HKJCのアニュアルレポートを読む③〜「2030年に向けての様々な布石」(CEOステートメント)
香港ジョッキークラブのアニュアルレポート(2023/2024シーズン・年次報告書)を読み解いてきて、①、②と併せて13,000文字ぐらいになってしまいました。(9割方、丸々引用ですが。)
今日の記事は、引用は少なめに簡潔にまとめ、最後にレポートを読み終わっての所感を書きたいと思います。
早速ですが、ブレスゲスCEOのステートメントの続きです。
CEOステートメント

CEOステートメントは以下の10パートがあります。
1.成果と課題について(※この見出しは便宜的に私がつけました。)
2.コーポレート戦略のレビュー(Corporate Strategy Review)
3.ワールドクラスの香港競馬への成長(Growing our World-Class Racing)
4.顧客中心主義の強化(Strengthening our Customer-Centricity)
5.賭け対象エリアの拡大(Expanding the Club’s Global Wagering Footprint)
6.競馬発展ビジョン2030(Racing Vision 2030)
7.コミュニティと共にある(Standing with our Community)
8.グローバルな影響力を持つ慈善事業へ(Globally Impactful Philanthropy)
9.真心をこめたメンバーシップ(Membership with a Racing Heart)
10.クラブで一致団結し同じビジョン実現へ(One Club, One Team, One Vision)
前回記事で、上記3の「ワールドクラスの香港競馬への成長」まで紹介しました。
以下、順に4から見ていきます。
顧客中心主義の強化(Strengthening our Customer-Centricity)
(※このパートは要約でご紹介します。)
ジョッキークラブのメンバーシップ会員やオーナー、顧客に対するAIやデータプラットフォームの更新を通じて分析機能を拡充し、顧客理解をより深め、顧客毎のニーズに寄り添ったハード面、ソフト面の施策を打っていく、という内容になっています。
特に、Y世代(1980年代生まれ)、Z世代(1990年代生まれ)に対してはテクノロジーを活用し、競馬のレース中だけではなく、レース前後のソーシャル体験として投票用の「3-in-1」アプリにAI対応Discoverページを用意したり、ハッピーバレー競馬場でデジタル競馬場というコンセプトを試験的に導入する予定だそうです。
また、競馬場以外の場所で、スポーツと食事の融合したスポーツ・エンターテインメント・ハブの運営を開始し、この試みを続けていく、と述べています。
上記と関連して、香港ジョッキークラブの場外馬券売り場と併設の「競KEIBA」というレストランカフェがあり、私も昨年香港で足を運んでみました。(このお店の存在を知らず、街を歩いていて偶然発見したのですが・・)。


でも、こういう新規顧客を取り込みたいのでしょうね。

賭け対象エリアの拡大(Expanding the Club’s Global Wagering Footprint)
(※このパートは要約でご紹介します。)
香港ジョッキークラブで発売できる海外のトップレースを継続して増やしていく、という目標を述べています。
将来的な目標は、「LONGINES World’s Top 100 Group 1 Races」の100レース全てを香港ジョッキークラブで発売し、且つパリ・ミューチュエル方式に基づく新たなベットタイプを提供していく事が可能となると述べてもいます。
一方で、増加する非合法の賭け(特にバスケットボールで多いと言及しています)のライセンス獲得による取り込みを行い、ジョッキークラブが管理することで地域社会への利益還元を目指しています。
競馬発展ビジョン2030(Racing Vision 2030)
(※このパートは興味深いトピックが多かったので、全て引用したいと思います。)
昨年、私が声明で述べたように、当クラブの「競馬発展ビジョン2030」は、従化、シャティン、ハッピーバレーの3つの競馬場のトライアングルで、グレーターベイエリアにワールドクラスのレースをもたらすことです。
私たちの戦略は、中国本土で馬産業を高水準まで発展させるフレームワーク「国家馬産業発展計画2020-2025」(National Equine Industry Development Plan 2020-25)をベースとしています。
2021年に広州市政府とフレームワーク協力協定を締結し、広州・香港競馬経済クラスターを共同で発展させることに合意したのに続き、香港特別行政区政府の全面的な承認を得て、当クラブは2026年に従化競馬場で通常レース開催を開始する予定です。これは、当クラブが専門家メンバーとして参加している広東・香港馬術産業協力タスクフォースによって推進されています。
その準備として、著名な建築家であるヘルツォーク&ド・ムーロンが設計した象徴的なグランドスタンドの建設が大幅に進んでいます。持続可能性に重点を置くこの新グランドスタンドには、年間電力需要の3分の1以上を発電を可能とする2万枚のソーラーパネルが設置されます。また大きな特徴として、馬文化、及び競馬にどっぷりと浸ることのできるインタラクティブな環境を提供するビジター・エクスペリエンス・センターもあります。
実際、中国本土にとって競馬は非常に新しいものであるため、今後数年間は、スポーツとしての競馬への関心と、あらゆる面での馬文化への理解を深めることに重点を置きます。中国本土の新しい世代の馬主にもアピールし、競馬への理解を深めてもらいたいと思います。このような事を念頭に置き、当クラブのユニークなコミュニティとしての役割を中国本土のパートナーたちと共有するために、今年末には香港JC深圳センターを開設する予定です。
しかし、ここで強調しておかなければならないのは、従化のビジョンは競馬のレースを超えたところにあるという事です。むしろ、職業訓練、獣医学の発展、高潔さを鍛えるための訓練などを通じて、競馬と馬術の卓越性の中心地として発展させたいと考えています。私たちはまた、従化を馬が国際競技大会に参加する際の国際的な健康衛生基準を取得するためのゲートウェイにする狙いを持っています。この点で、中国本土として初となる国際認可を取得した馬無病地帯(equine disease-free zone)として従化の開発は役立ってきました。最近、馬の移送センターを開発するために土地を取得したのも同様に重要な事です。
実際、馬術競技と馬術産業は、グレーターベイエリアだけでなく、本土全域で盛んになっており、農村地域の活性化や経済成長の原動力として大きな貢献をしています。その要素には、繁殖から調教、獣医治療、競技イベント、飼料の供給、関連インフラまで、あらゆるものが含まれるでしょう。そのため、グレーターベイエリアが当クラブの活動の中心である一方、全国レベルでの馬産業界発展への関与と支援も続けています。たとえば昨年8月、私は国際馬術連盟(International Horse Sports Confederation)の会長として、同連盟の幹部代表団を率いて初の中国本土視察を行い、国や省レベルの主要幹部と会談しました。
当クラブはまた、中国馬業協会(China Horse Industry Association)および中国馬術協会(Chinese Equestrian Association)との長年に渡るパートナーシップを延長し、両団体と追加協定を締結しました。2008年北京オリンピックと2010年広州アジア競技大会の馬術競技へのサポートに続き、杭州で開催された第19回アジア競技大会でも技術サポートを提供し、「卓越した貢献者」として表彰されました。
訳註:
◆グレーターベイエリア
原文中国語は「大灣區」。香港、マカオ、広東省珠江デルタの9都市(広州、深圳、珠海、仏山、恵州、東莞、中山、江門、肇慶)の連携による地域発展改革計画。
*
続きですが、以下3パートは、これまでの内容と重複が多いので割愛したいと思います。
7.コミュニティと共にある(Standing with our Community)
8.グローバルな影響力を持つ慈善事業へ(Globally Impactful Philanthropy)
9.真心をこめたメンバーシップ(Membership with a Racing Heart)
以下が最後の10パート目となります。
クラブで一致団結し同じビジョン実現へ(One Club, One Team, One Vision)
(※このパートは要約でご紹介します。)
CEOステートメントの最後は、パンデミックや不況の中でも、並外れた回復力を見せてくれたジョッキークラブ、共に働いたパートタイム・フルタイム問わず全ての従業員たち、そして利チェアマンをはじめとした理事会のメンバーに感謝の言葉を述べ、香港ジョッキークラブは競走馬の高い質、ベッティングの革新性、慈善活動における貢献を通じて世界へのポジティブな影響力を広げ続けている、などの言葉で声明を締めくくっています。
読み終わっての所感
今日の記事も、結局5,000字を超える長いものとなってしまいました。
しかし、レポートを読むだけでなく、記事に落とし込む過程でより血肉となった感じでよかったと思います。
レポートそのものに興味を持った方は、hkjc.com(以下のページ)にアクセスして見て下さい。

ページ右上「About HKJC」から、「Annual Report」を選ぶと、ダウンロードページにいけます。

読み終わっての所感は色々あるのですが、いちばん大きなところではやはり香港ジョッキークラブの国際性と志の高さに驚きました。
昔からHKJCのホームページはちょいちょい見るのですが、こうしてアニュアルレポートを読むと、ホームページが「英語・中国語」の二言語に完全対応している意味がよく分かりました。(上記ページトップで切り替えができます。)
香港で公式に使われるのが中国語(広東語)と英語なので、基本が二言語対応というのは当たり前なのかもしれませんが、英語対応の向こうには、香港競馬と関係の深い(輸入が多い)オーストラリアや英国など英語圏の国を始めとした海外競馬の世界が広がっており、お互いに交流の壁は低いのではと思います。
言葉の壁が低いのは、海外展開には大きな利があると思います。
うまく表現できないのですが、香港ジョッキークラブにとっては”「香港の競馬」がまずあり、香港以外の競馬として「海外の競馬」がある”というよりも、”「世界の競馬」がまずあり、その中に香港を含めた各国の競馬があり、全部商品にできる”、という思想があるような気がします。
それをすでに『ワールドプール』でやっているのかなとも思いますが、これを思いついても実際にやってしまうのは、すごいことだと思います。
あとは、中国本土での競馬、馬産業への貢献についてですが、これはまだ私の情報キャッチアップが追いついてないのもあるのですが、かなりベールに包まれている感じがします。
来年、従化競馬場で定期開催、というのは実現するのかもしれませんが、もちろんそれが最終目的ではなく、ひとつのステップだと思います。
その先のロードマップがまだ流動的なのか、ある程度は決まっているけど現段階で発表するメリットがないのか🤔
この記事を書きながら、交流させて頂いている南洋朧月様から中国で進んでいる馬産業についての情報(香港ジョッキークラブとは別の主体による推進)を教えて頂いたので、それも気になります。
それも含め、まだまだ勉強が必要そうです。
個人的には中国に10年以上住み、競馬ファンでもあるのに香港や中国の馬産業のことを知らないもんだな、と思います。
反省という訳でもないのですが、毎週の競馬を夢中では追いかけつつも、一歩引いて大きな流れの先を見やってみるのも楽しいなと思いました。
*
記事はここまでとなります。
アニュアルレポートについて、チェアマンとCEOのステートメント以降の「業績回顧」の部分などは、活躍した馬や騎手の写真がふんだんに使われていてパラパラ見るのだけでも楽しいので、おすすめです。


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