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アブラハム・ファミリー・ハウス*3つの宗教の調和から統合への動き

前回の記事にちらっと書いたアブラハム・ファミリー・ハウスについての備忘録です。


アブラハム・ファミリー

アジャイ・アソシエイツ(Adjaye Associates)が設計したアブラハムファミリーハウス(Abrahamic Family House)は、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビのサディヤット文化地区にあります。


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アブラハムは、『旧約聖書』でノアの大洪水の400年後に登場する最初の預言者であり、『新約聖書』ではイエスの家系の祖と書かれています。

またアブラハムは、ユダヤ教では全てのユダヤ人の、イスラム教ではユダヤ人に加えて全てのアラブ人の系譜上の祖とされています。

つまりユダヤ教、キリスト教、イスラム教はいずれも、アブラハムを唯一神が人類救済のために選んだ預言者として讃えているため、これらの宗教は「アブラハムの宗教」と呼ばれます。


***余談(ヘブロンとエデンの園)***

興味深いことにアブラハムの霊廟は、パレスチナのヨルダン川西岸地区ヘブロンにあるそうなのですが、3つの宗教の聖地でありながら現在はイスラム教徒はヘブロンを通過することも許されていません。

ヘブロンの位置
アブラハムの霊廟

イスラム教徒(アラブ人)がヘブロンに入ることが出来なくなった原因は、1929年8月下旬に発生した一連のデモ(嘆きの壁でのユダヤ人のデモ)と、エルサレムの嘆きの壁をめぐるアラブ人とユダヤ人の間の長年の紛争がエスカレートした結果起きたヘブロン虐殺に端を発します。

1929年のパレスチナ暴動(日本語wikiでは「嘆きの壁事件」)は、2人のアラブ人が殺されたという噂に煽られたアラブ人がエルサレムの旧市街を攻撃し、ヘブロンのイッシューブ(シオニズム運動が始まる1882年以前から住んでいる者)を虐殺しました。
ユダヤ人約65人が殺害され、53人が負傷し、家屋やシナゴーグが略奪されたと言われています。

8月23日から29日までの1週間の暴動で、最終的にユダヤ人133人、アラブ人116人が死亡し、174人のアラブ人と109人のユダヤ人が殺人または殺人未遂で告発され、アラブ人の約40%とユダヤ人の3%がその後有罪判決を受けたそうです。

ヨルダンの支配下にあったヘブロンは、1967年の第三次中東戦争でイスラエルに占領された後、ユダヤ人の入植が続き(1980年に6人の入植者がパレスチナ人に銃撃されたのを契機にアブラハム霊廟の近くに住むパレスチナ人は追放された)、1994年2月25日、今度はユダヤ人入植者によるパレスチナ人に対するマクペラの洞窟虐殺事件が起きました。
パレスチナ人29人が殺され、125名が負傷したそうです。


マクペラの洞穴があるイブラヒミ・モスク(アブラハムのモスク)

マクペラの洞穴は、イブラヒミ・モスク(アブラハムのモスク)としてイスラームの聖所とされており、現在は建物の内部でユダヤ教とイスラム教のスペースに分かれています。

イスラエル占領後に、ユダヤ人によってモスク下の洞穴に小さなシナゴーグが作られました。
ユダヤの伝承では、その洞穴にはアダムとエバの墓もあるとされ(創世記23章2節)、またエデンの園の入り口と信じられているそうです。


マクペラの洞窟虐殺の犯人は、バールーフ・ゴールドシュテイン(本名:ベンジャミン・カール・ゴールドシュタイン、1956年 - 1994年)というアメリカ生まれのユダヤ人の医師で(姓からしてユダヤ人を隠せていない)、過激なカハ支持者(現在のイスラエル首相ネタニヤフと同じ)でした。

バールーフ・ゴールドシュテイン

ゴールドシュティンは、イスラエルでは「聖人」「英雄」として現在も讃えられています。

*****余談終わり****


アブラハムの子

アブラハムの子』は、アメリカの童謡(「Father Abraham」(作詞・作曲:不明)が原曲と考えられています。アメリカで流行ったのかはわかりませんが、日本人の多くは子ども時代に聴いたことがあると思います。

日本語歌詞の作詞者は、名古屋YMCAのリクリエーション・リーダーだった加藤孝広氏とされています。

アブラハムは長いこと子どもに恵まれなかったため、妻のサラの勧めで彼女の奴隷であったハガルを妾にして76歳にしてイシュマエルを授かりました。
後に99歳で割礼を受け、サラとの間に100歳になって嫡子イサク(イツハク)を授かったと書かれています(『創世記』第16‐18・21章)。

サラが亡くなった後、後妻ケトラとの間に6人の息子をもうけており、実際はアブラハムには8人の子どもがいたはずですが、歌詞では「7人の子」になっているのは、イサクが生まれたとあとにイシュマエルは彼の母ハガルと共に追い出されてしまったからでしょう。

また、これは数字「7」の重要性を示してもいます。

1人はノッポで後はチビ~と歌われているのは、とくに意味はないのかもしれませんが、ノッポとは長子(妻サラとの間に生まれたイサク)を意味しているかもしれません。
アブラハムにとって、イサクは神への捧げものに値する純潔の顕れでした。

神にひとり息子のイサクを捧げようとするアブラハムとそれをとどめる天使(『創世記』第22章)


アブラハムファミリーハウスの構成


アブダビにおけるアブラハム・ファミリー・ハウスの開設は、シェイク・ムハンマド・ビン・ザイド殿下の人類の友愛を深めるというビジョンを反映したものであり、相互尊重と平和共存というUAEの価値観を体現しています。

アブラハムファミリーハウスは、イスラム教の「モスク」、キリスト教の「教会」、ユダヤ教の「シナゴーグ」という3つの宗教的空間と、どの宗教にも属さない、集会や対話のための共有スペースから構成されています。

また、「太陽の光」を建築全体の主なデザイン要素としており、それぞれの礼拝堂が時間ごとにさまざまな表情をみせる作りになっているそうです。

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およそ、教会やモスクらしくないシンプルな四角いキューブが3つ。
上から見ると、その3つが三角形を作っているのがわかりますね。

これの意味は、霜月やよいさんの記事を読んでいただければ理解しやすいと思います。


<イスラム教>

イスラム教最大の聖地メッカの方角を向く〈イマーム・アルタイブ・モスク(Imam Al-Tayeb Mosque)〉は、イスラム教における「7」という数字の重要性を反映し、ファサードは7つの細長いアーチで構成されている。

内部の4本の柱で構成された9マスの内部グリッドが、メッカにおける最高聖地とされるカアバ神殿の方向を来訪者に示している。

この4本の柱は、イスラム教における「安定、秩序、充実」の概念を表す数字「4」を反映しているそうです。


<キリスト教>

アラブ首長国連邦では、建物にキリスト教の十字架を展示することは違法であるため、教会は建物を識別する方法として建物に十字架を付けることは許可されていません。

聖フランシスコ教会(His Holiness Francis Church)〉は、太陽が昇る方角である東を向いており、ファサードは垂直に射す光線を象徴する「林立する柱」で構成されている。柱を東西に配することにより、朝は聖域に日光が降り注ぎ、昼は暑い日差しを遮る。

十字架はあえて最小限のデザインにすることで、この教会が誰にでも開かれたものであり、複数の宗派が利用可能であることを意味している

洗礼スペースは古代の洗礼堂のような八角形の形状で、円錐形のフォルムの外壁に小さな開口部(オクルス)を多数設け、太陽の動きに合わせて空間にさらなる光の欠片を生み出す設計になっています。

教会の内部デザインは、「恍惚とした救済のシャワー 」をイメージしている。13,000m以上の短冊状の木材で表現された「シャワー」は、中央で上昇、周辺に沿って下降し、教会のヴォールト(天井構造)を形成している。

「恍惚とした救済のシャワー 」は矢が降って来るように見えます💦


<ユダヤ教>

エルサレムの方角を向く〈モーゼス・ベン・マイモン・シナゴーグ(Moses Ben Maimon Synagogue)〉のV字型の柱による3層構造は、スッカ(ユダヤ教の最も大切な祝日の1つであるスコット(仮庵の祭り)で使われるテントのような小屋)におけるヤシの葉の重なりを表している。

建物の外周部を構成する柱はそれぞれの面において、地面に7点、軒に8点接し、それぞれ「7」は人間を、「8」は神を象徴する数字となっているとのことです。

天窓から吊り下げられたブロンズ色のメッシュテントが、参列席の上に垂れ下がる。ブロンズを多用したオリジナルの幕屋(聖書に登場する移動式の神殿)を象徴している。

吊り下げられたメッシュテントを透過した昼光は、スッカのヤシの葉を通してシナゴーグの内部へと差し込みます。
夜には天窓から星を眺めることができ、ユダヤ教の結婚式の際に使用される仮設の天蓋チュッパ(フッパー)を参照しているそうです。

フッパー(エリザベス女王の戴冠式でも見られました)


フレキシブルなレイアウトが可能で、アシュケナージ(フランス、ドイツ、東ヨーロッパのユダヤ人の子孫)とセファルディム(スペイン、ポルトガル、北アフリカ、中東のユダヤ人の子孫)の両方に対応できる。

どの宗教にも属さない第4の空間

中庭や中央エントランス、図書室、展示スペースといった特定の宗教に属さない第4の空間は、イベントベースのプログラムや個人的な集まりなど、あらゆる人々が集うための場になります。


世界に広がる宗教一致の動き

ドイツの「ハウス・オブ・ワン

ベルリンに、ユニークな施設が誕生する。
ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒が、シナゴーグ、教会、モスクをひとつ屋根の下に集めた礼拝堂の建設を計画しているのだ。
3つのセクションは、建物の中央にある共同の部屋で結ばれている。この部屋は集会所として、参拝者や一般の人々が集まり、宗教と互いについてより深く学べるようになっている。

『ガーディアン』(2021年2月21日)

イラクの「宗教間対話センター」

イラクのウルは、アブラハムが生まれた地として知られていますが、2022年からウルに「宗教間対話センター(Interfaith Dialogue Center)」と呼ばれる施設の建設が始まっているそうです。

イラクは、宗教間対話を通して国内を一致させようと考えているとのこと。

2021年3月
教皇のイラク訪問:ウルで諸宗教代表者との集い - バチカン・ニュース

ウルを訪問した宗教間対話代表団

(故フランシスコ)教皇は挨拶の中で、アブラハムが生まれ、神の声に従い旅立ったこの場所から、共にアブラハムを父祖として尊ぶ、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、そして他の宗教の人々が、互いを兄弟姉妹として、アブラハムと同じように天の星を見つめながら、平和の道を共に歩んでいけるようにと、呼びかけられた。

ロシアのカザンにあるTemple of All Religions

ロシア連邦・タタールスタン共和国の首都カザンにある建築複合施設です。正教会、モスク、シナゴーグなど、いくつかの種類の宗教建築で構成されています。


聖書預言では終わりの時代

聖書の預言では、終わりの時代に世界全土を支配する世界統一政府が現れることが預言されています。

彼はこう言った。『第四の獣は地に起こる第四の国。これは、ほかのすべての国と異なり、全土を食い尽くし、これを踏みつけ、かみ砕く。
旧約聖書ダニエル7章23節

「第四の国」は、反キリストが支配する国と解釈されています。
近代国家は基本的に政教分離ですが、反キリストが支配する国は政教一致の国となると考えられています。

宗教間対話やエキュメニズム運動(教会一致運動)は一般的に良いものとみなされますが、3つのアブラハムの宗教がひとつになろうとしているのは、世界統一宗教が形成されて反キリストが現れる前触れと見られているのですね。

さらにはキリスト教徒の迫害が起きるという預言もあります。

聖書預言については、以下の記事の「世界統一宗教の計画」のところにも書きましたので、よかったらご覧ください。

この世界統一宗教は、最終的には反キリストによって滅ぼされてしまうと預言されています。

あなたが見た十本の角と獣は、やがて淫婦を憎み、はぎ取って裸にし、その肉を食らって火で焼き尽くすことになります。
ヨハネ黙示録17:16

そして、キリスト教の多くの宗派がそのあとにイエス・キリストが復活し神の王国が来ると信じているそうです。


今日はこのへんで。
お読みくださりありがとうございました。

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