ツール導入だけでは組織は変わらない。BizOpsが現場に潜る理由
BizOps(ビジネスオペレーションズ)アーキテクトとして、企業の「戦略」を「現場の仕組み」に落とし込む活動をしています。株式会社カクシアジ代表の御園(みその)です。
「新しい戦略を打ち出したのに、現場が動かない」
「ツールを導入したけれど、結局スプレッドシートの手入力が減らない」
「部署間の連携がうまくいかず、いつも同じようなトラブルが起きている」
経営者や事業責任者の皆さん、こんな「もどかしさ」を抱えていませんか?実は、事業が急拡大するフェーズにおいて、多くの成長企業がまったく同じ壁にぶつかっています。
しかも、その原因の多くは「現場のやる気」や「個人の能力」の問題ではありません。組織のあちこちに潜んでいる「オペレーションの断絶」にあるのです。
今回は、私がなぜ「BizOps」という専門的な立場で、現場と一緒に汗をかきながら仕組み作りを行っているのか。その原体験と、目指している世界についてお話しさせてください。
その「DX」や「AI」は、ただの部分最適になっていませんか?
最近、どこに行っても「DX」や「AI活用」という言葉を耳にします。もちろん、テクノロジーの活用は不可欠です。
しかし、ここで一つ警鐘を鳴らしたいことがあります。
「How(どんなツールを入れるか)」に飛びつく前に、組織全体の「ボトルネック」を正しく特定できていますか?
名著『ザ・ゴール』にある通り、ビジネスの成果(スループット)は「一連の流れ」で決まります。
たとえ営業部門に最新のAIツールを導入して商談数を2倍に増やしても、その後の受注処理やカスタマーサクセス(CS)の体制がパンクしていれば、会社全体としての成果は上がりません。
むしろ、特定部署だけを効率化させる「部分最適」は、他部署に負荷を押し付け、組織全体のバランスを崩す原因になることすらあります。
BizOpsの役割は、このサイロ化した「点」と「点」を繋ぎ、会社全体を一つの「線」として滑らかに流れるよう、裏側のアーキテクチャ(構造)を設計し直すことにあります。
組織の隙間で力尽きる、尊き「何でも屋」たち
組織が急成長すると、既存の部署(営業・マーケ・CS・管理部門等)の境界線からこぼれ落ちる「誰の担当でもない空白地帯」が必ず生まれます。
「部署間で解釈が違う数字」の整理: 同じ商談数でも部門間で定義がバラバラ。全社共通の「真実の数字」を誰が定義するのかで揉めている。
「マニュアルのない」泥臭い業務の引き取り: 新しい施策のたびに生まれるイレギュラー業務を、結局「誰か」が残業でカバーしている。
「誰も全容を知らない」SaaSの継ぎ足し: 各部署が良かれと思って入れた複数のツールが複雑に絡み合い、データがどこで止まっているのか誰にも分からない。
こうした「隙間」の課題に気づき、自ら拾おうとするメンバーが社内には必ずいます。
日本ではよく「何でも屋」や「便利屋」と呼ばれる、非常に献身的で尊い存在です。
しかし、彼らは今、孤独を感じていないでしょうか?
「他部署の領域に首を突っ込むな」と煙たがられたり、終わりのない複雑な社内調整に疲れ果ててしまったり。
私は声を大にして言いたいのですが、彼らがやっていることは決して「雑務」ではありません。
海外のテック企業では、データの異常からビジネスの急所を察知する力や、利害が対立する部門間を調整する力が、「BizOps」という高度な専門スキルとして明確に定義されています。
私は、組織の隙間で孤独に戦う尊き「何でも屋」たちを事業参謀へと引き上げ、彼らと共に戦うための「武器」を作る伴走者でありたいと考えています。
私自身が直面した壁と、安定稼働という名の戦い
この「仕組みで解決する」という私のスタンスは、かつて上場企業にて自らが巨大な組織の「何でも屋」として悪戦苦闘した原体験に基づいています。
当時の私は、まさに現場と経営の板挟みになりながら、組織の隙間に落ちた課題を拾い集める毎日でした。特に大きな壁だったのが、部署ごとにバラバラな管理体制が生んでいた「データの断絶」です。
経営会議で必要な数字を一つ出すために、夜遅くまで複数のスプレッドシートを突き合わせ、人力で加工し続ける。そんな状況では、現場の「真実」が経営の判断にリアルタイムで届くはずもありませんでした。
この課題を解決するために私が行ったのは、単なるシステムの導入ではありません。営業組織のみならず、経理をはじめとしたバックオフィスのメンバーと対話し、自ら管理画面をいじり、実務に即した業務フローを一つずつ再構築していくことでした。
「何事もないことが最大の価値なのに、エラーが起きた時だけ注目される」
それがオペレーションを担う人間の宿命です。しかし、その泥臭い経験を通じて確信したのは、経営の迅速な意思決定を支えているのは、現場で働く一人ひとりの気概と、彼らが無理なく回せる「一点の曇りもないリアルなデータ基盤」であるということです。
過去の成功体験を、いまの実行基盤へアップデートする
組織が拡大するプロセスで避けて通れないのが「オペレーションの陳腐化」です。
3年前には「最適」だったルールが、今の事業規模では現場の足を引っ張る「重石」になっている。特定のベテランだけが知っている暗黙知や、力技で回し続けているスプレッドシート。これらはすべて、放置すれば組織を動けなくする「オペレーション負債」です。
しかし、この負債は誰かが悪意を持って作ったものではありません。その時々の最善を尽くした結果が、成長に伴って形を変えただけです。
だからこそ、過去の成功に最大限の敬意を払いながら、特定の部署の利益に縛られず、いまの事業規模に見合う「実行基盤(OS)」へと仕組みをアップデートしていく。それがBizOpsアーキテクトとしての私の使命です。
私が実務まで一気通貫で引き受ける理由
私が支援に入る際、美しい戦略のロードマップだけを描いて「あとは現場でやっておいてください」と丸投げすることはありません。
なぜなら、「現場と一緒に手を動かさない人間は、本当の意味で信頼されない」と痛感しているからです。
経営陣がどれほど立派な戦略を掲げても、現場からすれば「また仕事が増える」「現場の苦労も知らない外部の人間が何を」と防衛本能が働くのは自然な反応です。
だからこそ私は、自ら設定画面を開き、業務フローを書き直し、現場の「面倒くさい」を一つひとつ泥臭く潰していくスタイルを貫いています。
外部の人間でありながら、現場の最前線で共に汗をかき、部門間のコンフリクトから逃げずに向き合う。
その姿を見せることで初めて、現場の方々は新しい仕組みを自分事として受け入れ、自律的な改善への一歩を踏み出してくれます。
戦略を「絵に描いた餅」にせず、最後まで実行しきる。それが、私が提供するカクシアジ(隠し味)です。
まずは、当たり前を疑うことから
磨き上げられた滑らかなオペレーションは、決して一朝一夕には真似できない、その企業にとっての最強の競争優位性になります。
もし、この記事を読みながら「うちの組織のことかもしれない」と感じたなら。まずは、身近なところを観察してみてください。
経営会議の数字を作るために誰かが深夜まで作業をしていないか。現場が「この入力、何の意味があるんだろう」と疑問を持ったままシステムを使わされていないか。あるいは、社内の誰かが「何でも屋」として、文句も言わずに組織の歪みを一人で背負い込んでいないか。
「頑張っているのに、なぜか物事が前に進まない」
その違和感の正体は、個人の能力不足ではなく、仕組みの限界を知らせるシグナルです。そのシグナルを見逃さず、日々の「当たり前」を少しずつ、しかし構造的に変えていくこと。
このnoteではこれからも、組織の隙間を埋め、変化に適応し続ける強い組織を作るためのリアルな思考プロセスを発信し続けていきます。
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急速に拡大するニーズに伴い、専門化・細分化が進むBizOps求人市場の現在を読み解きます。あわせて、尖った専門性がないことに葛藤していた自身のキャリアが、BizOpsという概念に出会いどう再定義されたかという体験をまとめました。
Xでは、記事にする前の断片や
現場で感じた違和感を ほぼ毎日書いています。
よかったら、のぞいてみてください。
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