【光り物】居合道・模擬刀について語る
お正月っぽいことをやりたいなーということで、趣味の居合道(模擬刀)についてちょっと語ってみます。真剣と書いてマジと読む。
刀の手入れ(幸せ時間)
今年の正月休みはいつもより長いので、自宅の片づけとかやっていたのだが、せっかくなので居合道やってた時に振っていた刀を引っ張り出して手入れをしたり、試しに振ってみたりしていたところ、、、
これが思いの外楽しかったので記事になってしまった。絵面を見ると30過ぎのオッサンが自宅に引き籠って刀並べてニヤニヤしながら磨いているという、どうみても危ない人にしかならないのだが、年末年始につき無礼講。
超マイナーな分野ゆえに需要があるのかはわからないが、誰かに刺さればいいなという思いで書いてみる(刀だけに)
居合道との出会い
筆者の居合道との出会いは大学4年生の頃になる。新卒就職で失敗して留年することになったのだが、ならせっかくだし前から気になってた剣術をやってみたいなと思い、近所の中学校でやっている居合道愛好会(社会人サークル)に通い始めたのがきっかけだ。
筆者は中高時代に弓道部にいたのだが、初恋でしくじって干されたこともあってあまりモノにならなかった。その後悔の念から学び直したいと思いがあり、大学生になったら一念発起して剣道部に入ろうと思ったところ、何故かウッカリ写真部に入ってしまった。その成れの果てがコレである。
今度こそ剣道をやろうと思ったのだが、道場が家から遠く月謝が高めで、なにより防具の置き場所がないという現実的理由で断念したところ、居合道なら近いし袴と剣一本あればできるしこれでいいやと入門した次第。
この後筆者は公務員試験で人生棒に振ることになったので、20代は公務員試験と、居合道と、FXトレードくらいしかマジで記憶がない。まあ棒っつーか刀振ってたんですが。
①下心(光り物フェチ)
筆者が居合道をかじったのは実は下心もある。それはどうしようもない光り物フェチだという理由である。筆者はこの世界におけるあらゆる光り物が大好きなので当然刃物も守備範囲内なのである。
しかし包丁や刀みたいな刃物は表向き「好き」ということは公言しにくい趣味だ。理由は単純にやべーやつになってしまうからだ。漫画とかでよく見る「ヒャハハハ!!バラバラにしてやるぜぇ!」とか言いながらブレードをべろべろ舐めてる危ない人みたいなイメージになってしまう。
しかし刀は居合道を習い、包丁は料理をやれば堂々と公言できるためカモフラージュとして都合がいい。弁護士に悪い人がいるのと同じ理屈で、ちゃんとやってればやべーやつにはならないのである。
ただし動機が不純のため腕は微妙で剣オタクの域を出ず、カメラとどっこいで大したことがない。好きなのは事実だが。
居合道とは何なのか
居合道は簡単に言うと「カタナを鞘から抜く技能」ということになる。縮地で瞬間移動ができたり、衝撃波で離れた敵を倒したりは残念ながらできないようだ。
筆者の習っていた流派では「先の先」「後の先」「対の先」という概念があった。「先の先」は相手に対して先制攻撃が取れた場合の型で、そのまま横薙ぎ、袈裟斬りなど攻撃動作に移る技能となる。
「後の先」は相手によりも技が出遅れた場合の型で、相手の剣を弾く(パリィ)、仰け反り(スウェイ)でかわす、柄で抑え込むなどの対応をしてから攻撃動作に移る技能となる。
「対の先」というのもあって、相手より出遅れた場合、相手よりも出るのが早い技で牽制する型になるがこれは上級者向きだ。格闘技に例えると、相手の正拳やストレートを、それよりも技の出が早い縦拳・裏拳・ワンインチパンチなどでキャンセルするみたいな技能になる。
①つまりどういうこと?
こういうことになります。
1.寄らば斬ります!!
2.寄らなくても寄って斬ります!!
刀を鞘に収めた状態からワンモーションで斬る、弾く、かわすといった対応を行って剣術に移行する技能が「居合」ということになる。
あけまして、寄らば斬ります!センチュリオ(ほんとこれ)
②なんで座ってるの?
居合道は正座から始まることが多いが、これは居合道が「正座から斬り合いになる状況」を想定しているからだ。座っていて不意打ちで切りかかられたらどうするかというのが基本コンセプトになる。
なので正座の状態から始まる技が多いが、あぐらをかいた状態から始まる技もあってこれは上級者向きだ。他、立ち居合という立っている状態で始まる技もある。筆者は正座が苦手なのでこればっかり練習している。
なお抜いた後の技はないのかという疑問だが、一旦刀を抜いて構えるとそれは「剣術」のカテゴリになる。そして居合道や古流剣術は型稽古が中心となるため、組手や乱取りのような稽古がない。そのため「剣道」や「空手」をやっておくと補完になる。(※空手と剣術は動きが似ている)
模擬刀(居合刀)のススメ
居合道の稽古では基本的には模擬刀で練習することが多い。高段者になってくると本身(真剣)になるのだが、単純に技量が足りなくて危なかったり、保存性の問題があったりするので、居合道に入門した人はまずはコレ買ってぶんぶん素振りするところから始まる。
この模擬刀だが実は沼要素があり、昔出来心で結構集めてしまったことがある。模擬刀は本身と違って工業規格品なのだがそれでもメーカーごとに特色があるのだ。ゴルフクラブでいうキャロウェイ、テーラーメイド、ブリジストン、ダンロップみたいなもので、振り比べると楽しい。
加えて模擬刀の場合、現在は廃業しているメーカーもあって、そういう刀もある意味ではアンティークになるので、カメラにおけるオールドレンズよろしく過去の遺産を楽しむ要素もある。
なお本身で稽古する場合も拵え(柄・鞘)は現代物に新調する方が都合は良い。時代物(アンティーク)だと規格性・希少性・経年など諸々の問題があるためで、実際そういう中古刀も売っている。無論そのまま使う人もいる。
①創作のお供としても
模擬刀は一見すると男の子の趣味だが、刀剣女子の方、あるいは創作・演劇関係者にもオススメだ。博物館でショーケースの向こう側にいる刀と、模擬刀とはいえ触ったり振ったりできる刀だと、またイメージは違うものになる。気軽に触れる刀が身近にあることはとてもよいことだ(満面)
マンガやアニメ、ゲームに剣士や日本刀はやたら登場するが、日本刀そのものはなかなか知る機会がないと思う。そこでリアルなものをひとつ手元に置いておくと様々な発見がある。
実際に手に取ってみると意外と重い(軽い)んだなとか、抜くときは鯉口切るんだなとか、振ったときの抵抗が木刀と全然違うとか、この動作とこの動作は繋がるんだなとか色々な発見があると思うのでよい資料になる。芯を食った表現を望むなら模擬刀でいいので是非一度手に取ってみよう。
ひとつ注意があって10,000円前後の「美術刀」は振れない。柄が樹脂でできていて強度が確保できてないためだ。35,000円程度の「居合刀」は稽古用のため、柄が木製で強度を確保しているため振ることができる。そしてどうせならオーダーで作ってもらうと好みのデザインを反映できて尚良い。
模擬刀とかいう沼
筆者の模擬刀沼を一部紹介。筆者の手持ちは美濃坂が多い。精度が高く鞘も頑丈で使いやすいのと、取次店も多いため入手性も良く、店によっては値引きしてくれる。
他のメーカーでは、濃州堂は「模擬刀界のロールスロイス」だ。物凄く振りやすく樋鳴りも良く観賞性も高い。奥伝真剣作は銀無垢金具を積んでおりまさに究極仕様なのだが、高嶺の花で手が出ない‥‥。
村山刀剣は独特のシラ研ぎ風の刀身が素晴らしい。ここも銀無垢金具があり、取次店によってはかなりオーダーの幅が広く楽しめる。日本アンティックギャラリーも品質が良いが、メーカーが廃業しており入手方法やヤフオクなどの中古品になる。ここも根強いファンが多い。
(自ブログのリンクを置いておくので詳細情報欲しい人はどうぞ)
①美濃坂本拵

これは筆者が居合道を始めるにあたって使っていた刀で、初期装備品といったところになる。オーダー品で筆者の趣味を詰め込んである。
二尺四寸五分・重さ940gと標準的なスペック。取り立てて特徴のない刀なのだが、この「特徴がない」という点が実は重要となる。模擬刀・本身問わず使いにくい刀というのは割と多い。重心バランスが悪いとか、樋鳴りしにくい、柄がガタつく、鞘が割れやすいとかだ。
色々試して結局コレに戻ってきたのだが、出戻りして素性の良さに驚いた。この剣はそういった基本ができていて、鞘も頑丈なため使いやすい。特に素晴らしいのは鯉口で、樹脂製の補強材が入っているのだが、これのおかげで抜きやすく、摩耗もしにくい。
使い込んで柄糸がくたびれたので、柄を取り外してヤフオク経由で業者さんにお願いして鹿革で巻き直してもらった。出来栄えは満足だし、使い込んだ刀ゆえに分解も躊躇なくできるのだが、見た目が高段者の刀みたいになってしまって稽古では使いづらい(頭が高い)
②美濃坂同田貫拵(風来のシレン風)

上記の美濃坂本拵に続いて入手したオーダー品で、ローグライクゲームの風来のシレン(初代)風に誂えてもらったもの。
二尺五寸・重さ1,140gとやや大振りの刀で、居合で用いる場合、鞘引きをしっかり行わないと鯉口を痛めたり、重さ故に振り切れなかったりする。反面重さで剣筋は安定しやすく、美濃坂製ゆえに鞘が頑丈なため、一定の体格・筋力のある人にとってはデメリットとならずむしろ使いやすい。
「道」系の武道は型稽古となるため一定のセンスが必要になるが、他方で道具で補うというアプローチもある。弓道なら20kg程度の強弓を使うと的中しやすいが、居合道も似たような要素がある。
足りないセンスを強武器でごまかすというのは、邪道ではあるがひとつの方法ではある。実際カメラはこの方法で地を行っているし、仕事も先に資格取得から済ませて足りない能力・経験を底上げしてしまうことが多い。
③美濃坂同田貫(中古品)

上記の美濃坂同田貫拵(風来のシレン風)の影打として、ヤフオクで入手したもの。シレン風はしばらく使っていたのだが、バイオハザードのマグナムや、ファイナルファンタジーのエリクサーよろしくもったいない病を患ってしまい、普段はコチラを振っている。
重さ1,130gとやや重いものの重心バランスは良好で剣筋が安定しやすく、鞘も頑丈で使いやすい。二尺三寸とやや短めの刀身も居合向きだ。そもそもが中古品のため傷や痛みを気にならず、頑丈な上に分解も気兼ねなくできるので、ガシガシ使えるのが素晴らしい。
そんなわけで筆者はこの剣ばかり振ってる気がする。
④鬼神丸国重

秋葉原の某商店で誂えてもらった見た目全振りの一振り。名前はメーカーの仕様で、特にモチーフなどはない。
牛革巻きの柄、ハバキ、目貫、縁頭は金メッキ、刃文は濤乱刃とひたすら派手派手のゴキゲン仕様にした刀で、筆者の光り物趣味が存分に反映されている。密度の大きい真鍮製刀身が使われているため重さ1,200gと重く、樋も入っていないため振っても音はならず、稽古向きではない。
しかし長さ二尺四寸で小切先のため、意外にも居合に適した形状で、重くて音が鳴らない点も自宅で素振りや稽古を行う場合、かえって都合が良い。実用性度外視で作ってもらったつもりが、図らずも使いやすくなってしまった剣。見た目全振りの上に使いやすいという。何も言うことはない(殿下)
⑤真鍮製居合刀(合わせ拵)


これはメーカー不詳の中古居合刀(ボロ)を手直した一振りとなる。ヤフオクの出物だが、牛革一貫巻きの柄、真鍮製刀身と素性が良かったため、ジャンク品上等で入手したもの。
柄ガタをテグスやガムテープで直し、切羽と鍔を交換し、責金をアルミ箔で作り、梨地の鞘を別購入して調整し、良さげな下げ尾を通したらイイ感じに仕上がってしまった。風来のシレンの合成の壺とか、ファイアーエムブレムの武器錬成のノリで作った刀で、やはり見た目全振りで誂えている。
よって居合刀としてはかなり使いにくい。寛文新刀みたいな反浅な刀身もさることながら、重さ1,330gという超重量刀になってしまったためだ。鍔を替えて1,260gに下げたがそれでも重い。鞘も汎用品をかなり無理して削り込んだため耐久性はなく、観賞用兼素振り用として楽しんでいる。
本身(真剣)に手を出さない理由
筆者は真剣を持っていない。理由は技量が足りないのと、集合住宅のため保存環境がないためだ。
あと 刀=直球で武器 なので、ホンモノ持ってても使い道ないよなぁという点もある。同様の理由でナイフも興味がない。アウトドアや狩猟などやらないので使う環境がないからだ。
そんなわけで筆者は主にコチラで楽しんでいる。
刀装具
刀装具は光り物好きにはなかなか楽しめる要素だ。鍔、縁頭、ハバキといったパーツ類はそれ単体でも楽しめる。筆者の場合、この手入れ用のお道具箱があって、


この中に色々パーツが入っている。もともと宝石箱としてつかっていたものだが、現在は刀装具やメンテナンス用品をコレに詰めている。
①刀鍔

まずは鍔は基本で、これは時代(アンティーク)のものは鉄味を楽しめる。赤銅や色金使っていたり、鑑定を受けていたりするとべらぼうに高いが、無銘や贋作、未鑑定品ならそれほど高くない。
模擬刀に合わせると雰囲気が出るのだが、茎穴の大きさや切羽台の高さなどが合うかどうかになるので調整が必要になる。
居合刀用の鍔は現代作られたものだが、規格品のため居合刀には合わせやすく、これ自体も昭和時代に作られたものも多いのでアンティークに片足突っ込みつつある。
②ハバキ・縁頭
それから面白いのはハバキ・縁頭だ。こちらは真鍮・銅・銀などで作られていて鍔とはまた違った趣がある。これも時代物はべらぼうに高いが、現代物で中古品だと割と安い。そして安いながらに見どころもある。

これは模擬刀用のハバキ。真鍮地にクロムメッキをかけて燻仕上げっぽくしている。規格品ゆえにメーカーが合えば寸法が合うので、普段の真鍮ハバキをコレに替えると渋くなってイメチェンになる。


これは模擬刀用の縁頭。下の縁頭は濃州堂謹製のもので、銀無垢でできている。同店の高級モデルはこれを搭載していて、ハバキ・目貫・縁頭・鐺(コジリ)の主要金具がすべて銀無垢でできている。まさにロールスロイスだ。
②残欠
地鉄を楽しみたいのなら残欠という方法もある。これは折れてしまった刀・脇差などで、そのまま折れたものがだったり仕上げ直したものもある。

どちらの場合もこれ自体は良質の玉鋼なので鉄味の良さは楽しめる。茎(なかご)は錆びていながらもなかなか味わい深い。まあコレはあんまり状態良くないんだけど。



こちらは摺り上げて短刀に仕立てたものでまさかのドラゴンスタイル(笑)刃渡りキッカリ15cm未満となっており銃刀法的にはセーフで登録も不要。ちゃんとトマトも切れる。刀文も帽子もあるしこれで十分楽しめる。
※なおnoteが炎上したら自害しますというフリではありません。
まとめ

なんかお正月っぽいことやりたいなーと片付けついでに何となく刀を触ったが最後、そこから収拾がつかなくなってしまって書いた記事になる。幸せ時間にも程がある。
なお筆者は特に由緒ある旧家の出身とかではない。その辺の雑種だ。両親や親戚にこの手の趣味を持つ人はおらず、筆者の好きが高じて勝手に居合道をはじめ、いつのまにか集まってしまったものになる。
なんだか還暦過ぎたじいさんみたいな枯れた趣味だが、筆者が始めたのは20代の頃で、今30代のオッサンなので、年齢が追い付いてきた感があり、その意味では居心地が良い。
こうやって正月のようなまとまった時間にしげしげと眺め、手に取って振ってみて、手入れをするのは至福の時といえるだろう。とても贅沢な時間だ。
①包丁のススメ
ちなみに模擬刀なんて所詮オモチャじゃん。切れなきゃ意味ないじゃんビビってんじゃねーという人もいるのだが、筆者は「切る」ことに関しては包丁で補完している。

最近は居合道は忙しくて行かなくなってしまったので、こちらの方が日常生活に基づいている分身近なのかな。最近冶金技術が上がって高性能ステンレス鋼の包丁が続々出ているので結構アツい分野だと思ってる。
コレについては需要があればそのうち語ってみたいところ。需要が無くてもウッカリ語ってしまうかもしれません。寄らば斬ります!(続く?)
