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最強ばあちゃん覚醒——映画『サユリ』感想文

念願のマイホームに引っ越してきた神木家。その幸福な時間は、家に棲みついた少女の霊”サユリ”によって呆気なく壊されていく、というのが『サユリ』の導入だ。

原作は『ミスミソウ』で知られる押切蓮介、監督はJホラーの巨匠・白石晃士。『ノロイ』や『オカルト』を撮ってきた白石監督と、容赦のない暴力描写で知られる押切氏の組み合わせを聞いた時点で覚悟はしていたが、本作はいい意味でその期待を裏切ってくる。

前半はまごうことなきJホラーだ。奇怪な笑い声、家族が一人ずつ消えていく恐怖、認知症の祖母が”誰もいない空間”に話しかける不穏さ......「家に憑く怪異」というモチーフの気持ち悪さを丁寧に積み上げてくる。日本の家屋には座敷童子や憑き物筋のような”家に宿る何か”の伝承が古くからある。福を運ぶ座敷童子と、一家に祟る憑き物筋。同じ”家に棲みつく存在”でも、その性質は真逆だ。サユリはその両方の側面を併せ持っているように見えて、単純な悪霊ものとして片付けられない不気味さがある。

ところが物語が進むにつれ、様相が一変する。やられっぱなしだったはずの祖母が豹変し、主人公の則雄と共に”復讐”へと舵を切るのだ。前半の陰鬱な空気から一転、後半はなぜか特訓シーンすら挟んでくる展開の速さに面食らったが、それでいて笑って観られるほど軽くはならない。この緩急の巧みこそ、白石監督の手腕なのだろう。

根岸季衣演じる祖母の”豹変”は必見だ。認知症という設定が逆説的に不気味さと頼もしさの両方を纏わせていて、恐怖の対象だったキャラクターがいつの間にか一番の味方になっている感覚は、他のJホラーではなかなか味わえない。怖がらせるだけで終わらない、“やり返す”側の物語を見せてくれる。正直、前半のばあちゃんの不穏さにビクビクしていた自分からすると、後半のハードなバトル展開には笑ってしまった。頼もしすぎるだろ、ばあちゃん……

普段、都市伝説や怪異を調べていると、こういう作品にはついつい目を向けてしまう。一つの家に、一つの家族の因縁が染み込んでいる。怪異とは突然湧いて出るものではなく、誰かの積年の想いが形になったものなのかもしれない。そんなことを考えさせられる一本だった。

あなたの家、本当に”誰も”いませんか?

#Netflix感想文

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