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仕事がコモディティ化する日

Geminiなどの生成AIを使った業務改善を考える 第1回

 巷では「AIによる業務改善」が、まるで魔法の杖であるかのように語られている。曰く、退屈な作業から解放され、人間はより創造的な仕事に集中できるようになる……と。
 だが、そんなものはセンチメンタルな幻想にすぎない。

 我々が直面しているのは、生産性向上などという生易しい話ではない。
 これは、知的労働そのものの価値を根底から揺るがす「パラダイムシフト」なのだ。そして、この変化の本質を理解できない者は、例外なく淘汰される。残酷だが、それが資本主義のルールだ。

 それは、情報収集という「単純労働」の終焉という形でやってきた。

 かつて、情報収集能力はビジネスにおける重要なスキルだった。特定のテーマについて、どれだけ早く、正確に、そして網羅的に情報を集められるか。その能力によって、個人の評価や報酬は大きく左右された。だが、その時代は終わった。

 たとえば、あなたが「サステナブル素材に関する世界の最新規制動向と、主要アパレルメーカーの対応」について調査を命じられたとしよう。

旧来の働き方(そして、おそらくは現在のあなたの働き方)

  1. 複数の検索エンジンに、思いつく限りのキーワードを打ち込む。「サステナブル素材 規制 欧州」「リサイクルポリエステル アパレル 動向」…

  2. 表示された無数のニュースサイト、調査レポート、企業のプレスリリースに一つひとつ目を通す。その多くは広告か、内容の薄い焼き直し記事だ。

  3. 有用そうな情報をブックマークし、WordやExcelにコピー&ペーストを繰り返す。

  4. 半日から数日を費やし、集めた情報の断片を整理・要約し、ようやくレポートの骨子が見えてくる。

これはもはや「知的労働」ではない。膨大な情報の中から、当たりを探すだけの「単純労働」だ。そして、単純労働の価値がゼロに収斂していくことは、歴史が証明している。

Geminiを「外部脳」として使う働き方
 これを、Geminiを搭載したGoogle検索(SGE: Search Generative Experience)や、より高度な対話AIに任せるとどうなるか。

 あなたはAIにこう指示するだけだ。

サステナブル素材に関する、特に欧州と北米における最新の規制動向をリストアップして。それぞれの規制の概要、施行時期、対象となる企業や製品を明確に。さらに、ZARA、H&M、ユニクロの3社が、これらの規制にどう対応しているか、具体的なプレスリリースやIR情報を基に要約し、比較テーブルを作成して

 数分後、あなたの手元には、人間が半日かけてもたどり着けないであろう精度と網羅性を持った「一次情報」が整理された形で提示される。

 これが意味するのは、情報収集というスキルの「コモディティ化」差が生まれない一般化 だ。もはや、Google検索を丹念に使いこなす能力に、市場価値はない。AIを使いこなすリテラシーを持つ者にとって、それは水道の蛇口をひねるように、当たり前に手に入るインフラの一部と化したのだ。

 その中で「問い」を立てる能力が、価値を持つようになった。

 では、我々の仕事はすべてAIに奪われるのか?
 短絡的にそう結論づけるのは、思考停止に他ならない。

 重要なのは、AIが提示した「答え」の先にある。
 AIは、あくまで我々の指示、すなわち「問い」に対して最適化された結果を返す「超」高性能な道具だ。与えられたタスクを完璧にこなすが、自ら問題を発見し、新たな価値を創造することはない。

 先の例で言えば、AIが作成した比較テーブルを前にして、あなたは何を考えるか。

  • 「規制対応で最も先行しているのはどの企業か? その要因は何か?」

  • 「規制の抜け穴、あるいはビジネスチャンスとなる領域はどこか?」

  • 「我が社が今から参入する場合、どのような戦略的優位性を築けるか?」

 このような、より高次の「問い」を立て、AIをさらに深掘りさせるためのツールとして使い、最終的な意思決定を下すこと。あるいは、AIには生成できない、独自の視点に基づいた仮説を構築すること。それこそが、これからの時代に唯一価値を持つ「知的労働」の本質だ。

 Geminiのような生成AIは、我々の知性を拡張する「外部脳」であると同時に、思考を停止させる「毒」にもなりうる。単に答えを求めるだけの者は、AIに使われるだけの「デジタル・プロレタリアート」へと転落していくだろう。

 「業務改善」という甘美な言葉の裏で、残酷なまでの知性の選別は、すでに始まっている。あなたは、AIに問いを立てる側か、それともAIに答えを与えられるだけなのか。その立ち位置が、数年後のあなたの市場価値を決定づけることになるのだ。

#AIとやってみた

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