理由(ワケ)
大黒摩季 「理由(ワケ)」
寂しいのは待つことじゃなく
願わなくなること
愛しいのは ぬくもりじゃなくて
そうあなたに捧げた日々
そばにいて 知りすぎて
冷めそうなこの気持ち温めて
それでも好きだから私なりに努力していたから渡部とは冷めきったまま、
倉田とも変わらず関係は続いていた。
そんな生活を続けていたある日、
それまで働いていた職場から
今月いっぱいでパート職員は全員解雇 という話があった。
せっかく収入があって少しずつ自分のための貯金もしていたのに…
しかし解雇になったことで昼間倉田とは会いやすくなる、そう思うと少し嬉しかった。
私たちが昼間会うのは決まっていつものホテル。
まみは無駄にお金使えないんだからホテル代はいいよ、といつも倉田が出してくれていた。
その日も情事の後倉田に
「私の次の仕事が決まるまではたくさん会えるよ、来週また会えそう?あ、でも来週生理がきちゃうかも。生理でも会えるならそれでもいいよね?」
舞い上がり気味に一人で話を進める私に倉田は少し困った顔をした。
「いやぁ…また来月でいいんじゃない?」
「せっかくたくさん会えるのに何で?私とのこと飽きたの?」少しむくれてみせた。
「言いづらいんだけどさぁ、ホテルはお金もかかるし…今月お小遣い余裕ないんだよね。カード使えば嫁にバレるし」
…そっか、そうだよね。
今までは月に1回ホテルに来れればよかったくらいだったのでどうにかお小遣い内でやりくりしてくれていたのだろう。
それが毎週ともなれば確かにお小遣いは底尽きる。
「ごめんね。私自分勝手だった。」
「とりあえず今日は一緒にいられる時間目一杯楽しもう」
そう言って倉田は私の胸に顔を埋めた。
外はやっぱり今日も雨だった。
そうなればこうしてはいられない、
暇にしてる余裕はどこにもない。
私はすぐに次の仕事を探した。
幸い幼稚園の近くのコンビニの募集があり
時給はだいぶ下がるが、
そこで使ってもらえることになった。
幼稚園から近かったので幼稚園バスの利用をやめ、
さらを幼稚園に送りそのままコンビニへ行き仕事をしてまた幼稚園にお迎えに行く、そんな生活になった。
それでもやはり収入はだいぶ下がり、毎日の送迎で今までよりガソリン代もかかるようになってしまった。渡部の借金も返済してるのに全然減らないので支出だけが増えた。
このままでは自分の貯金もできない…
そう考えているとき
私は財布の中に閉まっていた
いつか会った同級生の名刺のことを思い出した。
そしてあることを思いつき、名刺のアドレス宛にメールを打ってみた。
「お久しぶりです、まみだよ。
ちょっと聞きたいんだけど、あきのお父さんのお店、バイト募集してない?」
あきの父親の小料理屋はうちから近いところにあった。
小さいながらなかなか評判もよく
お父さんも優しそうな人なのは知っていたので
あきにバイトさせてもらえるよう頼んでもらおうと思ったのだ。
そして昼間はコンビニ、夜は小料理屋でバイトをすればまた少し貯金ができるんではないかと私は考えていた。
「え?お父さんのところ?一応聞いてあげるけど多分今誰もバイト使ってないよ?」
そっか、残念。
そううまくいくわけないか…
「あれ?まみちゃん仕事してないの?夜に働きたいの?」
「昼間も働いてるんだけどそこだとあんまり稼げなくて…」
「お金必要なの?ならうちで働けばいいじゃん!時給も1700円スタートで、昼間働かなくもかなり稼げるよ」
え!?
私があきのお店で!?
「まさか~もう若くもないしこんなブス需要ないでしょ。」
「とりあえず昼間掃除で店にいるから都合のいいときに顔だしなよ!ゆっくり話しようよ。」
そんなやりとりをしたその日の夜
あきのお父さんのところでバイトは今使ってないと連絡がきた。
そして、私は翌日あきの店に顔を出すことになった。
「そこ座って待ってて、後少しで掃除終わるから」
私はお酒は飲まないので(飲めないが正しい)
こういうお店に入ったこともなかったので昼間なのに少し緊張してお店の中をキョロキョロ見ていた。
あきが話し始める。
「まみちゃん、こないだ会ったときより痩せた?てゆーかきれいになったね」
「そう?色々大変で多分ただやつれただけだよ」
(もしかしたら倉田とのことで色気はでていたのかもしれないが)
「子どもは?元気?」
「まぁね、今幼稚園通ってるよ。幼稚園も結構お金かかるからさ…大変よ」
「まみちゃん、子どもいて夜も働きたいなんてなんかあったんじゃない?うちにきてる女の子はほとんど何か事情がある子達だからなんとなくわかるよ」
「うーん…実はね…」
そこから私は渡部との出来事を詳しく話した。
するとあきは呆れた顔をして
「それ、終わんないよ。それにその旦那、また同じことこれからも繰り返すね、それ病気だから」
そう言いながらたばこに火をつけた。
「わかってる。だから、別れられるようにまず自分のお金を作りたいと思ってて。夜も働こうかなぁって」
私もたばこに火をつける。
「そんなの、お金貯めるなんて言ってないでさっさと離婚しちゃいなよ。借金だってまみちゃんがした借金じゃないのに返済して嫌な思いしてバカバカしいじゃん」
「でも私親の反対押しきって結婚したから実家には戻れないし、そうなると住むところもなくなるから…」
「ここの2階、部屋空いてるよ。使うならうちの旦那に話してまみちゃんが使えるようにするけど」
ん~…
ありがたいとは思ったが、
さすがにキャバクラで働く自分は想像がつかなかったし、ましてやキャバクラの2階に住むなんてことはしたくはなかった。
「あたしみたいなのが勤まる仕事じゃないよ。あきみたいに濃い化粧もしたことないし、そんなおしゃれな服も持ってないし…お酒も飲めない!」
「服や靴もはたくさんあるから貸すよ。化粧も私の使ってないやつあげる。お酒は飲まなくても大丈夫だしらなるべくお金使わないで済むようにしてあげるから、まず体験だけでも来てみない?体験でもお金出すし。」
いくら渡部とは冷めきっているからといっても一緒には住んでる訳で、さすがに内緒ではできないなぁと思いながら、やるしかない!という気持ちにもなっていた。
「子どものこともあるしとりあえず旦那と話してからまた連絡するから」
そう話して帰宅した。
