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そういえば君に片思いしていた

 今年の夏も日本へ一時帰国してきた。約5週間の滞在は慌ただしくも濃く、充実させることができた。
 たくさんの楽しい出来事があったので、その中の1つをここに書き残そうと思う。

 今年は、高校時代の友達との交流が例年より多くあった。私の高校時代の友達(主にクラスメートたち)は、男女問わず仲が良く、今でも会って楽しい時間を過ごす。
 仲の良いメンバーは、実家がまだ地元にあるため、どうにかこうにか集まれるが、実家ごと引っ越してしまい、会うのが難しくなった友達もいる。そんな中の一人と、この夏30年ぶりに繋がった。
 経緯を話すと、まず高校のクラスメートで今も仲の良いケイゴくん(仮名)から電話がかかってきた。実家の転居で音信不通になっていたユウジくん(仮名)から約30年ぶりに連絡があり、私と話したがっているというのだ。ユウジくんが地元のウェブサイトを偶然見ていて、ケイゴくんが地元で起業したことを知り、会社へ連絡したのがきっかけ。その際、私が結婚して海外に住んでいること、そして、その時たまたま一時帰国中であることを知り、自身の連絡先を渡して電話をするように伝えてほしいと頼まれたそうだ。
 余談だが、50代になった彼らを今も「くん」付けで呼ぶのは、客観的に見れば違和感があるかもしれない。けれど私にとっては高校時代の延長線上にある存在で、それが一番自然な呼び方なのだ。
 その日はあいにく日本を発つ前日で、私はパッキングと片付けに追われていた。とても電話で長話をする余裕はない。ケイゴくんに「申し訳ないけれど、今はちょっと無理だと伝えてほしい」と断ったのだが、彼は「どうしても話したいと言っているから、お願い」と絶対に引かない。 
 私は、ある種の嫌な予感を抱いていた。
 というのも、ユウジくんは、高校卒業後の一時期、私と仲良かったマミ(仮名)と付き合っていた。二人が別れた後、しばらく未練を残していたユウジくんの相談に乗っていたのが私だったのだ。その後、ユウジくんの方に彼にゾッコンの彼女ができ、あっという間にマミより先に結婚した。数年してマミも職場の人と結婚した。そんな過去があるだけに、「もしかして、離婚でもしたユウジくんが、私を介してマミと繋がりたいなんて言い出すのでは・・・」と想像し怖くなったのだ。厄介なことには巻き込まれたくない。特に、こんな忙しい時に。
 だけど、そこまで言われては無下にできない。おそるおそる教えられた番号に電話してみた。自動応答サービスに繋がったので、旧姓と「電話するように言われた」旨をメッセージに残すと、すぐに折り返しかかってきた。
 「久しぶり!」
 お互い明るいトーンで始まった。ユウジくんの声もあの頃と全く変わらない。会話は、お互いの近況報告から昔話へと花が咲いた。懸念していたマミの話は一向に出てこない。どうやら、ケイゴくんと話す中で私の名前が出て懐かしくなり、ただ純粋に話がしたくなっただけのようだった。ユウジくん自身も家庭生活は順調そうで、マミへの未練など微塵も感じられない。
 本当に良かった。心の中で胸をなでおろし、「来年はぜひみんなで集まろう」と約束して電話を切った。
 すぐにパッキングに戻り、黙々と作業を進めていたら思い出した。高校時代の一時期、私はユウジくんに片思いしていたことを。
 スポーツ万能で、都会的な雰囲気をまとったユウジくん。体育が苦手でドンくさい私は、彼が体育の時間に颯爽とバスケットボールを追う姿を見て、恋をしてしまった。だけど、彼は実は都会からの転校生の子と付き合っていると知り、私は思いを告げることもなく恋は終わってしまったのだ。
 思えば、高校卒業後に相談役になっていた当時、私には大好きな彼氏がいて、ユウジくんに対する恋心は消えていたけれど、「ああ、この人に昔片思いしていたな」という意識はあった。 
 だけど、30年以上経って、一時期好きだったという事実さえ忘れていたのだ。よく、「時間が解決する」と言うが、こうやって人は忘れるのだろうか。それから、「女の脳は思い出を上書きする」という話を聞いたことがあるが、まさにこれがその現象なのだろうか。
 高校時代は、生活において恋愛が占める比重が大きい。失恋すると、世界の終わりのような気持ちになる。けれど、50代まで生きてくれば、そんな失恋も、人生に彩りを添える「悲喜こもごも」な出来事の一つに過ぎなくなるのかもしれない。
 ユウジくんに片思いしていたあの日の私と同じ年のわが子のTシャツをたたみながら、そんなことを考えた。


 今回は、「宇ヨン」さまの画像を使わせていただきました。ありがとうございました。


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