実録SM小説「閃き」(20)
予想外のことばに、一瞬だけ戸惑いました。彼女が自分を「いい子」といい切った。初めての事です。しかもいつもの「自分はいやらしい」も認めています。きょうだけで彼女はとてもいやらしく、とてもいい子でした。本来なら主は隷の尻拭いをする者です。きょうは私の不始末を彼女に尻拭いさせたような物じゃないか。これが「いい子」でなかったら何なんだ。私はソファから降りて彼女を抱きしめました。
「そうだよ……いい子だ……ほんっとにいい子だ……」
「……私……出過ぎた事を……いいましたか……」
「いや、きょうのお前は自分をいい子という権利がある。私がいうんだから間違いない。いい子に育ってくれたな……嬉しいよ」
「ありがとうございます……」
時計はまだ 20 時を過ぎたばかりですが、パズルのピースは「就寝」まで空白です。もう何も閃く必要はないし、閃いても体がついてこないでしょう。とにかく今日は密度が濃かった。私が射精2回、そのうち1回は年に一度やればお腹いっぱいの激しい物。彼女のオーガズムは、えーと、6回かな。肉体も精神もくたびれているでしょう。でも寝るには早過ぎます。
こんな時は「楽しく遊ぶ」に限ります。たとえば全身をフェザータッチすると、彼女はかわいらしい鳴き声で乳首もクリトリスも膨らませて愛液を溢れさせますが、門外不出の「ある事」をすると彼女は心のモードが切り替わります。直前まで悦んでいた愛撫がすべて「くすぐったい」になってしまうのです。
リードを引いてベッドに仰向けにさせて覆い被さりました。彼女は少し驚いたようでしたが、背中に両手を回してきます。舌を絡めながら彼女の左手を頭の上に上げさせ、私の左手で手首を掴んで固定させて金色の腋毛をさらさら逆撫ですると「んっ……んっ……」。さらに舌で舐め上げながら右手で乳房を揉むと「あっ……あっ……」と鳴き始めて乳首が硬くなってきました。ここからがおもしろい。顔を上げて薄開きの彼女の目を見ます。
その「ある事」をすると彼女は目を大きく見開いて、首を振りながら私が何もしていないのにもう笑い始めました。切り替え完了。左手は頭上で痛くないように固めているので、彼女は金色の腋毛を隠せません。さっきと同じようにさらさら撫でると「ちょっ……きゃっ……あははあっ!」「あれ、さっきと同じ事してるんだけどなあ」「さっ……っ……ちがっ……っ……」。片方の足を私の太腿で挟んでいるので、もう片方だけじたばた暴れています。
この遊びは実に楽しいのですが、必ず休憩を挟んでやる必要があります。人間は本当に笑いすぎると息を吸えなくなります。腋から乳房の横を通ってウエストまで撫でて、また腋に戻ってひと休み。また乳房の脇を通って……。「しっ、っ、さっ、っ、もっ、むっ、っ、りっっっっ、っ、」。こんなもんかな。これでもう彼女は今夜のうちに興奮モードにはならないでしょう。お腹が波打って体が持ち上げられます。
「はあ、はあ、はあ……しーなさん……ひどいです……」
「あれ? さっきまで、あっはんうっふんいってなかったっけ?」
「あれは『いつものしーなさん』だったからです……『わるいしーなさん』が出てきたら……はあ、はあ、もうどうしようも……はあ、はあ……」
「うりゃ」
「きゃっ! しーなっ、さん、っ、もっ、ゆる、っ、おねっ、っ、!」
あーおもしろかった。彼女が悶えながら笑い泣きする表情が何ともかわいらしく、毎回でもやりたいのですが、やりすぎると彼女は「いつ『わるいしーなさん』が出てくるか」警戒して、完全服従モードの片隅に疑心暗鬼が残ってしまいます。忘れた頃に、やる。会える頻度によりますが、年に2回位が限度でしょう。だからこの遊びをやらないまま関係が終わってしまった子もいます。
「よし、シャワーの準備しておいで」「はい」。ようやく攻撃(?)から解放された彼女は小走りで浴室に向かいました。酒が入る前にきょうのパズルを振り返って軽く整理します。密度が濃かったなあ。大の字からお尻を高く上げさせて陰毛を剃る。そのまま彼女がオーガズム2回。標準のフェラチオで私が1回。菱縄縛りをして外食、今後の資料にオナニーを撮影して彼女が1回。生中継の騎乗位で彼女が2回、ここで雌の獣を掘り出してしまった。彼女がオナニーをおねだりするように誘導して長いフェラチオで私が強烈な1回、そしてオナニーで彼女が獣に鎖を繋いで1回……。
「しーなさん、準備できました」「ほいよ」。整理整頓は後でゆっくりやるとして、きょうはふたりとも体のあちこちが唾液や愛液まみれです。首輪からリードを外し、さらに首輪を外しました。シャワーで首輪を外すのはこれで最後か。明日のシャワーでは濡れてもいいし、何より「最後の挨拶で首輪を外してやる」大切な儀式があります。
彼女とのシャワーは基本的に「私の体を彼女に洗わせる、気分によって少し遊ぶ、先に私が出て彼女は自分で洗う」。今回もまず彼女に洗わせます。ボディーソープを出した彼女の手が首筋から両手、両腋、腕、胸と這い回ります。背中だけは自分で充分に洗えないので、硬いスポンジでがしがし洗わせます。最初から「自分で舐めていいと思えるように洗いなさい」と躾けているので、足の指一本一本もていねいに洗います。
両足からお尻まで洗って、残るのは股間と男性器です。鼠蹊部を手が往復して、陰毛もしゃかしゃか洗ってきます。そして睾丸を包み込むように撫でながら洗い、男性器を先から根元に、先から根元に撫でます。カリの段の部分は指で輪を作って手首を何度も返し、頭の部分は指の腹と手のひらで。特に裏筋の窪んだ部分を指の腹で洗われると、まるで自分が洗っているような気持ちになります。この気持ちはとても大切で、本当に「彼女が私の体の一部になっている」事を実感できます。あれ、あまりに気持ちがいいので、男性器が少し大きくなってきました。
「〇〇」
「はい」
「少しだけ、おしゃぶりさせてあげるよ」
「え? でもしーなさん、きょうはもう2回……」
「別に何をしようって訳じゃない。少しお前の口の中にいたい。それにさっき意地悪で遊ばせてもらったから、ご褒美」
「ありがとうございます!」
「そのかわりお口に咥えるだけ。舌もなし。ふたりでいっしょに味わう」
「はい」
シャワーヘッドを持ってソープを洗い流した彼女は、ヘッドを脇に置いて男性器を根元の近くまで咥えました。「こっち見てごらん」。彼女が上目遣いで私を見つめてきます。冷静に考えればフェラチオは「相手に命を預ける行為」です。いくら非力な女性でも心から本気を出せば、骨のない男性器など食い千切られます。たとえ千切れなくても出血多量は免れないでしょう。つまりいま彼女はいつでも私を殺せる状態です。
それをしないのは、彼女にメリットがないだけではありません。いま彼女は心から悦んで、いや喜んでいます。目を見ればわかる。私の男性器を頬張る事で、彼女が「私」で満たされていく。頬を撫でてやると目を細めて嬉しがります。私も口の中の温かさが、まるでそこから彼女が私に入ってくる感覚になります。見つめ合ったままシャワーの音だけが浴室で聞こえてきます。「よし、これ位にしようか」。彼女は口を離してシャワーで男性器の唾液を洗い流しました。
「今度は私が洗ってやるよ」
「え……珍しいですね……」
「そうしたい気分なんだ。やらせてもらうよ」
「でもさっきの事があったから……素手ではちょっと……」
「大丈夫、スポンジ使うから。それなら平気でしょ」
「多分……はい、お願いします」
私が彼女を洗うのは久しぶりです。何度も舐めた首筋やうなじから始めて次第に下がっていきます。両腋もスポンジの強い刺激なら逆にくすぐったくなさそうです。忘れないうちにマーキングの重ね塗りもしました。血行がいい時のマーキングは効果が高い。もう何十回も重ねたキスマークはすでに大きさも濃さも乳輪ほどになっています。最低でも1週間は消える事はないでしょう。
乳房、お腹、背中、お尻、足と丁寧に洗います。姿だけ見るとまるで主と隷が逆転している様ですが、私は自分の大切な宝物を自分で磨いているのですから、何もおかしくはありません。足を開かせて、愛液で何度もびしょ濡れになった太腿の内側、鼠蹊部、尻たぶの下などを丹念に洗っていきます。
さすがに女性器はスポンジでは洗えないので彼女に任せますが、「自分でクリトリスの包皮を剥いてシャワーを当てる」は目の前でやらせました。強い刺激に何度も腰が引けましたが、浴室の壁を背にさせて腰の逃げ場をなくしました。いまはきついかもしれないけれど、できるようになってくれないと躾けが前に進みません。励ましてやってようやく何周かシャワーを当てられました。
「うなじまで洗ったから、少し髪が濡れたね。シャンプーしちゃう?」
「そうですね……ピンを外したのも外食の時だけだし、しーなさん、頭を洗ってもいいですか?」
「いいよ。私は先に上がって酒の支度をしておくから、急がなくていいよ」
「はい」
体をバスタオルで拭くと、昼に夜に使っていたバスタオルの残りが1枚しかありません。これから彼女が使うぶんはいいとして、明日はどうしよう。そこまでは想定していませんでした。洗濯機に入れた中から使えそうなやつを選ぶしかないか? 「なあ、バスタオルの残りが1枚なんだけど、どうしようか?」「押し入れの中にまだ何枚かあるんで、大丈夫です」「了解」。
酒の支度といってもテーブルは後でふたりで運ぶので、肴を冷蔵庫からキッチンに出しておくだけです。あ、クラムチャウダーが残ってたな。弱火にかけておきます。そのうち浴室からドライヤーの音が聞こえてきました。時計はまだ 21 時前。居酒屋の2時間飲み放題だと思えば今夜はまだまだです。
(続く)
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