なぜ売れない?営業マンが無意識にやっているたった1つの心理的ミス
これまでのコラムで取り上げてきたダニング=クルーガー効果や確証バイアスなどの心理学的知見は、対人コミュニケーションの場で大いに役立つ。なかでも営業の世界は、いわば人間の心理を駆使する戦場だ。その場面で生き残るためには、心理学が教えてくれる「人間の心の動き」をしっかりと理解し、実践的に応用していく必要がある。
営業でまず大切なのは、自分自身を客観的に把握することだ。多くの営業マンは「自分は話し上手だから大丈夫」「商品知識はバッチリだから問題ない」と考えがちだが、実はそれが落とし穴になることがある。相手からすれば、いくら理路整然と話されても、一方的な押し付けに感じれば興味は失われる。自信過剰になっているかもしれない自分の姿を疑ってみるのは、橘玲流の鋭い視点を養う第一歩だ。
次に、「相手の心理」を理解する。
たとえば営業トークの組み立て方。商品の魅力をアピールすることはもちろん重要だが、ただ特徴や利点を列挙するだけでは人は動かない。人間は、損失を避けるためには積極的に行動しやすいが、得をする場面ではあまりアクションを起こさないという、損失回避のバイアスがある。そこで「この商品を導入しないと、どれだけの機会を失うのか」「今導入すると、今後どれだけコストが削減されるか」というように、相手が「導入しないリスク」を明確にイメージできるように訴求するのも効果的だ。
また、「返報性の原理」を活用する手もある。試供品を渡したり、先に相手の悩みをじっくりヒアリングしてあげたりすると、人は「ここまでやってくれるなら、何かお返しがしたい」と感じる。
営業で重要なのは、相手に「何かを与える」こと。情報でも、親身な対応でも構わない。そこから生まれる信頼関係こそが長期的なビジネスにつながるのだ。
さらに、営業の現場で自分を見失わないために、「客観的なフィードバック」を得る習慣をつけよう。先輩や上司、さらには他部署の人からの厳しい評価をわざわざ聞くのは勇気がいるが、それが自分の営業手法を磨く秘訣でもある。あなたが思っている以上に、あなたのプレゼンや態度に問題があるかもしれないし、逆にあなたが気づいていない長所を発掘できるかもしれない。
営業の現場は、心理学の実験室と言っても過言ではない。自分の思い込みを疑い、相手の心理的特性を利用し、適切なフィードバックを得ながら改善を重ねる。
まさに「冷静な視点を保ち、データや事実に裏打ちされた仮説検証を行う」姿勢こそが、勝ち続ける営業マンの武器となるはずだ。
