ゴルディアスの結び目 ~どこまで奇抜なアイデアがよいのか、価格戦略を材用に考えてみる
ゴルディアスの結び目とは?
紀元前4世紀、アレキサンダー大王がフリギアにあるゴルディオンという町を訪れた際、彼は一つの伝説に遭遇しました。それは、複雑に絡み合った大きな縄の結び目で、この結び目を解いた者がアジアを征服するというものでした。この結び目は非常に複雑で、誰も解くことができませんでした。
アレキサンダーはこの挑戦を受け、結び目に向かいました。彼は結び目を解こうとするのではなく、剣を抜いて結び目を一刀両断にしました。この行動は、従来の手法にとらわれず、誰も思いつかなかった大胆な方法で難問を解決することを象徴しています。
この逸話から、「ゴルディアスの結び目を断つ(to cut the Gordian knot)」という表現が生まれました。
アレキサンダー大王の時代以降、優れた戦略とは、法律に違反するわけではないが、誰も思いつかなかった方法で課題を乗り越えることを指す場合が多いと感じています。特に製造業におけるものづくりよりも、マーケティングを駆使して手っ取り早く成果を上げることが好まれる傾向があるように思います。

最低保証なら安心か?
例えば、携帯電話ビジネスにおいて、ソフトバンクがボーダフォンを買収して市場に参入した際、孫正義氏は最低価格を保証し、シェアを急速に伸ばしました。競合他社よりも高い価格でサービスを提供することは絶対にないと明言したわけです。しかし、サービスの内容を詳しく見ると、携帯電話会社ごとにサービスの内容が微妙に異なっており、正確に比較できるものではありませんでした。したがって、実態としては、横並びか比較対象がない中で最低価格を保証することになり、嘘をついているわけではないものの、真っ当な商売のやり方なのか若干疑問を感じる部分もあります。
とはいえ、この手法は秀逸なマーケティングとして、多くのビジネスパーソンが学んでいるはずです。似たようなことはホテル予約サイトでも見られます。「最低価格(ベストレート)」を謳っているサイトは多く、その場合ホテルと契約する際に最低価格を提示することを条件にしています。実際には、ホテル側は複数の旅行サイトと契約しているため、価格は横並びになるか、サービス内容が微妙に異なるように工夫されています。例えば、チェックアウトの時間を1時間遅らせるとか、ディナーのデザートに一品追加するといった小さな違いによって、契約の縛りを回避しているのです。私が複数回泊ったホテルでは、メンバーになれば毎回5%割引で、そのほかにも特典がある、と勧誘しています。WEBサイトでの価格だけを見ると、旅行サイトの方が安い場合が多く、微妙な感じがします。さらに、最近はダイナミックプライシング、つまり需要に応じて価格が変動するので、一概にどこが安いか判断するのが難しくなっています。宿泊の1-2か月前か、キャンセル料がかかりだす宿泊1週間前を切ってから予約すると安くなるのですが、天候を見てから行くか行かないか決めるとなると2-3日前でちょうどいいので、判断に迷うところです。
斬新なアイデアでも儲けること
私自身のビジエネス経験に照らしても、事業会社で事業の損益責任を持っていたとき、本社のCEOから「何をやってもいいから新しい事業を立ち上げて儲けろ」と厳命されていました。もちろん、コンプライアンス上の問題を起こしてもよいとは言われていませんが、ゴルディオンの結び目の故事にあるように、法律には触れないものの、誰も思いつかない新しいアイデアが求められていると感じ、アイデアを捻りだすことに必死でした。
奇抜なアイデアで儲けることは、肯定されるべきだと思いますが、最近のネットの状況を見ると、ちょっとそれはないんじゃないかと思うこともあります。
Yahooなどのネットでニュースのタイトルだけ見える状態だと、例えば「大谷翔平、3日連続の45号ホームラン」と書いてあるので、大谷また打ったんだ、とクリックして詳細に目を通すと、45号ホームランに期待、とか書いてあって、まだ試合が始めっていないことがあります。サッカーだと「久保建英がついにレアルマドリードに移籍」となっていたりします。こういったタイトルの付け方はいくらでもあるというか、むしろ普通なのですが、これによって表示回数を稼ぎ、場合によっては収益化してしまうわけですから、もう少し節度があってよいのではないかと思います。
斬新なアイデアが浮かばないなかで、なんとか結果を残さねばならないプレッシャーのなせる技ともいえます。まっとうな商売は大事、で「三方よし」など基本的な考え方として理解されてはいるのですが、実行は難しいと、改めて感じます。
