音楽の不思議 天使先輩とのモーニングルーティン
僕には特にお世話になっている先輩がいる。
それが天使先輩だ。
工場上がりで、パソコンなんてニュースを見るかYouTubeを見るくらいでしか使ったことがなかった僕に、色々なことを親切に教えてくれた。
なぜか僕を可愛がってくれて、よく飲みに連れて行ってくれたし、家にもよく泊めてくれた。
そんな天使先輩との思い出で、今でもたまに思い出す朝の光景がある。
僕はブラックミュージックが好きだった。
天使先輩はパンクが好きだった。
なのに、朝になると浜崎あゆみの「Who…」を迷わずかける先輩がいる。
2人で目線を合わせて笑顔になる。
寝起きのまま身支度を整えながら、2人で熱唱する。
2人ともアユのファンだったわけでもない。
なぜかこのルーティンが始まってからは毎回こうしていた。
ちなみに当時の僕と天使先輩は、恋愛面ではだいたい同じくらいポンコツだった。
今思えば、それぞれ別の女の子に振り回された過去を思い歌っていたのかもしれない。
確かめたことはないけれど僕はそうやって気持ちを載せていた。
音楽には不思議な力がある。
曲を聴くと思い出すのは、大切な恋人との思い出だったり、人生の転機だったりすることもある。
でも僕にとって「Who…」は違う。
あの曲を聴くと、天使先輩と2人で身支度をしながら熱唱していた朝を思い出す。
不思議なことに、その時泊まった先輩の家で使っていたヒステリックグラマーのシャンプーの匂いまで思い出す。
朝の空気や部屋の雰囲気は曖昧なのに、その匂いだけはなぜか今でも残っている。
「Who…」を聴くと、あの頃の朝を思い返して少しはにかむ僕がいる。
何気ない日常で結構好きな時間だった。
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