種取りと種苗法改正について、農家として正直に考えていること
固定種の野菜を育て始めてから、農家仲間から「種苗法の改正で自家採種が禁止になったんじゃないの?」と聞かれることが増えました。
この話題は少し複雑なので、正確に整理した上で、私がこれから目指していることをお伝えしたいと思います。
種苗法の改正で何が変わったのか
2020年に改正され、2022年に施行された種苗法の改正。「自家採種が全面的に禁止になった」という情報が広まりましたが、これは正確ではありません。
変わったこと:新たに登録された登録品種については、育成者権(開発者の権利)が強化され、農家が自家採種して翌年に使うことが原則として禁止になりました。
変わっていないこと:固定種・在来種・一般品種については、これまでと同様に自家採種は自由です。制限の対象は、企業や研究機関が新たに開発・登録した品種に限られています。
つまり、「自家採種そのものが禁止になった」わけではなく、「新しく開発・登録された特定の品種については、許可なく種を取れなくなった」というのが正確なところです。
この改正については、賛否両論あります。育種に投資した企業や研究者の権利を守る必要があるという意見がある一方、農業の自立性や種の多様性が損なわれるという懸念の声も根強くあります。どちらの立場にも、それぞれ理由があります。
自家採種という行為の意味
固定種の野菜を育てる農家にとって、自家採種は単なる「種の節約」ではありません。
毎年同じ畑で育て、種を取り、翌年また同じ土に植える。その繰り返しの中で、種はその土地の気候や土壌に少しずつ適応していきます。同じ品種でも、奈良大和郡山の土で10年育てた種と、他の地域で育てた種では、同じではなくなっていく。
種が土地に馴染んでいく過程そのものが、農業の歴史でもあります。
祖父がこの土地で農業をしていたころ、種はそうやって引き継がれていたはずです。農家が種を守ることが、地域の食文化を守ることでもあった。現代ではその仕組みが少しずつ失われてきていますが、固定種に関わることで、その繋がりを取り戻せるかもしれないと感じています。
奈良ベリーガーデンが目指すこと——種のコミュニティ
ここからは、私の個人的な夢の話です。
将来的に、この農園を地域の固定種の種を集め、育て、繋いでいくコミュニティの拠点にしたいと思っています。
具体的にイメージしているのは、こういう形です。
地域の農家さんや家庭菜園をやっている方が、昔から育ててきた固定種の種を持ち寄ってくれる。それを農園で育てて増やし、また必要な人に渡す。奈良の土地に合った在来の野菜品種が、一か所に集まって守られていく。
大げさに言えば「種の図書館」のようなものです。でも規模は小さくていい。この地域に、そういう場所があること自体に意味があると思っています。
ブルーベリー農園に来てくれたお客さんが、帰りに固定種の種を一袋持って帰る。来シーズン、「育ててみたよ」という話を聞かせてくれる。そういう関係が農園と地域の間に生まれたら、農園がただの「果物を摘む場所」を超えた存在になれると思っています。
まだ始まったばかり
今は農園の一角で固定種の野菜を育てながら、少しずつ種を増やしている段階です。コミュニティとして動き出すには、まだ時間がかかります。
でも、方向は決まっています。
食べ物がどこから来るか、種がどう受け継がれてきたか——そういうことに関心がある方と、この農園を通じてつながっていけたらと思っています。
固定種や種のことに興味がある方、地域で農業や食をテーマに活動している方、ぜひInstagramでつながってください。農園の取り組みを随時発信しています👉@blueberry_nara
