ソーダの泡。
【この物語はフィクションです】
「今に見てろよ!」
そう意気込んだナツだったが、自信は無かった。もうすぐ春が終わる。春が終わるまでに、自分なりの大きなプロジェクトを何とか片付けなければならなかったからだ。
プロジェクトなんて大層なモンじゃないだろ、たかがその程度のことで。と多くの人たちは笑うだろう。でも、私にとっては「プロジェクト」と銘打つくらいの覚悟が要ったのである。
ソレを上手くやるのはどうすればいいのだろうか。誰かに習いに行くのも怠いしなぁ…。自主練習あるのみなのだろう。やっぱり、手軽にYouTubeかな?とにかく今、ソレをやっておかなければならない。
イチから始めるのもいろいろと揃えないといけないし、思ったよりも手間が掛かる。スキルが無いのは織り込み済み。…考える事数分。もういいや、奥の手だ。ナツは、バレないだろうと高をくくったのだ。
◇
まずは、材料の仕込みからだ。お手軽の素と、豆腐と挽肉。ネギもあるといいな。ちゃちゃっと切って混ぜればいいのだけど、“ちゃちゃっと”が出来ないよぉ…。
手のひらに載せて、豆腐をすーっと切っていくのがプロっぽい。切れ味の良い包丁じゃないとすーっと切れないけど、逆に指まで切れそうでちょっと怖い。
指加減と、ちょっとの力加減が大事なのだろう。しかし不慣れな上に血の味をさせたくないので、初心者っぽく、まな板の上で慎重に四角に切っていく。
お鍋に火を掛け、書いてある通りの分量を入れてひと煮立ち、っと。ここまでは順調順調♪ あとは、そのまま粉末の片栗粉をパラパラッと入れて…っと。これで完成かなぁ。ん?なんかおかしい。
慌ててかき回すも、うぅぅ…間に合わない。いくら掬っても、ソレが戻ることはなかった。指先から零れ落ちたかのようなソレは、儚くもソーダの泡の如く、幻のモノとなったのである。
…つまり、片栗粉がダマになってしまったのだ。まあ、美味しければいいや。本番のときはダマを指摘されないように注意しよう。やっぱり、ぶっつけ本番は危ないよねぇ…。ナツは練習の大切さを思い知るのだった。
[END](ここまで856文字)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
…皆さんお分かりのことと思いますが、ソレとは麻婆豆腐のことです。初投稿ということで出来の程はさておき、少しは楽しんでいただけただろうか。作品のテーマが「指」だったのだけど、ちょっと苦しい?
指輪とか指切りとか、恋愛に絡めたテーマだったら他のクリエイターさんと被るだろうしなぁ。意外性とアウトラインから攻めるのは得意分野なので、他とは被らそうなテーマで書いてみた。審査外だったらめげちゃうかも。
創作なので、いつも通りの要領では無理。先に結論を作らないと締まらないよなぁ…などと思いながら、どう面白く失敗させるか。その上、登場人物名にも悩んだ。夏に結果発表だからナツ。実に単純ですね。
しかも、冒頭に恭しくフィクションと書いておきながら、私の失敗談をボンヤリと混ぜました。つまり完全な創作ではないのです。ちゃんと水で溶いて、火を止めたのに、冷ましが足りずにダマにしてしまいました。
初めはソーダが題材だったのに、いつの間にか麻婆豆腐になっちまいました。なので、ヘッダ画像が何の脈略もないわけではないのでご容赦の程を。お読みいただきありがとうございました。
【お知らせ】
「春ピリカグランプリ2023」、応募期間は5月10日(水)24時まで。
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