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「書く時間がない」経営者へ——話した内容を本の原稿に変えるAI活用術【Kindle出版体験記:連載第2回】

前回は、社内に眠っていたセミナーコンテンツが費用ほぼ0円でKindle本『顧問先が増える税理士、増えない税理士』になった全体像をお伝えしました。今回はその中心工程である原稿づくりです。セミナーがどうやって111ページの本になったのか、AI(私たちの場合はClaude)とどう作業を分担したのかを、手順に沿って具体的にお話しします。

先にお伝えしておくと、担当した弊社スタッフはプログラミング未経験の「ノーコード人材」です。特別な技術は使っていません。コツは「AIに任せる作業」と「人間が判断する作業」の線引き、これだけです。

STEP1:素材の取り込み——動画の字幕と資料PDFをAIへ

材料は、提携先の税理士事務所向けに続けてきた営業コンサルティングセミナーの動画(YouTube限定公開)と、セミナー資料のPDFです。動画は全部で約60回分ありますが、すべてを1冊にすると大変な量になります。そこでテーマのつながる5〜10回分を選んで1冊にする方針にしました。この「どの回を本にするか」の選定が、最初の人間の仕事です。

「文字起こし」というと音声を聞きながら書き取るイメージですが、実際はもっと簡単でした。YouTubeに動画を上げてあれば字幕データが使えます。AIが字幕を自動取得し、資料PDFからもテキストを抽出。ここまでほぼ人間の作業はありません。

ただし字幕には「えー」「まあ」といった話し言葉のクセや誤変換が含まれます。最初から「内容は要約せず、話し言葉のクセだけ除いて整文してください」と指示しておくと、後工程がぐっと楽になります。

STEP2:構成——セミナー5回分を「1冊の本」に組み替える

素材がテキストになったら、次は章立てです。ここが原稿づくりで一番頭を使うところですが、実はAIが最も力を発揮する工程でもあります。

セミナーは1回ごとに完結する構成のため、そのまま並べても本にはなりません。私たちは全素材をAIに読み込ませたうえで、目次案を複数パターン出させ、人間が選ぶ方法をとりました(現在制作中の第2弾でも、AIが出したA案・B案からB案を選んでいます)。

このとき効いた指示のコツは3つあります。

  1. 読者を1人に絞って伝える……「誰が・どんな悩みで読むのか」を先に固定すると、章の並び順が自然に決まります

  2. 複数案を出させて比較する……1案だけだとAIの提案に引きずられます。並べて初めて「こっちは違う」という判断が人間側でできます

  3. 素材に無い話を足させない……AIは気を利かせて一般論を補いがちです。「素材にある内容だけで構成する」と釘を刺しておくと、実体験ベースという本の価値が守られます

STEP3:執筆と検証——「書く」のではなく「照合する」

章立てが決まれば、各章の本文はAIが素材から書き起こします。人間の作業は執筆ではなく検証です。

実際にあった例を挙げます。AIが書いた原稿に「反応率12倍」という数字がありました。元のセミナー資料と照合すると、正しくは**「案件獲得率12倍」**。意味が変わってしまう間違いです。AIは素材を要約する過程で、こうした「惜しい言い換え」をすることがあります。数字と用語は必ず元資料と突き合わせる——これを章ごとのルールにしました。

文体の統一はAIに任せられます。「です・ます調で、セミナーの語り口を残して」と指定すれば全章のトーンが揃います。ゼロから書けば数週間かかる分量が、この方式なら原稿から入稿まで実働数日。前回お伝えしたスピードの正体がこの工程です。

STEP4:図解——「A5・モノクロで読める図」と先に伝える

ビジネス書は図解があるだけで読みやすさが大きく変わります。図解もAIに任せました。各章の原稿を渡して「この章で図解にすべき箇所と図の案を出して」と依頼すると、比較表、フロー図、チェックリストなど形式ごと提案してくれます。採用する図を選ぶのは人間です。

技術的には、AIがSVG(拡大しても崩れない図形データ)で作図し、それを画像(PNG)に変換して原稿に組み込みました。電子版はカラー、印刷版はグレースケールに変換という2パターンを用意しています。紙の本はA5判・モノクロ印刷なので、「A5・モノクロで読める図」という条件を最初に伝えておくと手戻りがありません。

AIとの分担の全体像

ここまでの分担を整理すると、こうなります。

  • AIに任せた作業……字幕・PDFからのテキスト取得、整文、目次案の作成、本文の書き起こし、文体統一、図解の作成

  • 人間がやった作業……素材の選定、目次案の選択、数字・用語の元資料との照合、社外向け表現の最終判断

お気づきのとおり、人間側に残るのは「判断」と「検品」です。そしてこの検品を1か所だけ通り抜けた結果、発売後にあの**「印刷したら漢字が中国語の字形だった」事件**が起きることになります(第4回で詳報します)。AI活用の効率と人間の目の重要性は、セットで考えるべきだというのが私たちの実感です。

まとめ

  • 原稿づくりの鍵は「AIは作業、人間は判断」という分担。執筆ではなく検証に徹すれば、原稿から入稿まで実働数日で到達できます

  • YouTubeの字幕データと資料PDFがあれば、文字起こし作業はほぼ不要です

  • 構成づくりは、読者を1人に絞る・複数案を比較する・素材に無い話を足させない、の3点が有効でした

  • 数字・用語・固有名詞の照合だけは、必ず人間が行うこと

次回は、AIによる表紙づくりと、KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)への出稿手順です。AIコンテンツの申告、価格とロイヤリティの設定、審査の実際など、つまずきやすいポイントをまとめます。


▶ 今回出版した本はこちら:『顧問先が増える税理士、増えない税理士――紹介会社が見てきた決定的な違い』(電子版500円/ペーパーバック980円)

税理士事務所の「顧問先の増やし方」を紹介会社の視点から整理した1冊です。経営者の方には「選ばれる税理士の見分け方」の裏側としても読んでいただけます。

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※本記事は2026年8月時点の体験と情報に基づいています。KDPの規約・料金・ロイヤリティ等の最新情報はAmazon KDP公式サイトをご確認ください。