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なぜ「早期発見・早期介入」が重要なのか──自閉症支援における基本原則

前回の記事では、
自閉症支援において ABA(応用行動分析)が、行動改善を目的とした有効な介入方法として位置づけられている
という前提について、ABAの基本的な考え方を整理しました。

では、そのABA療育は
「いつ始めるのがよいのでしょうか?」

アメリカで専門家から最初に教わったのは、
自閉症支援においては

「早期発見・早期介入が原則である」

という、非常にシンプルな考え方でした。

日本でも、「早期発見が大切」という認識自体は、
すでにある程度浸透しているように思います。

実際、レイも
1歳半健診で言語の遅れを指摘され、
自治体の発達センターにつながりました。
また、保育園の先生たちも、
はっきりとした言葉ではなかったものの、
発達に関する違和感には気づいていたように感じます。

ここで大切なのは、

「自閉症の診断を下すこと」と
「発達の違和感に気づくこと」は別である

という点です。

診断は医療機関の役割であり、
評価や確定には時間を要することも少なくありません。
一方で、

「何か違うかもしれない」

と感じること自体は、
親や保育士など、日常的に子どもを見ている大人であれば、
必ずしも専門家でなくても気づけることが多いのではないでしょうか。

今回は、そうした
専門家ではない大人が感じた違和感を、
できるだけ早く支援につなげることの意味について、
少し詳しくまとめていきたいと思います。

※本記事は、一人の親として、専門家から聞いた内容や自分で学んだことを整理したものです。医療的判断や専門的助言を目的としたものではありません。具体的な支援については、必ず専門家にご相談ください。

1. 早期発見の最大の意味は「早期介入できること」

早期発見が重要とされる最大の理由は、
できるだけ早い段階で介入を始められることにあると親としては感じています。

自閉症支援においては、
早期に、そして一定量以上のABA療育を行うことで、
子どもの発達が大きく伸びる可能性があることが、
複数の研究によって示されています。

たとえば、次の研究では、
245人の子どもを対象に、

  • 年齢

  • 介入時間(どれくらいの時間、療育を受けたか)

が、学習の進み方にどのように影響するかを分析しています。

(参考論文)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1750946709000658?via%3Dihub

その結果、次のことが明らかになりました。

  • 年齢が低いほど、学習の伸びが大きい

  • 療育の時間が多いほど、新しいスキルが増えやすい

  • 特に 2〜7歳の子どもでは、介入時間を増やすほど成果が高まった

そして、非常に重要なのが、

「これ以上やっても意味がない」という頭打ち(限界点)が見られなかった

という点です。

つまり、
「ある程度やったら効果が止まる」のではなく、
適切な介入を続けることで、学びは積み重なっていく
ということが示されています。

この考え方は、
ABA療育の研究者の一人、イヴァ・ロヴァース博士の著書
『行動分析治療による自閉症児の教育マニュアル』でも説明されています。

本書籍で、ロヴァース博士は、

神経系の構造は、生後数年間の環境の変化によって
大きく変わる可能性がある
こうした変化は、幼い子どもほど起こりやすい。

「行動分析治療による自閉症児の教育マニュアル」

と述べています。

つまり、
脳の柔軟性が高い幼少期ほど、
環境からの働きかけが発達に影響しやすい
ということです。

そのため、自閉症への介入は、

  • 2〜5歳ごろ

  • 遅くとも 就学前

から始めることが望ましいと、
一般的に考えられています。

2. それでも、早期介入につながらないケースが多い理由

ここまで読むと、
「だったら、早く気づいた時点ですぐに介入すればいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし現実には、自分の体験談からや他の自閉症をもつ親御さんと話していると、
早期発見されても、早期介入につながらないケースが非常に多い
と感じることが多々あります。
私が体験した中で、主に次の3つのケースがあるように感じました。

① 親が受け入れられない

どんな親であっても、

「我が子が自閉症かもしれない」

と突きつけられたとき、
すぐに受け入れられる人ばかりではありません。

これは、療育や支援制度が比較的整っているアメリカでも同じだそうです。

スーザン先生の学校でも、
発達の遅れに対して早期介入を提案すると、

「うちの子は違う」
「まだ小さいから様子を見たい」

と、その可能性自体を否定し、
結果的に学校を離れてしまう家庭もある、と聞きました。

その気持ちは、とてもよく分かります。
誰だって、我が子の障害を考えたくはありません。

ただ一方で、
介入には“時期による差”があるという事実もあります。

親が受け入れられないあいだに、
取り戻せない時間が過ぎてしまう可能性がある——
それもまた、現実として存在しています。

② 受け入れても、どこに行けばいいか分からない

「もしかして…」と気づき、
時間をかけて気持ちの整理がついたとしても、

  • どんな療育があるのか分からない

  • 何が本当に効果的なのか分からない

  • 誰に任せればいいのか分からない

という壁にぶつかるケースは少なくありません。

その結果、

  • とりあえず「様子を見る」

  • 合わない療育を転々とする

  • 情報に疲れて、動けなくなってしまう

という状態に陥ることもあります。
これは、まさに私自身が経験したことでもありました。

「動かなければ」と思っているのに、
どこへ向かえばいいのかが分からない。

この迷いの時間もまた、
早期介入を遠ざけてしまう大きな要因になります。

③ 周囲は気づいていても、道を示せない

これも私が体験した一つではありますが、
保育士や支援者など、
子どもを日常的に見ている大人が
発達の違和感に気づいているケースもあります。

それでも、

  • 親にどう伝えればいいか分からない

  • その後、どんな選択肢があるのか説明できない

という理由から、
「もう少し様子を見ましょう」
という言葉で終わってしまうことがあります。

悪意があるわけではありません。
ただ、次に進むための具体的な道筋が共有されていない
それだけなのだと私は感じました。

3. 研究と現場の間にある、大きなギャップ

イヴァ・ロヴァース博士の著書
『行動分析治療による自閉症児の教育マニュアル』でも、
研究を進めるにあたって、

自閉症と診断されても、
「では、家に帰って自治体と連携してください」
と言われるだけで、
その先に何も示されない悲しい現実があると述べています。

さらに博士は、次のように言及しています。

研究で効果が示されている支援と、
現場で実際に行われている支援のあいだには、
少なくとも25年のギャップがある

『行動分析治療による自閉症児の教育マニュアル』

これは、
現場で働く人たちに情熱がないからではありません。

仕組みとして、
科学的に有効とされる介入につながりにくい構造がある

——私は、そう感じています。

4. 早期介入には、確かに希望がある

早期介入は、
魔法ではありません。
努力も必要ですし、
親の負担がゼロになるわけでもありません。
それでも、

  • 科学的に裏付けられた介入方法があり

  • それを適切な時期に

  • 適切な形で提供できれば

子どもの可能性が広がることは、確かに示されています。
そして私たちがアメリカで知ったのは、
この「早期介入」を 個人の努力に任せない仕組み が
実際に存在する、という事実でした。

次回予告:早期介入を“現実”にする存在

次回は、
ABAを専門としたプロ集団(エージェンシー)が存在すること
について書いていきます。

  • 誰が評価をするのか

  • 誰がセラピーを行うのか

  • 親はどんな立場になるのか

早期発見・早期介入を
「理想論」で終わらせないための仕組みについて、
私たちが実際に見聞きしたことを、親の視点で整理していきます。

引き続き、読んでいただけたら嬉しいです。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。

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