見出し画像

月2回の恋人たち

第4章 - オンライン恋愛相談

土曜日の午後3時。ゆめは部屋のベッドに座って、スマホの画面を見つめていた。

由香からLINEが来ていた。

『久しぶりにビデオ通話しない?最近どう?健太くんとうまくいってる?』

由香との最後の連絡は2週間前だった。結婚準備で忙しくなって、連絡の頻度が減っていた。でも今日は土曜日で、由香も時間があるようだった。

『今大丈夫だよ。色々話したいことある』

『やっぱり!30分後にビデオ通話する?』

『うん、お疲れさま』

ゆめは部屋を片付けた。といっても、投資関係の資料を机に整理するくらいだった。由香にはゲーミングチェアとモニターが映ることになるけれど、もう慣れていた。

3時30分。由香からビデオ通話の着信。

「ゆめちゃん!久しぶり」

画面に由香の顔が映った。前より少し大人っぽくなった気がした。結婚を控えているからだろうか。

「お疲れさま。元気そうだね」

「ありがとう。結婚準備でバタバタしてるけど、楽しいよ。それより、ゆめちゃんの方こそ。なんか顔つき変わった?」

「え、そう?」

「うん。なんていうか、大人っぽくなった。健太くんと何かあった?」

由香の直感は相変わらず鋭かった。大学時代から、ゆめの変化にすぐ気づく。

「実は、色々あって」

「やっぱり!聞かせて聞かせて」

由香が身を乗り出した。結婚準備中でも、友達の恋愛話には興味を持ってくれる。

「あのね」

ゆめは少し迷ったけれど、正直に話すことにした。

「先々週、健太と初めて、その、した」

「ついに!どうだった?」

由香の反応は素直だった。驚きもあったけれど、応援する気持ちが強かった。

「良かった。健太が優しくて、ちゃんと確認しながらしてくれて」

「そうそう、それ大事。痛くなかった?」

「最初は少し。でも思ってたより大丈夫だった」

「良かった。で、その後どうなの?」

ゆめは先週の混乱について話した。次の日の戸惑い、9時間の連絡断絶、MELLOWでの話し合い。

「あー、わかるわかる。私も最初はそうだった」

由香が頷いた。

「その後の関係性って、急に分からなくなるよね。普通に接していいのか、特別扱いした方がいいのか」

「そうなの!由香も経験した?」

「もちろん。最初の彼氏の時、すごく悩んだ。でも結局、自然が一番だよ」

「健太もそう言ってた。俺たちのペースでって」

「いい彼氏じゃん。押し付けがましくなくて」

由香の言葉で、ゆめは改めて健太の良さを実感した。

「でもさ」

ゆめが少し声を落とした。

「頻度とか、どうなんだろう」

「頻度?」

「みんなどのくらいしてるのかな、って」

由香が少し考えてから答えた。

「人それぞれだと思うよ。私たちは最初の頃、月に2回くらいかな。今は結婚前だから控えめにしてるけど」

「月2回くらいが普通?」

「普通って何よ」

由香が笑った。

「ゆめちゃんらしくない。投資でも自分のペース大事にしてるじゃん。恋愛も同じでしょ」

確かにそうだった。投資では他人と比較しない。自分の判断、自分のペース、自分の責任。恋愛も同じはずだった。

「そうだね。変に意識しすぎてた」

「でも気になる気持ちもわかる。私もネットで調べたりしたもん」

「調べた?」

「うん。『カップル 頻度 平均』とか」

二人で笑った。やっぱり、みんな同じようなことを考えているんだと思った。

「でも結局、数字じゃないんだよね」

由香が続けた。

「大事なのは、お互いが満足してるかどうか。無理してても続かないし、我慢しててもよくない」

「確かに」

「ゆめちゃんは今、どう感じてる?」

「今のところは、自然な感じ。健太も無理強いしないし、私も嫌な気持ちになったことはない」

「それが一番大事だよ。あと、ちゃんとコミュニケーション取れてるのも良い」

ゆめは安心した。由香の経験談を聞いて、自分たちの関係が特別変じゃないことが分かった。

「でもさ」

今度は由香の方から話し始めた。

「実際のところ、どうだった?気持ち良かった?」

「由香!」

「何よ、女同士じゃん。気になるでしょ」

由香の直接的な質問に、ゆめは顔が熱くなった。でも、確かに聞いてみたいことでもあった。

「正直に言うと」

ゆめは小さな声で答えた。

「最初はよくわからなかった。でも、健太が優しくて、最後の方は気持ち良かった」

「そうそう、最初はそんなもん。慣れだよ、慣れ」

「由香は最初からそうだったの?」

「まさか。私なんて、最初は痛いだけで、何が楽しいのかさっぱりだった」

「そうなんだ」

「でも回数重ねると、だんだんわかってくる。相手のことも、自分のことも」

由香の率直さが、ゆめを楽にした。こういう話は、友達にしか聞けない。

「あと大事なのは」

由香が続けた。

「嫌な時は嫌って言うこと。我慢しちゃダメ」

「うん」

「ゆめちゃんは真面目だから、相手に合わせちゃいそうで心配」

確かに、ゆめはそういう傾向があった。健太に対しても、つい気を遣いすぎてしまう。

「気をつける」

「健太くんは大丈夫そうだけど、念のため」

「ありがとう」

4時15分。話題が少し変わった。

「そういえば、投資の方はどう?」

「順調。今月は過去最高かも」

「すごいじゃん!いくらになったの?」

「150万円超えた」

「えー!私の貯金より多い」

由香が驚いた顔をした。

「でも、恋愛と両立大変でしょ?」

「最初はそう思ってたけど、意外と大丈夫。健太が理解してくれるから」

「いい彼氏だなあ。私なんて、彼に投資のこと話しても、『危なくない?』って心配されるだけ」

「健太も最初はそうだった。でも、成果を見て理解してくれた」

「羨ましい。お互いの夢を応援し合えるって素敵」

由香の言葉で、ゆめは改めて健太との関係の良さを実感した。

「由香の結婚準備はどう?」

「忙しいけど楽しい。でも正直、お金のこと考えると不安もある」

「そうなんだ」

「式とか新婚旅行とか、お金かかるし。ゆめちゃんみたいに投資で稼げればいいのに」

「今からでも遅くないよ。少額から始めてみたら?」

「うーん、でも今は結婚準備で手一杯」

結婚と投資、どちらも人生の大きな選択。由香とゆめ、それぞれ違う道を歩んでいる。

「でも、ゆめちゃんも将来のこと考えてる?健太くんとの」

由香の質問に、ゆめは少し考えた。

「まだそこまでは。でも、嫌じゃない未来として想像はしてる」

「そうか。まあ、ゆめちゃんはまだ23だし、焦ることないよね」

「由香だって24でしょ?」

「でも私は投資とかやってないから、早めに安定したいのかも」

人それぞれの人生設計。正解はない。

4時45分。通話が終わりに近づいていた。

「今日はありがとう。すっきりした」

「こちらこそ。また何かあったら連絡して」

「うん。結婚準備頑張って」

「ありがとう。健太くんによろしく」

「伝える」

通話を切った後、ゆめは一人で考えていた。

由香との話で、いくつかのことがクリアになった。

まず、セックスについて。自分たちのペースでいいこと、最初はみんな戸惑うこと、コミュニケーションが一番大事なこと。

次に、頻度について。他人と比較する意味がないこと、お互いの気持ちが大事なこと。

そして、将来について。まだ具体的に考える必要はないけれど、健太との未来を想像するのは自然なことだということ。

5時。ゆめはスマホを手に取って、健太にメッセージを送った。

『お疲れさま。由香とビデオ通話してた。色々話して、私たちの関係について改めて良いなと思った』

すぐに返事が来た。

『お疲れさま。由香さんに何か相談したの?』

『恋愛のこと、セックスのこと。女同士だから話せることもあって』

『そっか。俺も男友達に相談できればいいんだけど、なかなか』

『私たちは私たちのペースでいいって、確認できた』

『良かった。俺もそう思う』

『今度会った時、また話そう』

『うん。楽しみにしてる』

6時。夕食を作りながら、ゆめは今日の収穫について考えていた。

由香との話で、自分たちの関係に自信が持てた。他の人と比較する必要はない。自分たちなりの関係を築いていけばいい。

そして、セックスについても、もう少しリラックスして考えられるようになった。完璧である必要はない。お互いを思いやりながら、少しずつ慣れていけばいい。

投資も恋愛も、結局は同じだった。他人の真似をするんじゃなくて、自分で判断して、自分で責任を取る。

そういう生き方が、ゆめには合っていた。

7時。由香からLINEが来た。

『今日はありがとう。ゆめちゃんと健太くんがうまくいってて嬉しい。お互い頑張ろうね』

『こちらこそ、ありがとう。結婚式楽しみにしてる』

友達の存在は大切だと思った。恋人とは違う視点で、客観的にアドバイスしてくれる。

でも最終的には、自分で決める。自分の人生だから。

8時。ベッドに入る前に、今日という日を振り返った。

由香との話で、たくさんのことが整理できた。恋愛について、セックスについて、将来について。

そして何より、健太との関係に自信が持てた。

無理をしない。比較をしない。お互いを大切にする。

そういう関係を続けていきたいと思った。

明日はまた新しい一日。投資も恋愛も、自分らしく。

いいなと思ったら応援しよう!

SKY 応援いただけたら嬉しいです。