血糖値のための食事、本当のバランスとは——糖質・タンパク質・脂質、それぞれの役割
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「血糖値のための食事」と聞くと、多くの方がこう考えます。
「とにかく糖質を減らせばいいんでしょ?」
——気持ちは、とてもよく分かります。でも実際は、少し違います。
血糖値というのは、糖の代謝(=体が糖をどう使い、どう片付けているか)を映す数字です。だから、目指すべきは「糖質をひたすら我慢すること」ではなく、糖をうまく使える体に整えること。
そして、そのためには、糖質・タンパク質・脂質——この3つ(PFCバランス)を、自分の体と生活に合わせて整えていくことが大切です。
今日は、その3つがそれぞれ血糖値にどう関わるのか、そして「自分に合ったバランス」をどう見つけるのかを、お伝えします。
少し踏み込んだ内容になりますが、これは血糖値と食事を考えるうえでの「土台」になる話です。
※PFCとは、Protein(タンパク質)・Fat(脂質)・Carbohydrate(炭水化物)の頭文字です。
第1章 炭水化物(糖質)——「悪者」ではなく「主役」
まず、誤解を解いておきたいことがあります。
炭水化物は、敵ではありません。
たしかに、糖質は血糖値を直接上げます。でも、それは「使われるために上がっている」だけ。糖は、脳や筋肉にとって、最も使いやすいエネルギー源です。
特に、私たち日本人は、長くお米を中心とした食生活を送ってきました。だから、もともと糖をエネルギーとして使うのが得意な体をしています。
大事なのは、「減らす」ことより「質と量を整える」こと。
白米より、玄米やもち麦(吸収がゆるやか)
食パンより、全粒粉のパン
そして、自分の活動量に見合った量を
しっかり体を動かす人なら、糖質はちゃんと使われていきます。糖質を極端に抜くより、「質のいい糖質を、使える分」——これが基本です。
そしてもう一つ、糖質と切り離せないのが食物繊維です。
食物繊維には、満腹感を持続させ、糖の吸収をゆるやかにして食後血糖の急上昇を抑え、さらに腸内環境を整える働きがあります。玄米やもち麦、野菜、海藻、きのこに多く含まれ、「精製された白い炭水化物より、未精製のものがいい」のは、この食物繊維が残っているからでもあります。糖質を摂るときは、食物繊維も一緒に——これだけで、血糖値の波はぐっと穏やかになります。
(※食物繊維と腸内環境の関係は、とても奥が深いテーマです。これはまた別の記事で、詳しくお伝えしますね)
第2章 タンパク質——血糖値を上げない、頼れる味方
次に、タンパク質。これは、血糖値の観点で「最高の優等生」です。
理由は3つあります。
① そもそも、血糖値をほとんど上げない
タンパク質は、糖質のように血糖値を急上昇させることが、ほとんどありません。
「ほとんど」と書いたのは、実は体にはタンパク質から糖を作り出す仕組み(「糖新生」と呼ばれます)があり、たくさん食べると血糖値がごくゆるやかに上がることもあるからです。とはいえ、糖質が「急な坂」だとすれば、タンパク質は「ほんの少しの傾斜」程度。乱高下させる心配は、まずありません。
② 満腹感が、いちばん長く続く
PFCの中で、最も腹持ちがいいのがタンパク質です。満腹感が続けば、間食や食べすぎが自然と減り、血糖値の波も穏やかになります。
③ 筋肉の材料になる
タンパク質は、筋肉の修復(リカバリー)に欠かせません。そして筋肉は、糖を引き取ってくれる最大の「受け皿」。つまりタンパク質をしっかり摂ることは、長期的に血糖値を安定させる体づくりにもつながります。
血糖値を気にするなら、まず「タンパク質を増やす」。これは、迷ったときの確実な一手です。
(※インスリン治療を受けている方などは、タンパク質でも血糖値が 変動することがあります。その場合は主治医の指示を優先してください)
第3章 脂質——「量」と「質」、両方が大事
そして、いちばん奥が深いのが脂質です。
脂質は、それ自体では血糖値を全く上げません。
「じゃあ、いくら摂ってもいいの?」——いいえ、ここが落とし穴です。
脂質は、血糖値を「長引かせる」
脂質が単体なら、血糖値は上がりません。
問題は、糖質と一緒に摂ったときです。
脂質には、胃の中の食べ物の消化をゆっくりにする働きがあります。これは、糖質の急上昇を抑える「ブレーキ」になる一方で、いったん上がった血糖値が、なかなか下がりにくくなるという側面もあります。つまり脂質は、糖質による血糖の山を、低くする代わりに「長く、だらだら」と引き延ばすことがあるのです。
さらに重要なのが、脂質の摂りすぎが、インスリンの効きそのものを悪くするという点です。
特に、揚げ物やバター、加工食品に多い「飽和脂肪酸」を摂りすぎると、細胞の中でインスリンの信号が伝わりにくくなることが、研究で報告されています。これは、糖質と一緒かどうかに関わらず、脂質の量そのものが問題になる話です。
日本人は、特に注意が必要
ここに、日本人ならではの事情が加わります。
私たちはもともと糖質中心の体質で、皮下脂肪に脂肪を溜め込む能力が、欧米人に比べて低いと言われています。そのため、軽い肥満でも、内臓脂肪や"異所性脂肪"(肝臓など本来つくべきでない場所につく脂肪)になりやすく、インスリン抵抗性を起こしやすいことが指摘されています。
糖質中心の食生活に、さらに脂質がたっぷり加わると、代謝がうまく対応しきれない——これが、現代の血糖値トラブルの大きな要因の一つです。
(※「脂質が"一番"の原因」とまでは言い切れません。糖質の摂りすぎ、運動不足、内臓脂肪など、複数の要因が絡み合っているのが実際のところです)
第4章 脂質には「いい油」と「悪い油」がある
ただし、「脂質=悪」ではありません。脂質は、ホルモンを作る材料であり、体に絶対に欠かせない栄養素です。問題は、その「質」です。
ざっくり、こう整理してみてください。
積極的に摂りたい油
オメガ3(青魚・えごま油・アマニ油):抗炎症作用があり、体のコンディションを整える働きが知られています。現代人は不足しがち
オメガ9(オリーブオイル):加熱に強く、酸化しにくい。炒め物にも向いています
摂りすぎに注意したい油
オメガ6(サラダ油・コーン油など):必要な油ですが、現代人は摂りすぎ傾向。揚げ物や加工食品にも多い
飽和脂肪酸(バター・ラード・脂身):摂りすぎるとインスリンの効きを妨げやすい
できるだけ避けたい油
トランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング、古い揚げ油など):体にメリットが乏しいとされる油
良質な油には、抗炎症作用や、体のコンディションを整える働きが期待できます。一方で、質の悪い油や摂りすぎは、血糖値にも体にも負担になる。
同じ「脂質」でも、中身がまるで違う
——ここを見極めることが、とても大切です。
第5章 「正解のPFC」は、人それぞれ違う
ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「で、結局、糖質・タンパク質・脂質を、どんな割合で摂ればいいの?」
正直にお答えします。
血糖値を安定させるための"万人共通の正解PFC"は、ありません。
この記事を読んでくださっているあなたが目指しているのは、おそらく「血糖値を安定させること、HbA1cを下げて、その状態を保つこと」だと思います。
でも、そこへ向かうための最適なバランスは、その人の——
今の代謝の状態(糖をうまく使えているか)
日々の活動量・運動量
体質や、生活のリズム
によって、まったく変わってきます。
例えば、毎日しっかり運動する人なら、糖質を多めに摂っても、ちゃんと使われていきます。一方、活動量が少ない人が同じ量を摂れば、使い切れずに余ってしまう。
つまり、「この黄金比をずっと守れば、誰でも血糖値が良くなる」という魔法のバランスは、存在しないのです。
ヒント:いまの日本人に多い「脂質の摂りすぎ」
ただ、方向性のヒントはあります。
実は、いま血糖値で悩む日本人の多くは、脂質を摂りすぎる傾向にあります。
象徴的なのが、糖尿病との関係です。日本で「糖尿病が強く疑われる人」は、戦後から爆発的に増えました。ところがこの間、1日の総エネルギー摂取量は、むしろ減っているのです。つまり「食べる量が増えたから」では説明がつきません。
代わりに増えていたのが、脂質(特に動物性脂肪)の割合でした。厚生労働省も、「糖質の比率が減り、脂質の比率が増えた食生活の変化が、日本の糖尿病の増加に一部関与している可能性がある」と指摘しています。
第3章でお伝えした通り、もともと糖質中心だった私たちの体に脂質がたっぷり加わると、糖を処理する力が追いつかず、血糖値のベースが少しずつ上がっていく。心当たりのある方は、多いはずです。
では、「脂質を減らせばいい」のか?
脂質が多いのが問題なら、「じゃあ、脂質をできるだけ減らせばいい」と思うかもしれません。
でも、ここが難しいところ。脂質は、ホルモンを作る材料であり、減らしすぎても体に支障が出ます(第4章でお伝えした通りです)。だから、脂質は「ゼロにする」のではなく、"質を選んで、量を整える"のが正解です。
摂りすぎている分を見直し、良質な油に置き換えていく——これが現実的な一歩になります。
「糖質を減らす」のは、どうなのか?
「じゃあ、脂質はそのままで、糖質をガッツリ減らせばいいのでは?」——これも、長い目で見ると正解とは限りません。
日本糖尿病学会のガイドラインでも、糖質を大きく減らすと短期的にはHbA1cが下がるものの、1年ほど経つと、通常の食事との差はほとんどなくなることが示されています。糖質制限の効果は、最初こそ目立つけれど、長続きはしにくいのです。
それに、私たちはもともと、お米を中心とした食文化の中で生きてきました。糖質を無理にゼロへ近づけるのは、体にも、生活にも、無理がかかります。
行き着く答え
結局のところ、糖質も、タンパク質も、脂質も、どれも欠かせません。
大事なのは、どれかを敵視することではなく、3つのバランスを、自分の目的と生活スタイルに合わせて整えていくこと。これが、すべての根本です。
活動量の多い人と少ない人とでは、最適なバランスは変わってきます。だからこそ、「自分にとっての」ちょうどいい配分を見つけ、少しずつ調整していく——血糖値は、それがうまくいっているかを教えてくれます。
糖質・タンパク質・脂質を、自分に合わせて整える。
そこに、運動を足す。
そして、ここに運動を組み込むと、食事だけのときよりも、糖をさばく代謝の効率がぐっと上がります。
なかでも筋トレは、長い目で見て心強い味方です。筋肉量を保ち、増やしていくことで、血糖値のコントロールが、年々ラクになっていくからです。
食事で土台を整え、運動で後押しする。この合わせ技こそが、血糖値という数字に、いちばん確実に効いてきます。
数字を直接いじろうとするより、その手前にある食事・運動・生活を整える。遠回りに見えて、これが一番の近道です。
最後に
今回この記事で「やっと正しいPFCバランスが分かる!」と期待していた方には少しガッカリな内容になってしまったかもしれません。
しかし私も無責任なことは言いたくないので、ニュアンス的に出来る限りの土台部分を説明させていただきました。
血糖値のための食事は、「我慢のリスト」ではない。
糖質は、質を選んで、使える分。
タンパク質は、しっかりと。
脂質は、質を見極めて。
そして、自分の体と対話しながら、自分だけのバランスを見つけていく。
——この根本の部分は、何があっても変わりません。
そして、ここからが大切なお知らせです。
この「根本の考え方」を土台に、これからはもっと踏み込んだ実践編をお届けしていきます。実際に血糖値に悩む40代・50代の方を想定したシミュレーション形式の記事や、血糖値にまつわるさまざまなテーマを、メンバーシップで発信していく予定です。リブレを使った、ここでしか出せない限定の検証内容も、あわせてお見せしていきます。
いまはまだ準備中ですが、「自分の場合はどうすればいいんだろう」という一歩先の答えを、一緒に探していける場所にしたいと思っています。
どうぞ、楽しみにしていてください。
*この記事は、一般的な健康情報と、私自身の学びや経験に基づく考え方をお伝えするものであり、特定の病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。持病のある方、食事制限を受けている方、健診の数値に不安がある方は、自己判断をせず、専門家にご相談ください。体質や状況には個人差があり、すべての方に同じ変化をお約束するものではありません。
この記事が、ご自身の体と向き合う「きっかけ」になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
