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香港で買った競馬本、「馬不停蹄」。中国語表記の裏話など面白いです。


香港ジョッキークラブの元チェアマンによる競馬本。


先日、香港の誠品書店で「馬不停蹄」という本を購入しました。

「馬不停蹄」は、北京語読みでmǎ bù tíng tíマーブティンティー
意味は「馬がひた走る」から転じて「一息も入れず行動する」という中国故事に由来する四字熟語だそう。

著者は、2020年から2022年に香港ジョッキークラブのチェアマンを務めた陳南禄氏。

HKJC HPより引用


副題ーー從跑嗎地到沙田(ハッピーバレーからシャティンまで)


陳氏は、航空業界に30年以上、不動産業界に9年従事した以外に、香港や海外で様々な公職、大学で教鞭をとった経験もあるそうです。

香港で、競馬は「特殊」なもの?


序文に、本書は香港の新聞『頭條日報』に連載していたコラムから選んだもので構成しており、「競馬」という多くの人にとって「特殊」とも言える業界について、少しでも新たな印象を持っていただければ、という思いで書かれたそうです。

香港は競馬大国と言っていい140年もの長い歴史と開催規模を誇りますが、それでもチェアマンが「特殊」な業界と表現している点が、まず気になりました。

そういえば、私の香港人の友達も、香港に住んでいながら「競馬は行ったことないよ」という人もいます。外国人の私が香港競馬に夢中なのを、いつも不思議に思っているようです。

私の勝手なイメージですが、香港は狭いし、人口も少ない。にも関わらず馬券の売上規模は約2.6兆円(2024/25シーズン、1,388億香港ドル)とかなり大きく、また、街のそこかしこにに場外馬券売り場を見かけるので、香港人にとって「競馬」はポピュラーなエンターテインメントな気がしています。

フォートレスヒル(炮台山)の場外馬券売り場


それでも、チェアマンを務めた方が「特殊」と言うぐらいなので、一般の香港の人々にとっては、競馬は身近にありながらも謎が多く、詳しくは知られてないものなのかもしれません。

そういえば、日本と違って、香港の競馬場は子供は入ることができないそうです。なので、日本の競馬ファンが、「子供の頃、親に連れられて行った競馬場で、サラブレッドの美しさ、カッコ良さに夢中になり、競馬ファンになった」というような興味のきっかけは持ちようがありません。

それでも、著者の陳氏は、競馬場があるハッピーバレーの近くに学校があり、毎日サラブレッドがトレーニングに励む姿を見ていたそうです。(陳氏の子供時代には、ハッピーバレーにトレーニング施設、厩舎があり、周辺一角に競馬のエコシステムが形成されていたそうです。)

ハッピーバレー競馬場は、日本人の感覚では想像できないほど都心にあります。



陳氏は子供時代にサラブレッドの姿を間近で見ていたので、競馬にもずっと親しみを持ち、長じて、香港競馬の主催団体である香港ジョッキークラブのチェアマンを務めるという縁にめぐり合ったのでしょうね。


本の中身なのですが、8章構成のうち、1章を読み終え、2章以降はまだ拾い読み途中です。

1章は、香港の馬の名前についてのコラムが多く、個人的にかなり興味深かったです。

香港の馬は、「英語」と「中国語」の2つの名前を登録する必要があることは知っていましたが、香港独特の事情というか、カッコいい名前をつけたつもりが、英語の発音が広東語の縁起の悪い言葉を連想してしまうことがあるそうです。

例が挙げられていたのが、2010年に5戦して1勝を挙げた「Cheque Book」という馬。同馬の中国語名は「得到寶」。

英語名「Cheque Book」の意味は「小切手帳」。そして、中国語名「得到寶」は、「宝を得る」と、金銭面で縁起が良さそうな名前です。

しかし、「Cheque Bookチェック ブック」が広東語の「即仆zik1 fu6」の発音に似ており、この「即仆」は“その場にバタリと倒れる”という意味なのだそう。

サラブレッドの名前としては、問題があります。。

陳氏は、それでもこの「Cheque Book」は一勝を挙げたのだから大したもの、と書かれていました。

他にも、弁護士数人が大種牡馬「Danehill(丹山)」の血統の仔を共同購入し、父名と法律(law)に因んで「Danelaw(中国語名は「的確近」)と名付けたそうです。

しかし、字面はなかなかカッコいいのだけど、ぜんぜん勝てない。そして、負けると競馬ファンが広東語で「釘囉deng1 lo1(意味は「死んだ」)とボヤく。その発音が「Danelaw」と重なる、という笑い話も書かれていました。

こういった、香港ならではの中々ややこしい独特の名前事情が面白かったです。

日本の馬への命名も大変そう。


また、日本の馬が香港に遠征したり、又は香港で日本の大レースの馬券が発売されるときには香港ファンのために中国語の名前が考え出されるのですが、それに関連したコラムもありました。

アーモンドアイの「杏目」は、発音的にも、意味的にも、うまくつけられたものです、と書かれています。

広東語の発音は、Google翻訳によると、杏目hang6 muk6だそうです。しかし音声を聞いてみましたが、「ハンモッ」と聞こえて、どうなんだろうと、微妙な気持ちになりました。

また、意味的にも、アーモンドとあんずは、同じものではない気もするのですが、、

他にも、キズナや、ロードカナロアについても書かれていました。

キズナは、香港人の「絆」という字に対して持つイメージを考慮し、人と人の間の深い信頼関係、という意味で「高情厚意」にしたそうです。それに、香港の命名ルールでは、漢字一文字はそもそもNGとう事情もありそうです。

また、ロードカナロアの「カナロア」は、ハワイの海の神という意味なのだけど、その名前「海神」はすでに使用されていたので、「龍王」と名付けられた、と命名の裏話が披露されていました。

私も、ロードカナロアはなぜ「龍王」なのか、ずっと謎でしたので、少しスッキリ。

一章の部分的な紹介と、途中ですが感想メモです。

二章以降、また面白そうなところあったら紹介記事にできればと思います。


(ちょっと追記)香港素敵馬名、おもしろ馬名


香港馬名で素敵なもの、面白いのを、何頭か紹介します。

本の中で“この命名は絶妙”と紹介されていたのが、

英語名「Long Time No See」、中国語名「龍潭老鼠」

龍潭老鼠は、発音が龍潭老鼠lung4 taam4 lou5 syu2で、たしかにGoogle翻訳で音声を聞いてみた所、long time no seeに聞こえます!

(ただ、意味としては“龍のふちにネズミがいる”という、おとぎ話的で意味ありげですが、実は何も意味はないようです。)


他には、

英語名「Fish'n Chips」、中国語名「炸魚薯條」という馬や、「大蘋果(Big Apple)」、「綠茶雪糕(Green Tea Ice)」など、フード・ドリンク系の名前の馬もいたそうです。

前にも何度か書きましたが、このnoteで使っている「稲庭うどん」も、もともとは香港で「稻庭烏冬(英語名はBest Noodle)」という馬が走っているのを知り、拝借したものです。

香港の競馬新聞


そうそう、本の中で、陳氏は「日本の規則ではフード・ドリンク系の馬名はつけてはいけないのです。だから、日本には“拉麪(ラーメン)”、“拖羅(トロ)”、“蝦餃燒賣(エビシューマイ)”というような馬は走ってないのです」と書かれていましたが、これは勘違いですね。

日本にも、イクラトロ、リンゴアメ、イチゴミルフィーユ、メロンパンなどなど、枚挙にいとまがない感じですよね。

ちょっとのつもりのおまけが長くなりました。最後に、昔書いた珍名馬記事のリンクも貼っておきますので、良かったら是非ご覧ください。


摘読日記_117

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