月2回の恋人たち
第7章 - 親への報告と将来設計
水曜日の夕方6時。ゆめは実家のリビングで、母親と向かい合って座っていた。
「ゆめちゃん、最近なんか表情が明るいわね」
母親がお茶を淹れながら言った。
「そうかな」
「うん。投資の調子が良いからかしら?」
ゆめは少し迷ったけれど、今日は話すつもりで帰ってきていた。健太との関係も1年近くになるし、そろそろ両親に話したいと思っていた。
「それもあるけど、実は他にも理由があって」
「何?」
母親が興味深そうに聞いた。
「彼氏ができたの」
母親の表情が明るくなった。
「あら!それはおめでとう。どんな人?」
ゆめは健太について話し始めた。27歳でカフェの店長をしていること、将来は独立を目指していること、投資のことを理解してくれること。
「真面目そうな人ね。写真とか見せてもらえる?」
ゆめはスマホで、江ノ島で撮った後ろ姿の写真を見せた。
「素敵じゃない。いつから付き合ってるの?」
「もうすぐ1年になるかな」
「1年も!なんで今まで言わなかったの?」
「なんとなく、まだ様子見したくて」
母親が少し心配そうな顔をした。
「様子見って、何か問題でもあるの?」
「問題じゃないけど、価値観の違いとかあるから」
ゆめは先週のSNS投稿の件について、軽く説明した。
「でも、ちゃんと話し合って解決できた」
「それは良かった。お互いを理解し合うのが大事よね」
母親の反応は、思っていたより好意的だった。
「お父さんにも話した方がいい?」
「そうね。でも、お父さんは心配性だから、色々聞くかもしれないわよ」
7時。父親が仕事から帰ってきた。
夕食を食べながら、ゆめは改めて健太のことを話した。
「カフェの店長か。安定してるのか?」
父親の最初の質問は、やはり経済的なことだった。
「一応、正社員だよ。でも将来は独立したいって言ってる」
「独立?リスクは大丈夫なのか?」
「ちゃんと計画立ててるみたい。今も開業資金貯めてるし」
父親が少し安心したような顔をした。
「ゆめの投資のことは、どう思ってるんだ?」
「最初は心配してたけど、今は応援してくれてる」
「そうか。理解のある人なら良いが」
父親なりに、健太を評価しようとしているのがわかった。
「今度、家に連れてくるか?」
「え、もう?」
ゆめは少し驚いた。もう少し先のことだと思っていた。
「いや、急がなくてもいいが。お前が良いと思う時でいい」
「ありがとう」
8時。両親と話し終えて、ゆめは自分の部屋に戻った。
思っていたより、スムーズだった。両親とも、健太のことを受け入れてくれそうだった。
スマホを取って、健太にメッセージを送った。
『お疲れさま。今日、両親に健太のこと話したよ』
すぐに返事が来た。
『お疲れさま!どうだった?』
『意外と好反応。今度家に連れてきてって言われた』
『え、もう?大丈夫かな、俺』
『大丈夫だよ。でも急がなくていいって』
『ホッとした。でも、いつかはちゃんと挨拶したいな』
健太の真面目さが伝わってきた。
『私の両親も、健太なら大丈夫だと思う』
『ありがとう。俺も、両親に話そうかな』
『健太の実家って、どこだっけ?』
『群馬。車で2時間くらい』
『遠いね』
『たまに帰ってるよ。今度帰る時、ゆめのこと話してみる』
9時。健太との電話で、将来のことについて話し合った。
「両親に話したら、なんか現実味が出てきた」
ゆめが言った。
「どういう意味?」
「私たちの関係が、ちゃんとした恋愛なんだなって」
「それまでは、ちゃんとしてないと思ってたの?」
「そうじゃないけど、まだ学生の延長みたいな感覚もあって」
健太が笑った。
「確かに。でも俺たちももう大人だし、将来のこと考えてもいい年齢だよね」
「将来かあ」
ゆめは少し考えた。
「健太は、どんな将来を想像してる?」
「うーん。カフェを開いて、安定したら結婚して、子供もできたらいいなって」
健太の描く将来は、具体的だった。
「ゆめは?」
「私は、まだはっきりしないかな。投資で成功して、経済的に自立して、でもその先はよくわからない」
「結婚とか、考えない?」
「考えないわけじゃないけど、まだ実感がわかない」
「そっか」
健太の声に、少し寂しそうなトーンがあった。
「でも、健太との未来は想像するよ。結婚とかじゃなくても、一緒にいる未来」
「それで十分。俺も急いでるわけじゃないから」
10時。電話を切った後、ゆめは将来について考えていた。
健太は結婚や家庭に対して、比較的伝統的な考えを持っている。それは悪いことじゃないし、むしろ安心できる部分もある。
でもゆめには、まだそこまで具体的なビジョンがない。投資で成功したい、経済的に自立したい、そういう気持ちの方が強い。
この違いは、問題になるだろうか。
でも今は、まだ23歳。急いで決める必要はない。健太も「急いでいない」と言ってくれている。
お互いのペースで、お互いの将来を探していけばいい。
木曜日の午後3時。取引を終えた後、ゆめは由香にビデオ通話をかけた。
「ゆめちゃん!どうしたの?」
「昨日、両親に健太のこと話したの」
「ついに!どうだった?」
「思ったより好反応だった。今度家に連れてきてって」
「良かったじゃん。健太くんの反応は?」
「緊張してたけど、嬉しそうだった」
由香が微笑んだ。
「順調じゃん。で、将来の話とかもした?」
「少しだけ。健太は結婚願望あるけど、私はまだよくわからない」
「そうなんだ。でも、ゆめちゃんはまだ23だし、焦ることないよ」
「そうかな」
「私結婚決めたの23だけど、人それぞれのタイミングがあるよ」
由香の言葉で、ゆめは少し安心した。
「でも、価値観の違いが心配になることもある」
「どんな?」
「健太は割と伝統的な家庭観があるんだけど、私は投資の仕事続けたいし」
「それは最初から話し合った方がいいかも」
「そうだね」
「でも、今の時代の男性は、働く女性に理解ある人多いよ。健太くんも大丈夫だと思う」
3時30分。由香との通話を終えた後、ゆめは健太にメッセージを送った。
『お疲れさま。今度時間ある時に、将来のこととか詳しく話し合わない?』
『いいね。俺も色々聞きたいことあるし』
『今度のデートで話そう』
『楽しみにしてる』
土曜日の午後2時。カフェで健太と向き合って座っていた。
「将来の話」と言っても、何から話せばいいのかわからなくて、最初は少しぎこちなかった。
「えっと、まず聞きたいんだけど」
ゆめが口を開いた。
「健太は、結婚したら女性に働いてほしいと思う?」
「もちろん。ゆめが働きたいなら、絶対に働いてほしい」
即答だった。
「投資の仕事も?」
「特に投資は続けてほしい。ゆめの才能だし、俺にはできないことだから」
ゆめは安堵した。
「良かった。健太がもし、専業主婦になってほしいとか言ったらどうしようかと思って」
「そんなこと言うわけない。俺の方こそ、ゆめに養ってもらうかも」
健太が笑った。
「でも本当に、投資の才能は大切にしてほしい。俺のカフェより、ゆめの投資の方が将来性あるし」
「そんなことない。健太のカフェも素敵だと思うよ」
「ありがとう。でも現実的に考えて、ゆめの稼ぎの方が多いでしょ?」
確かに、今のゆめの月収は健太の倍以上だった。
「でも、お金だけじゃないよね。健太のカフェは、人を幸せにする仕事だと思う」
「そう言ってもらえると嬉しい」
3時。話題が結婚観に移った。
「ゆめは、何歳くらいで結婚したいとか考えてる?」
「うーん、まだよくわからない。30歳までには、とか思うけど」
「俺も、30歳までにはしたいかな。カフェも軌道に乗せて、安定したら」
「そっか。でも、あと3年で軌道に乗るかな?」
「頑張ればいけると思う。資金もあと190万円貯めれば、開業できるし」
健太の計画は具体的だった。
「子供とかは、どう思う?」
健太が少し恥ずかしそうに聞いた。
「欲しいとは思うけど、まだ実感がわかない」
「俺も。でも、いつかは欲しいかな」
「そうだね。でも、投資の仕事も続けたいから、バランスが心配」
「大丈夫だよ。俺も手伝うし、今の時代は色々な働き方があるし」
健太の理解ある態度に、ゆめは感謝した。
4時。将来の住まいについて話し合った。
「結婚したら、どこに住む?」
「どこでもいいかな。ゆめの仕事は場所選ばないし、俺のカフェも場所次第だし」
「実家の近くとか、考えない?」
「たまに帰れればいいかな。でも、二人の新しい生活を始めたいっていう気持ちもある」
ゆめも同感だった。両親は大切だけど、独立した関係を築きたい。
「同棲とかは、どう思う?」
「いいと思う。でも、ゆめの両親がどう思うかな」
「最近の両親は、割と理解あると思うよ。特に、結婚前提なら」
「結婚前提か」
健太がそう言った時、ゆめの胸がドキッとした。
結婚前提。まだそこまで具体的に考えたことはなかったけれど、健太との将来を想像するのは自然になっていた。
5時。カフェを出て、公園を歩きながら話し続けた。
「今日話してみて、思ったより価値観が近いんだなって思った」
ゆめが言った。
「俺も。特に、お互いの仕事を尊重し合えるのが嬉しい」
「そうだね。お互いの夢を応援し合える関係でいたい」
「絶対にそうしよう」
健太が手を握ってきた。自然な動作だった。
「でも、まだ全部を決める必要はないよね」
「うん。でも、方向性が見えたのは良かった」
「そうだね。お互いのペースで、少しずつ」
いつもの結論に戻ってきた。
6時。健太と別れて家に帰る途中、ゆめは今日の会話を振り返っていた。
将来について話し合えて、安心した。健太の価値観は想像以上に理解があって、自分の仕事も尊重してくれそうだった。
まだ具体的なタイムラインは決まっていないけれど、方向性は見えた。お互いの夢を追いながら、一緒に歩んでいく未来。
それは、ゆめにとって理想的な関係だった。
7時。家に着いて、両親に今日のことを簡単に報告した。
「将来のこと、色々話し合えたよ」
「どうだった?」
母親が聞いた。
「健太は、私の投資の仕事も続けてほしいって言ってくれた」
「それは良かった。理解のある人で良かったわね」
「うん。でも、まだ具体的には決めてない。お互いのペースで進めていく」
「それが一番よ。急ぐ必要はないから」
両親の理解も得られて、ゆめは安心した。
8時。ベッドに入る前に、健太にメッセージを送った。
『今日はありがとう。将来のこと話し合えて良かった。お互いの夢を応援し合える関係でいようね』
『こちらこそ、ありがとう。ゆめの理解があって、俺も安心した。これからもよろしく』
『こちらこそ、よろしく』
今日という日で、ゆめたちの関係はまた一歩進んだ気がした。
将来への不安が少し減って、代わりに希望が増えた。
お互いを理解し合い、お互いを尊重し合い、お互いの夢を応援し合う。
そんな関係を続けていけば、きっと素敵な未来が待っているはず。
明日からも、投資と恋愛、両方を大切にしていこう。
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