくなってこないだイギリス送りになった。

A(ハム) そうか。どうして彼はイギリス送りになったんだ。

B(墓堀) だから、頭がおかしくなったからですよ。イギリスに行けば、そんなことは気にならなくなりますからね。

A(ハム) どうして。

B(墓堀) ものを知らない人だな。あそこは全員頭がおかしいからですよ。

A(ハム) へえ。(指さして)その頭蓋骨、誰のかわかったりするの?

B(墓堀) わかりますよ。(頭蓋骨を手に取り)忘れもしない。こいつは、あたしの頭に、ワインをぶっかけた奴ですからね。この頭蓋骨は、先の王様のお気に入り、ヨリックのやつですよ。

A(ハム) これが?

B(墓堀) 間違いないですよ。

A(ハム) かしてくれ。(受け取る)あぁ、ヨリックなのか。余計なことばかり言うやつだったけど、僕をおんぶしてあちこち連れてってくれた。この辺に唇があって、何度もキスをした。おい、冗談はどうした。歌を歌わないのか。笑いもしないのか。・・・女たちに言ってやれよ。厚化粧とかでごまかしても、最後はこんな顔になりますよって・・・

B(墓堀) キスしてやんなよ。

A(ハム) いや、すごいにおいがする。アレキサンダー大王も、こんな感じかね。

B(墓堀) ま、似たようなもんでしょう。

A(ハム) 大王の肉は、ビール樽の蓋になったりしてるんだろうか。

B(墓堀) そのこころは。

A(ハム) こういうことだ。大王が死ぬ、埋葬される、土にかえる、粘土になる、ビール樽の蓋になる。ジュリアス・シーザーも、今頃何かの蓋になってるわけか。

B(墓堀) あたしが蓋になるときは、クレオパトラと一緒がいいなぁ。

A(ハム) (制して)し!静かにしろ。王が来るぞ。(隠れる)王族が関わってる葬式にしては、ひっそりとしすぎだな。ろくな死に方をした奴じゃないな。

B(レア) こんなことしかしてやれないのか。たった一人の、大切な妹のために、これっぽっちの葬式しかしてやれないのか。あぁ、オフィーリア。

A(ハム) (出てきて)レアティーズ、今、何と言った。

B(レア) お前が何でここにいるんだ、ハムレット!

A(ハム) それは、オフィーリアなのか。

B(レア) イギリスに行かなかったのか!

A(ハム) なんで、死んだんだ!(Bに掴みかかる)

B(レア) (負けじとAを掴む)お前のせいで、お前のせいで!

殴り合いのけんか。ひとしきり終えて。

B(レア) もうやめよう。今日は妹の葬式だ。


10.決闘  

B(クロ)、A(ガト)空気椅子に座っている。A(ガト)も普通に空気椅子がやれるようになっている。

B(クロ) スポーツというのは、平和的に勝敗を決する、紳士的なたしなみである。行き違いがあったようではあるが、この剣試合で、双方、汗とともにわだかまりを消し去ってほしい。二人とも、フェアプレーで楽しんでくれ。

A(ガト) 二人とも頑張って。

B(クロ) この日のために、とっておきのワインを開けてある。一本取ったほうが飲んでいいぞ。城中の大砲を鳴らして、乾杯をしよう。あ、ハムレットの盃には、われらが家系に代々伝わる、この真珠を入れておこう。(ワイングラスに入れて)うん、きれいだ。レアティーズすまんな、身びいきしてしまって。よし、じゃあ向かい合ってくれ。(客席に)この真珠には毒が塗ってある。だから、このワインを飲めば、体に毒が回る。レアティーズが持つ剣にも毒が塗ってある。あれでかすり傷でも受けようものなら、すぐに体に毒が回る。この剣試合に、勝っても負けても、ハムレットはこの世からご退場ということになる。それで終わりにできる。

A(ガト) では、乾杯しましょう。

B(クロ) (慌てて)待て!お前は飲むな。大事なハムレットのためのワインだから。試合で成果を出せたものだけが飲める大切なワインだ。絶対に手を出すな。

A(ガト) ワインなしでは見てられないですわ。

B(クロ) ほかのにしてくれ。(場に向かって)さあさあさあ、試合を始めようか。

A(ハム)、B(レア)剣を構えて向かい合う。

A(ハム) この間は悪かった。正常な判断ができる精神状態でなかったんだ。

B(レア) それを聞いて安心した。この試合では、邪念を捨て去って、お互いの剣の腕だけを楽しもう。

A(ハム)、B(レア)激しく打ち合う。

A(ハム) 一本!

B(レア) よし、もっかい。

A(ハム) (汗を拭きながら、王座に向かい)ワインは後でたっぷりいただきます。

A(ハム)、B(レア)激しく打ち合う。途中スローモーションになって。

B(レア) (ちらと王妃を見て)お妃さま!(小声で)お妃さまが、毒入りワインを飲んでしまった。

A(ハム) 隙あり!一本!

スローモーション解除。B(レア)破れかぶれになって、A(ハム)に打ちかかる。

A(ハム) (打ち返して)おい、卑怯だぞ。

B(レア)めちゃめちゃに打ちかかり、A(ハム)もそれに応じて、泥仕合の様相。剣を落としては拾い上げ、打ち合う。

一方、王座で。

A(ガト) 喉が熱い、熱い。体の中が、熱い。

B(クロ) まさか、飲んだのか。ワインを飲んだのか。

A(ガト) このワインは何なの・・・

B(クロ) おい。(試合の場に向かって言い訳)試合の激しさに、動転しているようだ。気にせず続けてくれ。

A(ガト) ハムレット、このワインには毒が入っているわ!(と言い残して息絶える)

B(クロ) いや、違う。違うんだ。

A(ハム) 母上!(クロに)何てことしやがるんだ、この下種野郎!(王を刺す)

B(クロ) (刺された場所を押さえて)反逆だ!反逆だぞ!このものをひっ捕らえろ!

A(ハム) (王妃のそばのワイングラスを持ち)王家の真珠とはこれか!お前も母上のあとを追え!(王の口に真珠を押し込み、ワインで無理やり飲ませる)

B(クロ) あが!あが!(息絶える)

A(ハム)立ち尽くしている。

B(レア) ハムレット、済まない。

A(ハム) レアティーズ。

B(レア) 王と結託して、卑怯な真似をした。さっきの泥仕合で、どっちがどっちの剣かわからなくなったけど、俺の剣には毒が塗ってあった。どうも、その毒がどこかの傷口から入ってきてしまったようだ。血が熱い。僕の罪を許してくれ。僕も君を許す。(息絶える)

A(ハム) (自分の体の傷を見て)ホレイショ―、どうやら僕もダメみたいだ。君は生きながらえて、本当のことを残った人たちに教えてほしい。

B(ホレ) それには従えません。私もあなたと共に逝きます。まだ、ワインが残っているようなので・・・

A(ハム) やめろ。このままだと、汚名が残るだけだから、頼むから、僕のことを大切に思ってくれるのなら、生き残ってくれ。一部始終を、語り継いでくれ・・・あぁ・・・あとは、静寂だけ。(息絶える)

B(ホレ) 気高いお心が、今、消えてしまった。おやすみなさい、王子様。天使の歌声に導かれて、天国に行かれますように。

おわり

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