『ぐるりのこと。4K』公開記念🎉1シーンながら鮮烈な印象を残し、『お母さんが一緒』で主演を務めた江口のりこが橋口監督とサシで映画トーク!
映画『ぐるりのこと。』の4Kリマスター版公開を記念し、18年前の公開当時は本作のメイン館であり、今年10月での閉館が先日発表されたシネスイッチ銀座にてトークイベント付き上映が開催された。ステージには、本作でマンションの隣人役を演じた江口のりこ、そして橋口亮輔監督が登壇。時を経ても色褪せない本作の魅力や、当時の撮影秘話について息の合ったトークを繰り広げた。(以下敬称略)
江口のりこも再発見した「カナオ」という男の魅力
人生経験を重ねたことで変化した作品の受け止め方
イベント直前まで客席で観客と一緒に映画を鑑賞していたという江口。大スクリーンで見る4Kリマスター版の感想を問われると、江口は「めっちゃ面白かったです。公開当時は主人公たちの方が年上だったのですが、今では自分の方が年上になっていて、見え方がまったく変わりました。当時はわからなかった人物の魅力が、今はよくわかる。特にカナオ(リリー・フランキー演じる主演の一人)の魅力がわかりました。本当にいい男ですね」と人生経験を重ねたことで作品の受け止め方が変化したことを明かした。これを受けて、橋口監督は「そういうふうに見えるように作っていますから」と笑いつつ、「企画段階でリリーさんのスケジュールがおさえられないかもしれないとマネージャーに言われた時、目の前が真っ暗になった。ところがすぐにリリーさん本人が『僕の望みは橋口さんが楽しく撮ってくれることですから。スケジュールのことは気にしないでください』と言い切ってくれた。その時、はっきりと「この男は逃げないんだ」と確信して自分の中のカナオ像、そして翔子の人物造形も固まった」と振り返った。

オーディションの記憶と、緊迫の「嵐の夜」の舞台裏
江口が演じたマンションの隣人役は、オーディションを経て掴み取った役。当時の思い出について、江口は「新宿区のビルの一室で5、6人集まったのを覚えています。本番と同じように隣人がうるさい、と言いに来るシーンをやりました」と懐かしんだ。一方、橋口監督はシナリオを実際に取り出して見つつ、「今確認しても隣人の役はたった一行『静かにしてくれません?』のセリフ。よくこれで当時すでに頭角を現されていた江口さんが受けてくれたなと。江口さんというおもしろい俳優さんがいるということはすでに知っていましたから、オーディションの前から結果はすでに決まっていたようなものです」と江口の印象を語った。江口は地元・兵庫にいた17歳の時に神戸アートビレッジセンター(現在の名称は新開地アートひろば)で橋口監督の『二十才の微熱』を鑑賞しており、『ハッシュ!』公開時はすでに上京していたため渋谷で観たという。江口は「橋口作品ファンだったので、オーディションには嬉々として参加しました」と心の内を明かした。

本作のクライマックスとも言えるのが、江口が登場する「嵐の夜のシーン」だ。長回しによる緊迫した場面の撮影について、江口は「すでにたくさんのエチュードを積み重ねて関係性が出来上がっている木村さんとリリーさんの二人の間に自分がちょんっと入っていくのはとても怖かった。役者が映画で芝居するって恐ろしいことだなとしみじみ思いましたね。そんなとき、監督が『江口さん、風邪ひいてることにしてくれる?』とおっしゃって、ふっと気が楽になったんです」と当時の苦労や現場の空気を明かした。「実はカナオがドアを閉めた後も、江口さん演じる隣人は『ばーか』と悪態ついてドアを叩いてるんですよね」と橋口監督が答えると、江口は「叩いたりしてすべて演じ切った後、階段の踊り場で『あれでよかったんかな』と頭を抱えてました」とこぼした。

撮影当時、主演・木村多江が役に深く入り込むあまり食が細くなっていったことを橋口監督が振り返ると、江口は感慨深げに「大変、大変ですね」とひと言。すると監督は、「でも江口さんも、一生に一度しかない役だと思ったら、それぐらいエネルギーを注ぎ込むタイプですよね」と問いかけた。
江口は「もちろん注ぎ込みます。でも、やっぱり手をつないで一緒に乗り越えてくれる人が必要だと思います。私にとっては、それが監督や演出家の方々です。これは私の勝手な想像ですが、橋口監督がいたからこそ、木村さんはあそこまでたどり着けたんじゃないかなと思います」と監督への信頼をにじませた。その言葉を受け、橋口監督は「つくづく人とのご縁に支えられて映画を作ってきたなと思います」と締めくくり、公開当時に本作を観た観客に向けても、「今だからこそ感じられるものがある作品」と改めて劇場での鑑賞を呼びかけた。

【イベントこぼれ話】




