アートの価値は誰が決める?③“わからなさ”が心に残る理由
「わからないのに、なぜか惹かれてしまう。」
そんな経験はないですか?
現代アートやブランド、広告や建築にまで、そんな不思議な魅力を感じたことがある人も多いのでは?見ただけでは理解できない。意味もよくわからない。
──でもなぜか、気になる。
実はいま、「わかりにくさ」そのものが、価値になりはじめています。
今回は、この「わからなさ=惹かれ」の構造について紐解いてみます。
マグリットに惹かれた理由は
やっぱりわからない
先日、横浜美術館でマグリットの《王様の美術館》という作品を見てきました。

横浜美術館 展示にて筆者撮影
シルエットの中に風景が溶け込む不思議な構図。何かの象徴のようでもあるし、単なる幻想にも見えます。
──正直、意味はよくわかりませんでした。
でも、気になる。説明がつかないのに、感情だけが先に引き込まれるような感覚。
「わからなさ」に惹かれてしまうこの感覚は、一体何なのでしょうか。
わからないからこそ
意味を探し始める
わたしたちは、意味がわからない状況に出会うと、自然と意味を探し始めます。理解しきれないからこそ、考えようとするし、解釈しようとトライする。
つまり、
「意味があるから惹かれる」のではなく、惹かれてしまうから、あとから意味を探し始める。
わからなさは、惹きのきっかけであり、それを自分なりに補完しようとする行為そのものが、「共感」や「記憶」をつくっているのだと思います。
わかった瞬間に冷めた。
そんな経験ありませんか?
これはきっと誰にでもある感覚ではないですか?映画やドラマ、アート、あるいは人間関係でも。
「あ、こういうことか〜」
そう思った瞬間、急に熱が冷めてしまうような感覚。そこで興味も終わってしまう。
だからこそ惹かれ続けるものって、「どこか掴みきれないまま、心にひっかかりを残すもの」なのかもしれません。
案外、日常にもある
「わからないけど惹かれる」もの
ふだんの生活の中にも、わからなさに惹かれてしまう瞬間は意外とあります。
味の説明はできないけど、なぜか落ち着く喫茶店のコーヒー
いつも同じ結末なのに、なぜか毎回泣いてしまう昔のアニメ映画
飼ったら絶対大変なのに、つい検索履歴に「アルマジロ 飼育」と残してしまう
理由ははっきりしないのに、気になってしまうもの。説明しようとしても、うまく言えない。それでも惹かれてる。そんな感覚です。
ブランドも「全部は語らない」
ことで魅力的に
たとえば、Aēsop(イソップ)。
シンプルなパッケージ、香りの説明は最小限、コピーも控えめ。
──だけど、なぜか惹かれます。
説明しすぎないからこそ、私たちの中に、自分で補いたくなるスペースができる。
「これってどういう意味なんだろう?」
そう考え始めた時点で、もうすでにそのブランドに惹かれている。意味を探す行為そのものが、心を動かされた証拠です。
「わからない」という問いが、
人を惹きつける
今は、ブランドもアートも、「答え」ではなく「問いが残る」から惹かれる時代なのかもしれません。
「わからなさ」は、解釈の余地であり、感情の居場所。わかってしまった瞬間に冷めるなら、わからないままの方が、ずっと心に残るのでは?
惹かれ続けるものって、解かれないままの謎なのかもしれない・・・なんて思うこの頃です。

