ABA療育はなぜ「自宅×1対1」なのか?効果の理由と費用の壁
前回の記事では、
なぜ自閉症支援において「ABA療育の専門エージェンシー」という存在が重要なのか
について書きました。
▶︎ 前回の記事
ABA療育は、
単なる「関わり」や「見守り」ではなく、
行動改善を目的とした、専門性の高い介入であること。
そしてその介入は、
個人の善意や努力ではなく、
アセスメント
計画
実行
評価
を担う、プロフェッショナルな組織(エージェンシー)によって
支えられている、という前提を共有しました。
しかし次に、多くの親が必ずぶつかる問いがあります。
「そのABA療育は、どこで、どのような形で行うのが望ましいのか?」
療育施設に通うべきなのか。
集団療育でも十分なのか。
それとも、家庭で行う方がいいのか。
この問いに対して、スーザン先生が最初に示した答えは、とても明確なものでした。
「ABA療育は、本来、1対1で、自宅で行うことを前提としている」
今回の記事では、なぜABA療育では、「1対1」「自宅」という形が基本とされているのか。
そして、その理想と、現実(特に日本の制度や費用面)との間にあるギャップを、一人の親の視点から整理していきます。
※この記事は、医療的・専門的な助言を目的としたものではありません。
本記事は、自閉症の疑いを感じた子を育てる一人の親として、
アメリカで専門家から教わった考え方と、実際の療育選択の経験をもとに整理したものです。療育の選択にあたっては、必ず医療・教育の専門家にご相談ください。
1. 結論|なぜABA療育は「1対1の自宅療育」が基本なのか
結論からお伝えすると、ABA療育では、
1対1で、かつ自宅という環境で行うことが最も効果的
だと考えられています。
まず「自宅」で行う理由は、
子どもにとって 自然で安心できる環境の中で療育を行うことが、
成果につながりやすいからです。
自宅であれば、
その子にとって安心できる環境を、
療育施設や教室に通うよりも、
はるかに作りやすくなります。
そして「1対1」が基本である理由は、
ABA療育では、子ども一人ひとりの行動を細かく観察し、
どこでつまずいているのか
どのスキルが不足しているのか
何がその子どものモチベーションになるのか
を正しく特定したうえで、
個別に介入計画を立てていく必要があるからです。
このプロセスは、複数の子どもを同時に見る集団療育では、
どうしても精度が落ちてしまいます。
1対1であれば、
子どもの小さな変化に気づける
課題をその場で微調整できる
成功体験を逃さずに強化できる
こうした積み重ねが、行動改善につながっていきます。
【体験談】トイレトレーニングで実感した「環境設定」の力
これは、そらの家の体験ですが、
レイは長い間オムツが外れず、
トイレトレーニングがなかなか進みませんでした。
ABA療育の中でトイレトレーニングを行った際、
最も大きく影響したのは、
指導内容そのもの以上に、
「どこで行うか」という環境の選び方でした。
どのトイレを使うか
誰が、どのように声をかけるか
どのタイミングで促すか
これらをセラピストが丁寧にアセスメントし、
レイにとって最も安定する条件を整えた結果、
約半年でオムツを外すことができました。
この経験から、療育の効果は
「何を教えるか」以上に、
「どんな環境で教えるか」に左右される
ということを強く実感しました。
(トイレトレーニングの詳細は、後日別記事で詳しく書く予定です)
2. 理想と現実|療育のお金事情のリアル
理論的には、
自宅で1対1のABA療育を行ってくれる
専門エージェンシーを探す
という選択が最も効果的です。
しかし、日本では
この選択は簡単ではありません。
最大の理由は、
「費用(コスト)」です。
ABA療育にかかる費用の現実
1対1の療育では、
セラピスト一人の時間を
一人の子どもに使うため、
集団療育よりも人件費がかかります。
日本では多くの場合、
「受給者証*」という制度を使って療育を受けますが、
この制度は、
高コストな1対1療育
自宅訪問型の療育
を前提としていません。
その結果、
自宅での1対1 ABA療育は、
制度上ほぼ選択肢にならない
という現実があります。
*受給者証:専門家の診断等をもとに療育の必要性が認められた場合に発行され、記載された支給時間の範囲内で療育費の公費負担が受けられる仕組み(自治体により運用は異なります)。
アメリカでもすべてが理想的なわけではない
アメリカでは、
自宅での1対1 ABA療育を
制度上、無料(保険適用)で受けることが可能です。
しかし、すべての家庭が
十分な療育を受けられているわけではありません。
例えば、カリフォルニア州では、ロヴァース法の研究結果
(2〜4歳までにABA療育を開始すると高い効果が見られる)
を背景に、州から適用される療育時間が年齢などを加味し決定されます。
そのため、
2歳前後では多くの時間が認められる一方
4〜5歳になると、本来はもっと療育が必要でも時間を削られてしまう
といったことが起こります。
アメリカで自費で療育を受ける場合、
日本とは桁違いの費用がかかるため、
親が裁判を起こし、十分な療育時間を確保するために、
州政府と戦うケースも少なくありません。
それでも、制度の外で療育を選ぶ日本の親たち
それでも、我が子の成長には代えられないと考え、
受給者証の適用外で、ABA療育を選択するご両親もいます。
その費用は、
子どもの状況にもよりますが、
年間200〜500万円程度に及ぶことが多いのが現実です。
すべての家庭が選べる選択肢ではありませんし、
仮に費用を捻出できたとしても、
十分なスキルと経験を持つセラピストが
お住まいの地域にいないという問題もあります。
3. 現実的な選択肢としての「ペアレントトレーニング」とは
それでは、
こうした適切なセラピーを受けることができないご家庭は、
一体どうしたら良いのでしょうか?
実際、私も、スーザン先生からアメリカの療育システムの現実を聞いた時、
日本には同じ前提がないと知り、正直、大きな絶望を感じました。
そのときスーザン先生が教えてくれたのが、
「ペアレントトレーニング」という選択肢でした。
ABA療育自体は、実はそれほど複雑で、難しいものではありません。
シンプルなルールに沿って実行できるため、コツを掴めば 親が療育を担うことも十分可能です。
そのため最近では、
エージェントがオンラインで子どものアセスメントを行い、
療育プランを作成し、
親がセラピーを実践する、
といったペアレントトレーニングという形の
サービスを提供するエージェンシーも増えてきました。
ペアレントトレーニングで最も注意すべきこと
ただし、ペアレントトレーニングを選ぶ場合、最も重要なのは、前回の記事でも書きましたが、エージェンシーの「アセスメント力」です。
▶︎ 詳しくはこちら(前回記事)
ABA療育において、アセスメントをもとに作られるプランこそが
最も難しく、最も専門性が求められる部分だからです。
(療育施設/エージェンシーの選び方のポイントも、今後詳しく書いていきます)
おわりに|最終的に子どもを支え続けるのは誰か
残念ながら、日本では理想とされる療育を
望む人たち全てが、
必ず受けられる状況にある
とは言い難いのが現状です。
しかし、何よりも大事なことは、
最終的にはセラピストから
卒業しなければならない
という現実です。
どこかの段階で、
親自身がABA療育を理解し、
子どもに関われるようになる必要があります。
子どもが大人になるまで、
最後まで見守るのは、
セラピストではなく、親だからです。
スーザン先生が教えてくれた
10の前提の最後には、
こうありました。
「そのチームをまとめ、
方向を決めていく役割を担うのは、家族であるべきだ」
この考え方は、
まさにABA療育においても同じだと感じています。
今後も、
同じように迷っている方が
自分なりの判断をするための参考材料として、
そらの家が学んだ療育の情報を共有していきたいと思います。
次回は、「療育と同時に、保育園・幼稚園に通う」について
書いていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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